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【新選組立ち上げ】山本太郎は最後の勝負に出たのか

安積明子政治ジャーナリスト
野党の結集を呼び掛ける(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

かねてから離党は予想されていた

 いつかは離れてひとりになるだろうと言われていた。国民民主党と合流予定の自由党で小沢一郎氏と共同代表を務める山本太郎参議院議員だ。次期参議院選で改選される山本氏は原発即時禁止派。一方で電機連合や電力総連などを支持団体とする国民民主党は、原発政策については「2030年代原発ゼロ」を目指しており、両者の間に大きな隔たりがある。このまま国民民主党と合流すれば、山本氏は参議院選で有権者に説明できないだろう。

 そういう意味でも両党の合流期限から3週間前も前で、統一地方選のまっただ中の4月10日に会見を開き、山本氏が月内の自由党離党・政治団体立ち上げを表明したことは、微妙なタイミングといえる。政治団体の名前は「れいわ新選組(肉球)」。新元号が発表された4月1日に届けを出したというが、物議を呼んだ「令」の文字をあえて避けてひらながにしたのがミソだろう。また「新撰組」ではなく「新選組」としたのは、「新しい時代に新しく選ばれた者」というが、そういえば山本氏が2004年に出演したNHK大河ドラマも、「新撰組」ではなく「新選組!」だった。

 「政権とったらすぐやります!」と掲げた8つの公約は、消費税廃止、最低賃金全国一律1500円の政府補償、奨学金徳政令、公務員増員、第一次産業個別所得補償、「トンデモ法」の一括見直し・廃止、辺野古新基地建設中止、原発即時禁止・被曝させないというもので、大胆な財政出動を行う点がなかなか斬新。ただし国債の市中消化を前提としているが、少子高齢社会においてこれが崩れる危険がないとはいいきれない。

5月末までに1億円

 選挙戦術も大胆だ。支持者から募った寄付額に応じて、参議院選での擁立する候補者数を決めるという。まずは5月末までに1億円を集め、「10億円集まれば、比例区で25人、選挙区では2人区以上に立てたい」というのが山本氏の希望。衆参ダブルの場合は衆議院への転身も匂わせた。

 だが山本氏の政治団体「山本太郎となかまたち」の収入は、2016年は2120万1146円で2017年には56万1510円。短期間に多額の寄付を集めるのは事実上困難と思われる。

 その場合はこれまで通りに参議院選に出馬となるようだが、2013年の参議院選で山本氏が獲得した66万6684票をどれだけ上回るかが今後の鍵となるだろう。

「野党の結集があれば、(「れいわ新選組(肉球)」の)旗を降ろす。新党の狙いは違う角度からの野党結集を目指すことだ」

小沢氏の予言は当たるのか

 しかしその前途は甘くない。これまで山本氏の意見を尊重してきた小沢一郎氏でさえ、「多くの人が理解するかどうかわからない。あなたの政治生命を失うことを含めた賭けになるね」と言ったという。

「戦はな、ためらった方が負けなんだよ」

 これは山本氏が出演したNHK大河ドラマ「新選組!」の中の芹沢鴨の暗殺シーンで、堺雅人が扮する山南敬助に対して山本氏が演じる原田左之助が投げかけるセリフだ。幕末という時代の激変期を走り抜けた隊士たちのように、山本氏もこの時代を走り抜けようとしているのか。

 

政治ジャーナリスト

兵庫県出身。姫路西高校、慶應義塾大学経済学部卒。国会議員政策担当秘書資格試験に合格後、政策担当秘書として勤務。テレビやラジオに出演の他、「野党共闘(泣)。」「“小池”にはまって、さあ大変!ー希望の党の凋落と突然の代表辞任」(ワニブックスPLUS新書)を執筆。「記者会見」の現場で見た永田町の懲りない人々」(青林堂)に続き、「『新聞記者』という欺瞞ー『国民の代表』発言の意味をあらためて問う」(ワニブックス)が咢堂ブックオブイヤー大賞(メディア部門)を連続受賞。2021年に「新聞・テレビではわからない永田町のリアル」(青林堂)と「眞子内親王の危険な選択」(ビジネス社)を刊行。姫路ふるさと大使。

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