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ラテンアメリカンシリーズ開幕、来年以降はカリビアンシリーズと統合か

阿佐智ベースボールジャーナリスト
メキシコ・ベラクルスで行われたラテンアメリカン・シリーズの開会式

 ウィンターリーグもいよいよラストステージに入ってきたが、中南米カリブ地域では、メジャーリーガーも参加するドミニカ、ベネズエラ、プエルトリコ、メキシカンパシフィックの4大リーグにキューバを加えた5か国が雌雄を決するカリビアンシリーズに先駆けて、コロンビア、ニカラグア、パナマ3か国のリーグに、メキシコの独立リーグ、ベラクルスリーグを加えた4リーグが主体となって行うラテンアメリカンシリーズが行われている。元々は、コロンビアとニカラグアのチャンピオンによる国際シリーズに、ベラクルスリーグが呼びかけ、パナマを加えて2013年に始まったこのシリーズだが、昨年は今やドミニカをしのぐメジャーリーガー輩出元となったオランダ領キュラソーが参加、今年はセミプロリーグを発足させたアルゼンチンが初参加している。

 1月26日に始まった、今年で7回目を迎えるこのシリーズだが、当初予定されていたコロンビア・バランキージャでの開催が、メキシコ・ベラクルス州での開催に変更となった。設備の面で劣るベラクルスでの開催は、初回大会以来で、球場は、ベラクルスリーグでは使用しない、かつてメキシカンリーグが使用していたベラクルスのベト・アビラ球場、今季プロチームが復活したコルドバのベイスボルラマ球場の他、州都ハラパや優勝チーム・トビスの本拠、アカユカンの4球場を使用することになった。

メキシコ・ベラクルスリーグからは2チームが出場

入場行進をするベラクルスリーグチャンピオン、アカユカン
入場行進をするベラクルスリーグチャンピオン、アカユカン

 ホスト国となったメキシコは、リーグ名を一昨年まで使用していた「リガ・インベルナル・ベラクルサナ(ベラクルス冬季リーグ)」に変更し、今季は6チームで20~21試合のレギュラーシーズンを戦った。このリーグには、日本から独立リーグ・ルートインBCリーグのベテランスラッガー、井野口祐介(群馬ダイヤモンドペガサス)が参加した。

 メキシコでは同一オーナーによる複数チームのリーグ参戦が認められているが、今季のこのリーグには、トビス・デ・アカユカンのオーナーが運営するチームが他に2チームも参戦。そのうち「プロ未満」のアカデミー選手によって構成されるカニェロス・デ・ウルスモガルバンは、シーズン20試合を全敗で終える「世界記録」を立てた。井野口は当初このチームに属していたが、その後同じオーナーのロッホス・デ・ベラクルス・ロッホス、そして最終的にはアカユカンに移籍し、リーグ最多となる2本の3塁打を放った。ポストシーズンでも活躍が期待されたが、チレロス・デ・ハラパとの決勝シリーズの途中で、第2子の出産立ち合いのため、帰国となった。

 決勝シリーズは、昨年同様、リーグ運営の中心である2人のオーナーの球団、アカユカンとハラパとの対戦となった。7戦制のシリーズは、レギュラーシーズン2位のチレロスが2連勝で最初の週を終え、そのまま昨シーズンの雪辱を果たすかと思われたが、3勝の後の「あとひとつ」を決めることができず、昨年のチャンピオン、トビスが1勝3敗から見事逆転優勝を果たした。

 ラテンアメリカンシリーズには、この決勝シリーズを戦った両チームが出場、アカユカン、ハラパとも、本拠地に凱旋する。

コロンビア、ニカラグア、パナマの状況

 コロンビアリーグは、意外にも日本とのかかわりは深い。2000年代初頭から日本人選手を受け入れ、BCリーグとも提携し、一時は選手を毎年受け入れてもいたが、今季は、四国アイランドplus・愛媛マンダリンパイレーツでプレーしていた2投手、片山悠と樽見万寿樹が日本人選手受入れ経験豊富なトロス・デ・シンセッホに在籍していた。

