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日本一・阪神は二軍キャンプも大人気。しかし試合では若トラがアマチュアに大敗【NPBキャンプレポート】

阿佐智ベースボールジャーナリスト
初実戦ではつらつとした動きを見せた高卒ルーキー、山田脩也(仙台育英高)

 昨年38年ぶりの日本一に輝いた阪神タイガース。そのキャンプ地宜野座は今や沖縄で1番賑わっていると言っていいだろう。一方、二軍はその宜野座から30キロほどのうるま市具志川球場でキャンプを張っている。

 阪神のキャンプ地と言えば、長らく高知県安芸が定番であったが、各球団のキャンプ地が沖縄に集約されていく中、2003年に一軍が宜野座との併用をはじめ、2012年からは安芸から撤退する。その後もこれまでの関係もあり、二軍は引き続き安芸でキャンプを行っていたものの、選手の入れ替えなどで支障をきたしたこともあり、昨年からうるま市に移転した。移転先の具志川球場は、過去には中日や楽天、韓国プロがキャンプ地として利用していたが、二軍とは言え人気球団のキャンプ地移転に際して施設の改装を行ってこれを迎えた。

タイガースを迎えるにあたってスタンド横の駐車場を一部取り壊してブルペンを設置した。
タイガースを迎えるにあたってスタンド横の駐車場を一部取り壊してブルペンを設置した。

大盛況の若トラキャンプ

 二軍のキャンプと言えば、大物ルーキーがいるようなときは別として、見学者もまばらなのんびりした風景が定番ではあるが、人気の日本一球団となれば、話は別である。日曜日ということもあってか、昨日18日の具志川球場は、一軍同様、タイガースのレプリカジャージをまとった、大勢のファンで賑わっていた。

スタンド下の自販機では昨年話題になったあのキャンディーとコラボしたドリンクが販売されていたが、早々に売り切れていた。
スタンド下の自販機では昨年話題になったあのキャンディーとコラボしたドリンクが販売されていたが、早々に売り切れていた。

 山を切り開いてできた球場の山頂部分、バックスクリーン裏にある施設の駐車場は練習試合開始時点で既に満車。ネット裏のスタンド席とタイガースベンチのある三塁側内野芝生席はほぼ満員状態であった。

 取材メディアの数も二軍キャンプとは思えないほどで、この日行われたアマチュアチームとの練習試合後のバッティング練習の際も、練習終了後の選手へのインタビューでもあるのだろう、タレントやレポーターがスタンドで待ち構えていた。

小さなスタンドは大入りの大盛況だった。
小さなスタンドは大入りの大盛況だった。

「二軍」の未熟さが露呈した練習試合

 この日の相手は、地元実業団チーム・エナジック。阪神はベテランの秋山を先発投手に、ドラフト3位ルーキーの山田(仙台育英高)を9番ショートで起用し、これを迎えた。

 秋山は初回にいきなり失点したものの、その後は落ち着いた投球で、3回を1失点でまとめた。山田も6回にタイムリーを放つなど期待をもたせたが、秋山のあとを継いだ投手陣がプロらしからぬ投球で試合を壊してしまった。

 5回からマウンドに立った3年前のドラ3佐藤蓮だったが、制球が定まらず、4失点で1アウトしか取れず降板。育成からの支配下登録復帰が遠のく結果となった。その後もリリーフ陣が失点を重ね、計8失点。打線もエナジックの繰り出すピッチャーにタイミングが合わず、2点を返すのがやっとだった。

 守りの面でも6回表、1,2塁の場面からゲッツー完成かと思われた送球をファースト遠藤が弾いてしまった間にエナジックの2塁走者に隙をつかれてホーム生還を許し、逆に攻撃では要所要所で併殺を喰らうなど、どっちがプロかと言われても仕方のない試合となった。

 対するエナジック打線は、若トラ投手陣から、ミートに徹したバッティングで着実に得点を重ねていった。打球は決してプロのそれのような鋭いものではなかったが、とにかく低い弾道の打球を野手のいないところに返すという粘り強いバッティングは、昨年の日本シリーズで阪神打線が見せたそれのお株を奪うかのようだった。

 試合後半は、相手の小刻みな継投の前に打線は沈黙。6回と9回に1点ずつを返すのがやっとだった。

 このていたらくに試合後はベンチ前で長いミーティングが開かれ、首脳陣からの活が入れられていた。

試合後半は山田と次世代ショートを争うことになるだろう同じ高卒ルーキー百崎がショートの守備についた。
試合後半は山田と次世代ショートを争うことになるだろう同じ高卒ルーキー百崎がショートの守備についた。

 球団史上初の連覇を目指す阪神だが、ライバル球団のマークが確実に強くなる中、新戦力の台頭、戦力の底上げはその目標のためには欠かせない。この日、一軍は広島との練習試合に完封で貫禄の勝利を飾っている。若トラたちにはまだまだ伸びしろも多い。残されたキャンプ期間で個々の選手がこの日の課題を克服していくことが、戦力の底上げ、ひいては連覇につながるはずだ。

(写真は筆者撮影)

ベースボールジャーナリスト

これまで、190か国を訪ね歩き、23か国で野球を取材した経験をもつ。各国リーグともパイプをもち、これまで、多数の媒体に執筆のほか、NPB侍ジャパンのウェブサイト記事も担当した。プロからメジャーリーグ、独立リーグ、社会人野球まで広くカバー。数多くの雑誌に寄稿の他、NTT東日本の20周年記念誌作成に際しては野球について担当するなどしている。2011、2012アジアシリーズ、2018アジア大会、2019侍ジャパンシリーズ、2020、24カリビアンシリーズなど国際大会取材経験も豊富。2024年春の侍ジャパンシリーズではヨーロッパ代表のリエゾンスタッフとして帯同した。

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