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【衆院選】安倍首相が小池知事の地元・東京10区に殴り込み

安積明子政治ジャーナリスト
今回の安倍首相のいでたちには「緑」はない。(写真:つのだよしお/アフロ)

昨日の友は今日の敵

 党の威信をかけて動員があったのだろう。自民党が10月18日に池袋東口で行った街宣には、約6000人もの人が集まった。かの地は小池百合子東京都知事のおひざ元。そしてここ東京10区には、小池知事の第一の側近である若狭勝氏が出馬している。

 その若狭氏を昨年10月16日、安倍首相はこの同じ場所で応援演説をしていた。小池氏が都知事に転身したため、衆院補選に若狭氏が出馬したためだ。

「本日は小池百合子東京都知事、そして山口那津男公明党代表とともに、若狭勝候補のお願いにやって参りました」

 朝から2杯の青汁を飲んだという安倍首相は緑のネクタイを着用し、すっかりと百合子グリーンに染まったように見えた。

「2020年の東京オリンピック・パラリンピックを成功させるため、そしてまた首都東京が日本をリードし、世界のまんなかで輝く国際都市となっていくためにも、さらに一層(小池知事と国が)協力を進めていかなくてはいけない。その協力の象徴が若狭勝候補だ」

 この時は若狭氏を「自民党と公明党と小池都政の協力の象徴」として持ち上げた安倍首相だが、その1年と2日後には一変した演説を同じ場所で行う。

「本日は大変お忙しい中、この夕刻の時間に『鈴木隼人がんばれ』この気持で街頭に足を運んでいただき、本当に有難うございます」

 こう言って一礼した安倍首相のネクタイは紺色のストライプで、緑の色はなかった。

 と同時にその顔に笑みもない。選挙戦が厳しいのは見てとれる。そしてたっぷりと約20分、マイクを握った。話した内容は候補者の紹介と北朝鮮問題、そして民主党政権時の日本経済の混迷と安倍政権になってからの回復だ。

本当の敵は立憲民主党?

「私たちは2009年に政権を失った。しかしその時も党の名前を変えようとしなかった。何度もミニ集会を開き、みなさんの声を聞いた。反省をし、ひたすら政策をみがき、訴えてきた。デフレから脱却して経済を成長させ、雇用を作り、国民を豊かにする。そう約束してひとつひとつ実行した」

 明らかに民主党政権時代を意識した安倍首相の発言の背景には、立憲民主党の鈴木庸介候補の急伸がある。自民党の候補を「隼人さん」と名前で連呼したのも、苗字が同じ「鈴木」だからに違いない。

 では安倍首相が小池知事や若狭氏に言及しなかったのは、若狭氏が失墜しているからなのか。もはや敵ではなくなったのか。

 ここに来て、不思議な噂が出回った。「選挙後にひともめがあり、小池知事が自民党に戻る」というものだ。そういえば10月12日に菅義偉官房長官が蒲田で演説した時も、旧民進党批判はあったが、小池知事に対する批判はなかった。

 とはいえ都議会レベルでは、怨念は残る。安倍首相の演説に先立って挨拶した都議会自民党幹事長の秋田一郎都議は、小池都政への厳しい批判を口にしている。

東京10区は自民党最重点区

 池袋では安倍首相は二コリともしなかった。公示日の10日に小泉進次郎氏が同じ場所で演説した時も、恒例の御当地に関連する冗談は聞かれなかった。

 自民党にとって東京10区は負けるわけにはいかない選挙区だが、どれだけ票を伸ばせるか。22日にはその動向にもっとも注目したい。

 

政治ジャーナリスト

兵庫県出身。姫路西高校、慶應義塾大学経済学部卒。国会議員政策担当秘書資格試験に合格後、政策担当秘書として勤務。テレビやラジオに出演の他、「野党共闘(泣)。」「“小池”にはまって、さあ大変!ー希望の党の凋落と突然の代表辞任」(ワニブックスPLUS新書)を執筆。「記者会見」の現場で見た永田町の懲りない人々」(青林堂)に続き、「『新聞記者』という欺瞞ー『国民の代表』発言の意味をあらためて問う」(ワニブックス)が咢堂ブックオブイヤー大賞(メディア部門)を連続受賞。2021年に「新聞・テレビではわからない永田町のリアル」(青林堂)と「眞子内親王の危険な選択」(ビジネス社)を刊行。姫路ふるさと大使。

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