小幅延長論を吹き飛ばした深夜国会 安倍政権は何を隠して通常国会を閉会するのか

深夜国会で投票する安倍首相。その後、改正組織犯罪処罰法は参議院で可決・成立した(写真:つのだよしお/アフロ)

「テロ等準備罪法を15日朝に通した後、刑法改正案を15日と16日で成立させるという。しかしこれほど大きな法改正なのに、参議院はたった2日間の審議で通していいのか」

深夜国会が確実となった14日午後、民進党関係者はため息をつきながらこう言った。

閉会を急ぐために「禁じ手」が使われた

今回の刑法改正は性犯罪を厳罰化するもので、刑罰の下限を引き上げると同時に、それまで必要だった被害者の告訴がなくとも起訴することが可能になる。これほど大きく改正されるのは、刑法が明治40年に公布されて以来、初めてのことだ。

だが衆院で審議されたのは8時間で、改正法案は6月8日に本会議を通過した。参議院法務委員会では6時間の審議が割り当てられた。そこから計算すれば、刑法改正の前に片づけなければならないテロ等準備罪法案は、15日朝までに成立しなくてはいけない。

そのために使われたのが、国会法第56条の3に定められている「中間報告」という禁じ手だ。委員会で採決をせずに委員長が本会議で報告し、そのまま可決してしまうというやり方で、過去には住民基本台帳法改正や臓器移植法などで使われた。

もっとも臓器移植法は議員個人の倫理観が重視されたため、委員会採決が好ましくないとされたが、テロ等準備罪法案はこれとは異なる。

にもかかわらず中間報告になったのは、委員会採決だと反発する野党で大混乱が起こり、都議選の前に与党のイメージが悪くなると懸念されたからだ。要するに、与党は国民の多くがこの法案に批判的であることを認識していたことになる。

会期延長なしは安倍首相の意向

それにしてもそこまでして、なぜ会期を延長せずに閉会したいのか。すでに自民党は13日、韓国から帰国したばかりの二階俊博幹事長や竹下亘国対委員長が中間報告について協議した。翌14日朝には二階氏が官邸を訪れ、安倍晋三首相と面談。ここで全てが決められた。

「我々は延長なしなんて思っていなかったが、官邸からは『16日までに全部通せ』と強硬に言ってきた」

与党関係者がうんざりした顔でこう述べている。

原因は加計学園問題だろう。文科省は6月15日、獣医学部開設をめぐり作成された文書の再調査結果を発表した。

これによると、民進党等から提示された19の文書のうち、14の文書が調査対象課内で確認された。内閣府も調査にとりかかり、16日に結果を公表する予定だ。

なお調査結果が明らかになれば、それに基づいて野党が質問することになるが、実質上は16日までの日程ではそれも十分ではない。

さすがにそれでは、あまりにも隠ぺい体質に偏ってしまうと危惧したのだろう。公明党の漆原良夫中央幹事会会長は15日、「集中審議をやった方がいい。閉会中審査もある。集中審議で国民にきちんと説明した方がいい」と言明した。

誰が「広域性」を書きこんだのか

文科省が公表した調査結果には、新しい疑惑も生まれている。専門教育課の『国家戦略特区』の共有ホルダーで発見された、手書きの書き込みがあるペーパーだ。

それは「先端ライフサイエンス研究や地域における感染症対策など、新たなニーズに対応する獣医学部の設置」というテーマのペーパーで、獣医学部設置の要件として「広域性」が書き加えられていたのだ。

「これで京都産業大学の獣医学部の新設はなくなったが、これまで『広域性』の要件は文科省が作ったものと言われていた。しかしこれで、書き込んだ人間が“犯人”ということがわかる」

加計学園問題でたびたび質問に立つ民進党の宮崎岳志衆議院議員は、2016年11月1日付けのメールのコピーを指差してこう言った。

「このメールは、藤原豊内閣府審議官から添付PDFの手書きの箇所を直すように言われたことを伝えている。その指示は萩生田光一官房副長官が出していると読み取れる」

確かにメールのコピーには、「指示は藤原審議官曰く、官邸の萩生田副長官からあったようです」と書かれている。

「これが事実なら、“最高レベル”が萩生田氏に命じて『広域性』を付加したことになる。全くの出来レースだったわけだ」(宮崎氏)

ちなみに萩生田氏は、すぐさまこれを否定した。

そして通常国会は事実上16日で閉会する、真相解明にまだ遠いにもかかわらず。