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【3.11震災から4年】サッカーと映画の復興支援「神様や魔法使いでなくてもできることがある」

浅野祐介OneNews編集長

2011年にスタートした「ヨコハマ・フットボール映画祭」。国内外の「サッカーを題材とした映画」のみを上映するこのユニークな映画祭は回を重ねるごとにその規模を拡大し、5年目の今年は全国展開へ。1月に新潟、仙台、松本で、2月に愛媛、横浜、大阪、福岡で開催し、3月14日に札幌での開催が予定されている。

これまで、主催者である映画祭プロデューサーの福島成人さんと、全国展開の窓口となっている‘ツンさん’ことツノダヒロカズさんの、映画祭への思いを紹介したが、今回は「復興支援」という切り口でサッカーと映画への思いを聞いた。

――上映作品のひとつ、『旅するボール』は東日本大震災の被災地が題材になっています。復興支援という点で、映画やサッカーができることについてはどう考えていますか?

ツン「復興の進み具合でいうと、進んでいるところとそうでないところの差がとてもあります。そういう意味では、年月が経って、しんどくなっている部分があります。あるデータがあって、それは、被災地でのいじめが他の都道府県に比べて10倍くらいになっているというもの。そのデータが出たとき、SNS上では『そんなことないだろ』って騒がれていましたが、僕は『ある』と思っています。個人的な分析ですが、僕はこの4年間で70回くらい東北に行っていて、そこで感じるのは、やっぱり我慢と格差というのは人にストレスを与えるから、その結果がいじめや暴力につながってしまうことはあるんじゃないかと。我慢って何かというと、僕らはこうして普通の日常生活を送っているけど、間もなく震災から4年が経つ今でも狭い仮設住宅に住んでいる子は何千人といて、プレハブだから夏は暑くて冬は寒い。たくさんの人が、そこにいまだに住んでいるという事実があります。そんな中、子どもは馬鹿じゃないから我慢して黙ってる。そして格差。震災当時は“みんな”が大変だったから我慢できた。でも、例えば仙台の一番大きい仮設住宅のそばにIKEAができる。そうすると目の前に高級車で乗りつける人が来て買い物をして、一方こっちではベッドなんか入らないようなところに住んでいる人がいる。そんなものをまざまざと見せつけられたら、いじめなんかあっても当然じゃないかと感じます。僕らは神様や魔法使いじゃないから、家をプレゼントしたり、親を亡くしてしまった子の親を生き返らせたりすることはできない。でも、偽善かもしれないけど、年に数回でも子どもたちをスタジアムに連れていったり、一緒にサッカーをしたりすることで、その1時間や2時間は嫌なことを忘れられるんじゃないかなと。仕事をしていてもストレスはありますよね。そういうときは、好きなサッカーを見たり、お酒を飲んだり、おいしいものを食べたりすることでリフレッシュする。そういうことを東北の子どもと一緒にやる。一つの理想は、この映画祭のスピンオフ企画ですけど、(宮城県北東部の)牡鹿半島に映画館を作ること。牡鹿半島には映画館が一つもないんです。そういうところに、映画館を作ろうよって。正確には実際に映画館を建てるわけじゃないけど、映写機を持っていって、例えばドラえもんの封切り直後のような作品を上映したら、街中の子が全員来ますよ。子ども向けだから、映画を見ながら走り回ろうが、ポップコーン食べたりしてもいいじゃないですか。僕は今、サッカーでしか被災地支援をしていないですが、福島くんの映画という視点で、もっといろんなことができるんじゃないかと思っています」

――映画のパワーは大きいですよね。

ツン「そう思います。サッカーだと動ける子だけかもしれないけど、『ドラえもん』とか『クレヨンしんちゃん』とか『妖怪ウオッチ』だったら、みんな集まります。なぜ子どもにフォーカスするかというと、子どもの笑顔は親にとっても最大のビタミン剤になるから。親子で、体育館を貸し切ってやってもいいかなと思います」

――できることの可能性はたくさんありますね。ありがとうございました。

OneNews編集長

編集者/KKベストセラーズで『Street JACK』などファッション誌の編集者として活動し、その後、株式会社フロムワンで雑誌『ワールドサッカーキング』、Webメディア『サッカーキング』 編集長を務めた。現在は株式会社KADOKAWAに所属。『ウォーカープラス』編集長を卒業後、動画の領域でウォーカー、レタスクラブ、ザテレビジョン、ダ・ヴィンチを担当。2022年3月に無料のプレスリリース配信サービス「PressWalker」をスタートし、同年9月、「OneNews」創刊編集長に就任。

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