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同一カードが続く悲劇。戦力差が如実に現れるルートインBCリーグ:茨城の「雄たけび王子」、7回に力尽く

阿佐智ベースボールジャーナリスト
気合の入った投球を見せながらも敗戦投手となった矢萩投手(茨城アストロプラネッツ)

 新型コロナ禍にあって、多くのスポーツリーグがフォーマットの改変を余儀なくされている。プロ野球NPBのパ・リーグでは6連戦制を採用したのだが、この6連戦制というのは単なる3連戦が2つ続くのとはわけが違うようだ。ショートリリーフなどは、同じ相手との対戦が続くと球筋が読み取られてしまうという。なによりも、はじめに連敗してしまうと、相手が同じだけに、そのままズルズルと負けを重ねてしまうことになりかねず、実際、同じ相手に一週間ひとつも勝てないという悲劇も起こっている。

14日茨城対栃木の試合の行われた高萩はぎまろ球場
14日茨城対栃木の試合の行われた高萩はぎまろ球場

 NPBに続いて6月下旬に開幕した独立リーグも、リーグ戦のフォーマット改変を余儀なくされている。今シーズンから12球団制となったルートインBCリーグは、例年70試合のレギュラーシーズンを60試合に縮小、移動による感染リスクを最小限にするため、東西2地区制を4チームずつの3地区制に再編、さらに地区内の対戦も近接する2チーム同士の試合を相対的に増やし公式戦を実施する。とにかくシーズンを実施しようという苦肉の策で、レギュラーシーズン後、プレーオフを行うという。

 この結果、事実上の6地区制の中、同じ対戦が続いてしまうという結果になっているのだが、そのため、いったん勝ち星に差がついてしまうと、敗戦が続いている方は、まさに「蛇ににらまれたカエル」状態となり、さらに黒星を重ねることになってしまう。東地区の栃木ゴールデンブレーブスと茨城アストロプラネッツの場合はそれで如実に出ており、昨年の独立リーグ日本一の栃木に昨年新規参入した茨城は歯が立たず、29試合で実に14.5ゲーム差がついている。

開門前には大勢の市民が列を作っていた
開門前には大勢の市民が列を作っていた

 昨日14日に行われた茨城アストロプラネッツ対栃木ゴールデンブレーブスの試合は、海岸沿いの町、茨城県高萩市のはぎまろ球場で行われた。茨城球団は球団発足の昨年から始めた「フレンドリータウン協定」策を拡大。この協定を結んだ県内の自治体の球場で、その自治体の市民を無料招待するかたちで試合を実施している。この日も、町を見下ろす丘の上にあるこぢんまりとした球場に開門前から市民が列を作っていた。かつては炭鉱の町として栄えたこの町も、廃坑になってからは、人口減に悩まされる日本の地方都市の典型となっている。市当局にとっても、独立リーグではあれ、プロ野球興行というイベントは、歓迎すべきことである。試合前には、大部市長も来場し、始球式に臨んでいた。

始球式に臨む大部高萩市長
始球式に臨む大部高萩市長

 試合は、茨城先発・矢萩楊一郎(土浦湖北高)、栃木先発・比嘉大智(愛知東邦大)で開始された。初回、ファーストのエラーもあり、立ち上がり制球に苦しむ矢萩から1アウト1、2塁のチャンスを栃木はつかむが、4番の佐々木斗夢(立正大)がバットを止め、ピッチャーゴロゲッツーに倒れ、これが矢萩を立ち直らせた。

栃木先発の比嘉
栃木先発の比嘉

 しかし、茨城は2回に水野貴士(亜細亜大)の今シーズン第1号ホームランで先制したものの、その後は無得点。一方の栃木は、先制直後の3回表に犠牲フライで追いつく。

 エラー3つと味方に足を引っ張られるかたちとなった矢萩だったが、一球投げるたびにあげるその声が、コロナで応援自粛となったスタンドに鳴り響く。イニングの最後のアウトをとると雄たけびを上げる地元出身投手のその姿に一塁側茨城ファンは拍手を送った。

7回途中まで力投を見せた矢萩(茨城)
7回途中まで力投を見せた矢萩(茨城)

 しかし、自力の差というものはゲーム終盤に出るもので、7回裏、栃木は猛暑の中、疲れの見え始めた矢萩に襲いかかり、1アウト1、3塁から1番内山翔太(桐蔭横浜大)が、豪快にレフトに叩き込んで試合を決めた。

試合を決めるホームランを放った内山(栃木)
試合を決めるホームランを放った内山(栃木)

 このあと、矢萩は気持ちが切れたのか、連打を浴びこの回5失点で降板。後続も打ちこまれ、結局計8点を失った。

途中まで粘りの投球を見せた矢萩だったが…
途中まで粘りの投球を見せた矢萩だったが…

 茨城は、最終回に水野がこの日2本目のホームランを浴びながらも後続が打ち取られ、8対5で、茨城は22敗目を喫してしまった。これで茨城は今シーズン4勝22敗となってしまった。

 このカードは今日15日にも、攻守を入れ替えて栃木県佐野市で行われる。

(文中の写真は筆者撮影)

ベースボールジャーナリスト

これまで、190か国を訪ね歩き、23か国で野球を取材した経験をもつ。各国リーグともパイプをもち、これまで、多数の媒体に執筆のほか、NPB侍ジャパンのウェブサイト記事も担当した。プロからメジャーリーグ、独立リーグ、社会人野球まで広くカバー。数多くの雑誌に寄稿の他、NTT東日本の20周年記念誌作成に際しては野球について担当するなどしている。2011、2012アジアシリーズ、2018アジア大会、2019侍ジャパンシリーズ、2020、24カリビアンシリーズなど国際大会取材経験も豊富。2024年春の侍ジャパンシリーズではヨーロッパ代表のリエゾンスタッフとして帯同した。

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