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BCリーグチャンピオンシップ開幕。滋賀が投打に群馬を圧倒し、先勝

阿佐智ベースボールジャーナリスト
前夜からの雨の中、選手も総出のグラウンド整備の上行われたチャンピオンシップ

 26日、プロ野球独立リーグ、ルートインBCリーグのチャンピオンシップが滋賀県のオセアンBCスタジアム彦根で開幕した。5戦3勝制のこのシリーズに進んだのは、中地区を制した群馬ダイヤモンドペガサスと西地区で初優勝を遂げたオセアン滋賀ブラックス。それぞれ準決勝プレーオフでワイルドカードの信濃グランセローズ、東地区チャンピオンの埼玉武蔵ヒートベアーズを倒して駒を進めてきた。群馬はリーグ優勝4回、独立リーグ日本一2回を誇るポストシーズンの常連チーム。対する滋賀は、球団創設5年目で初めてポストシーズン出場の新興チームだ。さらに言えば、先日、滋賀球団の親会社が主導し、来季から西地区4球団を率いて新リーグ「日本海オセアンリーグ」を立ち上げることを発表しており、「BCリーグよ黒に染まれ!」のスローガンのもとに爪痕を残そうと意気込んでいる。

 独立リーグ界の新盟主を目指す滋賀と今や日本最大の独立リーグとなったBCリーグの古豪・群馬の意地がぶつかる因縁のシリーズの行方はいかに。

「探り合い」の初戦

 レギュラーシーズン中は対戦がなかった両チームとあって、ある意味、「自分たちの野球」をそれだけきちんとやるかが勝敗の鍵を握る。

 群馬のコーチ兼任のベテラン井野口裕介は、「相手のことは全くわかりません。先発の菅原投手については、動画は見ていますが。そんなに気にならないですよ」と泰然自若の構え。

 一方、メンバーのほとんどが入れ替わった中、昨年に引き続いてチームに残り、ファーストのレギュラーとして3割をマークした片山智哉は、リーグ優勝最多を誇る群馬相手にも、強いほうが面白いと今年生まれ変わったチームに自信をもっているようだった。

「昨年とは全く雰囲気が違います。メンバーのほとんどが入れ替わってチーム力が上がりましたし、練習もここまでやるかっていうくらいやりましたから、開幕の時には今年はいけるっていう自信がありました。自分自身は、去年までは多少調子が悪くても試合には出れるっていう油断もありましたけど、今年は控えも選手もいいので、緊張感がありました。それに自分が打たなくても、他の誰かがなんとかしてくれるっていうのもありました」

試合前の両軍整列のもとでの国家斉唱
試合前の両軍整列のもとでの国家斉唱

 前夜からの雨でグランドコンディションが良くはなく、両軍ともシートノックなし、オープニングセレモニーもなしという静かな展開の中、試合は始まった。群馬は一昨年15勝で最多勝に輝いた青柳正輝、滋賀は今年の最多勝投手でプロ注目の菅原誠也を先発に立ててきた。

群馬先発の青柳
群馬先発の青柳

 初回、2回と先頭打者が四球を選んで出塁しながらも後続が続かず無得点に終わった群馬に対し、滋賀は初回1アウトから2番楠本歩がセンター前ヒットで出塁すると、続く3番小原駿太がエンドランのサインで放ったサードへのボテボテの打球が内野安打となるラッキーな展開にもちこむ。4番小笠原康仁もレフト前ヒットで続き、1アウト満塁となった後の5番松田真弥のファーストゴロがホーム悪送球となり、滋賀は労せずして先制した。その後も犠牲フライと敵失で2点を追加した滋賀は、この初回の3点で完全に試合の主導権を握った。3回には、松田が、打った瞬間それとわかるシリーズ1号となる2ランホームランをライト芝生席に叩き込み、試合を決定づけた。

シリーズ1号HRを放った松田
シリーズ1号HRを放った松田

 滋賀の先発マウンドに立った本格派右腕・菅原は、序盤の大量点で余裕ができたのか、3回以降は完全に立ち直り、危なげなく中盤を乗り切った。5回には48盗塁のリーグ記録を打ち立てた不動トップバッター池田陵太のレフトフェンス直撃の三塁打でさらに2点を追加した滋賀ナインの姿に、普段よりかなり多くのファンが詰めかけたスタンドが盛りあがった。

3回以降危なげないピッチングを見せた菅原
3回以降危なげないピッチングを見せた菅原

 しかし、7回2死1、2塁からここまで群馬打線に5安打を許しながら得点を許さなかったエ菅原が突如降板。群馬ベンチは大いに沸き立つが、急遽リリーフのマウンドに立った左腕・荒川が三振でピンチを切り抜けた。その後も滋賀のリリーフ陣は群馬打線につけいる隙与えず、完封リレーで試合を締めくくった。

