キム・ジェウク intv「”お金持ちのイケメン”ばかり演じていたら、役者としてダメになると思った」

今回は5月12日公開『蝶の眠り』で中山美穂さんとW主演の、韓国のイケメン俳優キム・ジェウクさんのインタビューをお届けします。

古くは『コーヒープリンス1号店』とか『アンティーク 西洋骨董洋菓子店』などで、他の俳優とは違う独特のセクシーさを発散していたキム・ジェウクさん。今回はストレートで自然体なキャラクターで、中山さん演じる年上女性を優しく包む男性を演じ、ファン必見です。

7歳まで日本で育ったキム・ジェウクさんは、日本語が堪能なことでも有名。このインタビュー、実は通訳なしだったのですが、お分かりになる通り、めちゃめちゃ難しい単語使ってます。その頭のよさ、そしてストレートな物言いも含めて、キムさんの魅力が伝わるといいな~。ということで、まずはこちらをどうぞ!

ーーそもそもこの役を演じることになったきっかけを教えてください。

キム・ジェウク そもそも監督の長編デビュー作『子猫をお願い』がすごく好きで。映画のトーンというか雰囲気に、女性監督らしからぬハードボイルドな感じがあり、個性的で面白いなと思っていました。その監督が久々に映画を撮るということで、お話を伺ったんです。そうしたら韓国では最近作られなくなっている商業的なものではない「恋愛もの」を、さらに全編日本語、日本ロケ、日本の俳優とスタッフで撮ると。僕にとっては何もかも魅力的なチャレンジで、お断りする理由がなかった。これまでも日本語を話す役は何度もやってきましたが、ほぼ100%日本語という役はやったことがありませんでしたし、小説を読んでいるような美しいシナリオを、監督がどのように映像にするのか見たい!という興味も膨らみ、ご一緒することになりました。

ーーチャネという役は日本に来た韓国人留学生で、涼子との出会いによって変わってゆきます。その出会いをどのようにとらえましたか?

キム・ジェウク 誰にとってもそうだと思いますが、出会いは求めている時に訪れるし、求めていた人に惹かれるんだと思います。チャネはさして楽しいこともなく、ただ寝て起きるだけの日常を送る虚無的な人間なのですが、やはり「自分の人生に何か起こってほしい」と思っていたんだと思うんです。涼子と出会ったのはそんな時だったから、普通だったら深入りしないような相手に、自分から関わっていった。それが自然なこと形だったのかなと思います。

涼子ってちょっと変わり者だし、女性としてというより人間として好奇心がわいたのかもしれません。この人と関わることでなにか変わるんじゃないかと、お互いが本能的にわかっていたといんじゃないかなと。二人の関係においては、そこが一番大きかったと思いますね。

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ーー演じる上で意識したことは?

キム・ジェウク やっぱり涼子という人物は、人間としてすごく難しい、時間の流れの中で複雑に、激しく感情を変化させてゆくキャラクターなので、チャネは少し抑えめに演じる方がバランスがいいなと。ですからなるべく力を抜いて演じようと思っていましたね。

子供時代を日本で過ごしたそうですが、韓国に帰国してからはどうやって日本語力をキープしているんですか?

キム・ジェウク 頭がいいからかも(笑)。7歳まで日本で生活した僕にとって、日本語がファースト・ランゲージだからじゃないでしょうか。それまでは韓国語のほうを、全くしゃべれなかったわけですから。帰国してからはずっと韓国語の生活でしたが、大人になり、仕事やプライベートを通じて日本の方たちとの出会いができた時に、聞き取れるのに言葉が出ないという状況が、めちゃめちゃ悔しかった。でもそうした人たちと接する時間が増えるうちに、だんだん出るようになってゆきましたね。今も日本語を読むのはそんなに得意じゃありません。難しくない漢字は流れで何とか読めるのですが、小説などを読むのはちょっと。今回も監督から「太宰治の『人間失格』を読んでおいて」と言われましたが、韓国語で読みました。

ーー日本語がうますぎてNGになった、という話を聞いたのですが。もう少し韓国人っぽく、と指示されたりしたんでしょうか?