 このリーグでは、41試合のレギュラーシーズンで7割を超える勝率を残した名門、カイマネス・デ・バランキージャが順当にチャンピオンシップを勝ち抜いた。

 昨シーズン、首都マナグアに新球場が開場、前回のラテンアメリカンシリーズを実施し、昨年秋にはU23ワールドカップの開催も予定されていたニカラグアだったが、政情不安のため中止され、ウィンターリーグの開催も危ぶまれたが、各チームレギュラーシーズン24試合と規模は大幅に縮小されたものの、なんとかリーグ戦は開催された。

こちらもシーズン最高勝率を残したレオーネス・デ・レオンが順当にポストシーズンを制した。

 メジャーリーガーの参加しないプロリーグより地域密着のアマチュア野球の方が人気という状況のもと、毎年細々と行われている印象のパナマリーグは、例年通り各チーム20試合のレギュラーシーズンを12月中に実施し、年明けからのプレーオフをトロス・デ・エレラが制した。

 

拡大するラテンアメリカンシリーズ

 この主要4か国に加え、今大会は、昨年初参加のオランダ領キュラソー、それに数年前にセミプロリーグを発足させたアルゼンチンが参加予定だった。しかし、直前になってキュラソーが選手のビザの問題で参加を取りやめるという事態になり結局初参加のアルゼンチンに、メキシコ・ベラクルスリーグの2位チーム、ハラパが出場してこれに対応した。

 26日の初戦では早速波乱が起こった。アルゼンチンチャンピオン、ファルコンズ・デ・コルドバが、マイナーのA級でもプレー経験があり、この冬のシーズンは母国の名門・カラカスでも投げていたベネズエラ人投手ヨイメール・カマチョの好投もあり、メキシコ第1代表のアカユカンを完封で下した。一方で、第2代表のハラパは、延長戦の上パナマを下し、ニカラグアはコロンビアを5対0の圧勝で好スタートを切った。

ちなみに、本大会直前に、コロンビア、ニカラグア、パナマの3か国の来年のカリビアンシリーズ出場が大会を統括するカリブ野球連盟から発表された。となれば、ラテンアメリカンシリーズの存続が取り沙汰されることになるのだろうが、ベラクルスリーグ関係者に問い合わせたところ、3か国のカリビアンシリーズ出場は、「予選」からの参加で、現在5か国の出場とフォーマットを組みにくい状況の中、6番目の椅子を争う場所としてラテンアメリカンシリーズは実施されるのだと言う。来年は、3か国のうち、このシリーズで一番いい成績のチームがカリビアンシリーズに進出することになるようである。

今後このラテンアメリカンシリーズは、チリや昨年秋にプロリーグを発足させたグアテマラなどの出場も射程に置いている。中米のエルサルバドルやホンジュラスでも国内リーグは行われ、その国出身のマイナーリーガーも出場している。今後、ラテンアメリカンシリーズがこれらの国々のリーグを包摂し、上位のカリビアンシリーズとの連携のもと、中南米カリブ地域の野球はますます発展していくことが期待される。

(写真は全てEdogar Ochoa提供)

 

ベースボールジャーナリスト

これまで、190か国を訪ね歩き、23か国で野球を取材した経験をもつ。各国リーグともパイプをもち、これまで、多数の媒体に執筆のほか、NPB侍ジャパンのウェブサイト記事も担当した。プロからメジャーリーグ、独立リーグ、社会人野球まで広くカバー。数多くの雑誌に寄稿の他、NTT東日本の20周年記念誌作成に際しては野球について担当するなどしている。2011、2012アジアシリーズ、2018アジア大会、2019侍ジャパンシリーズ、2020、24カリビアンシリーズなど国際大会取材経験も豊富。2024年春の侍ジャパンシリーズではヨーロッパ代表のリエゾンスタッフとして帯同した。

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