急変した参議院内閣委員会

「なんだか変な雰囲気ですねえ」

 6月14日昼過ぎに国会に到着した筆者に、新聞記者が話しかけてきた。週明けの永田町は解散風が吹く様子はないが、妙な緊張感に包まれていた。

この日、参議院では内閣委員会が開かれ、重要土地規制法案について参考人質疑が行われていた。 

「政府与党はこの法案を是非とも今国会で通したいようだよ」

 このように囁かれる重要土地規制法とは、自衛隊基地や原発など重要な施設の周辺を「注視区域」や「特別注視区域」に指定して土地利用を一部制限するものだ。中国など外国資本による土地買収問題がメディア報じられる一方で、私権を制限するものとして一部の野党が反対し、衆議院では5月28日に委員長職権で採決が行われ、6月1日に本会議で可決された。

 そして会期末まで2日を残す14日、委員長職権で採決を敢行しようした森屋宏委員長に対して、立憲と共産が解任決議案を提出。15日の本会議で審議されることになったのだ。

内閣不信任案提出を合意

 衆議院ではさらに大きな動きがあった。午後6時15分には、立憲民主、共産、国民民主、社民の4党は国会内で会談し、菅内閣に対する不信任決議案を共同提出することに合意した。野党4党はコロナ対策のために国会会期の3か月延長を申し出ていたが、この日の午後にG7参加のためにイギリスから帰国した菅義偉首相が二階俊博幹事長と協議し、これを拒否したことが原因だ。

 内閣不信任決議案は野党の対決姿勢を示す切り札で、可決されれば総理大臣は10日以内に総辞職するか、衆議院を解散しなくてはならない。なお否決されても総理大臣は憲法第7条によって解散できるが、この日に公表されたNHKの世論調査では、内閣支持率は2ポイント上昇して37%となっている。不支持率も2ポイント上昇し、政権発足以来最高の45%となったが、「総理は上機嫌だ」という噂が自民党側から流れている。また全国のコロナ感染者数が932人と、3月22日以来1000人を下回ったことも自信に繋がっているに違いない。一方で昨年1年間コロナのために封じていた内閣不信任決議案を解禁し、“攻め”に転じた野党はどうか。

互いにずれる野党4党の主張

 午後6時過ぎに国会内で開かれた党首会談の後、4党の代表は次のように内閣不信任の理由を述べた。

枝野「感染症対策、命と暮らしを守ることができていない」

志位「コロナ対策の失敗、オリパラの強行」

玉木「困窮している家計や事業者への支援が弱い」

福島「国民の命と安全を守っていない」

 これらは同じように見えているが、実はバラバラだ。たとえば東京オリンピック・パラリンピックについては日本共産党は反対だが、国民民主党は感染対策を万全にした上で開催に賛成。またいまだ使われていない前年度の30兆円の補正予算と本年度予算の4兆円の予備費の使途についても、各党によってその使い方は異なる。

 国民民主党が提唱するのは1年限りの消費税5%減税を実現し、駆け込み需要を意図的に作り出す。その上で大きく財政支出を行い、「高圧経済」を実現するというやり方だ。一方で立憲民主党は財政投入の規模(33兆円)はほぼ同じだが、消費税減税に消極的だ。立憲民主党の“前身”であった民主党の野田政権は、消費税を2014年4月に8%、2015年10月に10%に引き上げることを閣議決定したが、枝野氏はこの時、経済産業大臣を務めていた。いわば消費税10%の「当事者」であったわけだ。

ここ2日が分岐点?

 もし菅内閣を衆議院解散に追い込み、本気で政権を奪取しようとするなら、まずは新しい政権の枠組みを作るべきだ。すなわち過去やこだわりを捨て、国民のために新しい国家観を示す必要がある。ポストコロナ社会は人々の生活のみならず、その考えや生き方も大きく変えつつあるが、政治はそれに追いつき、追い越し、リードしなければならない。まずは会期末にどのような動きがあるのか、新しい政治の萌芽があるのかをじっくりと見ていきたい。