キム・ジェウク その点も、結構監督と撮影前に話したんですが、むりやり下手な日本語にするよりは、自然にやろうと。「なんで留学生がそんなに上手いの」みたいなことより、ストーリーに集中してもらえたらそれでいいんじゃないの、という話しになり、そのままでやっています。

映像がめちゃめちゃキレイです
映像がめちゃめちゃキレイです

ーー以前、どこかのインタビューで「日本語を話す役ばかりになってしまうのが怖い」とおっしゃっていたのを読んだのですが。

キム・ジェウク 韓国で製作される作品に限れば、そういう感覚はありました。韓国と日本の文化的な交流がすごく盛んだった頃、本当にたくさんやっていました。でもキャラクターが日本語を話すことには、多分に「時流」のようなもので、必ずしも必要な要素ではなかったんじゃないかと感じていたんです。この作品ではそういう目的とは全く違いますし、そうであれば日本語を話す役を演じることに抵抗はありません。いつでも歓迎です。

―ー俳優さんには、オファーを拒まず引き受けるタイプと、自分からやりたい役にアプローチをするタイプがいると思いますが、ジェウクさんはどのように選んでいるんですか?

キム・ジェウク ケースバイケースですが、「次に何をやろうか」と自分の意志で探すというよりも、オファーをいただいたものから、その時その時に心が動いたものを選び取る感じです。でも自身のキャリアを戦略的に考えながら作品を選ぶのが、あんまり好きじゃなくて。「今の段階ではこういう役が必要」とか「こういうポジションを作るためには」とか、それを考えながらやっていたら、今頃もっと大金持ちになってたかもしれませんけど(笑)。

ーーとはいえここ数年は、女にだらしない映画監督を演じた『2つの恋愛』や、猟奇的な悪役を演じたドラマ「ボイス~112の奇跡~」に、全編日本語の今作、さらに初のストレートプレイに挑戦するなど、チャレンジングなお仕事が続いていますよね。

キム・ジェウク 「ボイス~112の奇跡~」に関しては、ちょっと特別ですね。悪役や殺人鬼といった役を、ずっと待っていたところがあるんです。「お金持ちのイケメン」といったような、女性を喜ばせる目的だけに作られたような役は、決して悪いとは言いませんが、そのためだけの演技、そのためだけの作品ばかりをやっていると、役者としてダメになってしまうという思いが昔からありました。すごくいい時期に出合えたなと思っています。

『2つの恋愛』に関しても、そういう部分はありますね。二人の女性にいい顔をして付き合うズルい男、そういう役をやってみたくても、オファーをいただけなかった。30代になったせいか、そうした役を少しずついただけるようになり、以前よりずっと楽しいし、やりがいを感じます。

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ーーチャネの「自分に訪れる偶然を受け入れながら生きることに決めた」というセリフが印象的でした。ご自身の人生に起き、人生を変えた「偶然」はありますか?

キム・ジェウク 僕はどちらかというと、偶然は必然だと信じている方かもしれません。僕自身、もともと音楽をやっていた人間で、役者になることを夢見ていたわけでも、その機会を求めていたわけでもないんです。昔から映画などは好きでしたが、誰でもできるような職業じゃないと思っていたし。

でもある演出家の方に出会い、その人が僕のなかに役者としての才能や可能性を見出してくれた。彼は今でも僕の師匠のような存在で、彼との出会いがなければ僕は役者にはなっていなかったと思う。その出会いになんの意図もない、ただの偶然なのですが、今も役者を続けていることを考えれば、必然だったのかもしれないなと思います。

ーー意図せず、10年15年と続いている俳優という仕事、その面白さや魅力はどんなところでしょうか?

キム・ジェウク ティピカルな答えかもしれませんが、やればやるほど難しいから。もっと見えてくるし、もっと広がってゆくし、知らなかったことが分かるようになってくる。それがたまらなく楽しいんですね。簡単に分かってしまわうことって、面白くないじゃないですか。ゲームも難しければ難しいほど、クリアした時に快感、達成感は大きいですよね。

ーー涼子みたいなややこしい女性との恋愛もいいかもしれませんね。

キム・ジェウク 確かにそういうところもあるかもしれませんが……僕自身としては、恋愛はまたちょっと違うかな(笑)。

『蝶の眠り』

(C)2017 SIGLO,KING RECORDS,ZOA FILMS

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