 試合は7対0という圧勝で滋賀が初戦をものにした。試合後の監督、選手のコメントは以下のとおり。

試合後、ヒーローインタビューを受ける松田と菅原
試合後、ヒーローインタビューを受ける松田と菅原

群馬・牧野監督(元オリックスなど)

群馬は3回以降5人の投手を1イニングずつ登板させた(写真は2番手の吉岡豊司)
群馬は3回以降5人の投手を1イニングずつ登板させた(写真は2番手の吉岡豊司)

「シーズン中の対戦がなかった中で、手探りの第1戦。事前に動画とかは見れましたけど、直に対戦しないとわからないことも多いですから。今日は初回のこちらのミスでこういう試合になったが、野球では勢いをつけてしまうとよくあること。(2番手からの小刻みな投手リレーは相手打線を試す意図と、投手陣の調子をみるためだったかという質問に対して)そうですね。十分に戦えるという感触は得ました。向こうは投手の2枚看板でシーズンを乗り切ってきたとは聞いています。今日は菅原くんにやられましたけど、3つ勝てばいいわけですから。5つの内1つを落としたということです。もちろん今日も勝つに越したことはないんですけど(笑)。あとに引くような負けではないです。シーズンもそうですが、独立リーグでは毎年メンバーが大幅に入れ替わるので、過去の成績は関係ない。このシリーズも挑戦者のつもりで戦いますよ」

群馬4番・井野口選手兼任コーチ(3打数無安打1四球)

「(滋賀先発の菅原について)いいピッチャーですね。でもまあ、どうしようもなかったというわけではないです。勝敗に関しても今日はうちのミスですから。(6回の三振について)いいボールでしたね。スライダー?フォークですか。西地区とはずっとやっていなかったんですが、特に手強いとかという印象はないです。ピッチャーは、先発以外は決して強くないとは聞いているんで、とにかく早めに点を入れたいですね」

 勝った滋賀も優勝に向けて十分に手応えを感じているようだった。

柳川監督(元ソフトバンク)

「(菅原と同じ12勝を挙げた吉村を第1戦にもってきた準決勝ラウンドと違い、菅原を先発に起用したことについて)特別な意図はないです。前回の球数とかを考えて今日は菅原にいってもらいました。前回のラウンドと同じ、うちの野球をしっかりやれば勝てる。今日はそういうゲームでした。菅原の降板も前回と一緒でマメが潰れたんです。僕も一緒に練習しているからわかるんですけど、ボールがひとつひとつ違うんです。それで縫い目が合わないとああなるんですね。(立ち上がりが良くなかったのでは、という問に)向こうの打線が強いというのは聞いていたんで、慎重にいき過ぎた部分はあったんでしょうけど、こっちは全く気にはしていませんでした。菅原ならあれくらいやりますよ。明日は吉村の先発でいきます。(第3戦以降はアウェイになるが)それは全く関係ないです」

菅原投手(先発で6回2/3を投げ無失点)

「途中降板は監督さんのおっしゃるとおりマメです。今年はそういうの多いですね。打線が強いんでとにかく長打を打たれないように気をつけました。自分の武器は速球だと思っているんで、とにかくしっかり腕を振りました。井野口さんの三振はフォークです。満点の球ではなかったですけど、腕が振れてた分しっかり落ちてくれました。(シリーズの展開によってはもう一度出番があるかもしれないという話に)しっかり準備をするだけです」

BCリーグ最初で最後の優勝を目指して滋賀ブラックスは戦う
BCリーグ最初で最後の優勝を目指して滋賀ブラックスは戦う

 ルートインBCリーグチャンピオンシップ第2戦は本日13時よりオセアンBCスタジアム彦根で行われる。

(写真は全て筆者撮影)

ベースボールジャーナリスト

これまで、190か国を訪ね歩き、23か国で野球を取材した経験をもつ。各国リーグともパイプをもち、これまで、多数の媒体に執筆のほか、NPB侍ジャパンのウェブサイト記事も担当した。プロからメジャーリーグ、独立リーグ、社会人野球まで広くカバー。数多くの雑誌に寄稿の他、NTT東日本の20周年記念誌作成に際しては野球について担当するなどしている。2011、2012アジアシリーズ、2018アジア大会、2019侍ジャパンシリーズ、2020、24カリビアンシリーズなど国際大会取材経験も豊富。2024年春の侍ジャパンシリーズではヨーロッパ代表のリエゾンスタッフとして帯同した。

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