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本田の穴は埋まらない、「世界最速でのワールドカップ出場」をかけたヨルダン戦への日本の課題

浅野祐介OneNews編集長
カナダ戦に勝利した日本代表 [写真]=Getty Images

試合後、長谷部誠はまず、反省点を口にした。

「セカンドボールを拾われてましたし、ボールを拾って組み立てる時も簡単なミスがたくさんあったし、フィジカル的な部分でも負けてる部分があった。この3つが良くなかった点だと思います」

セカンドボールへの対応については、前半でピッチを退いた内田篤人も同じように語っている。

「セカンドボールを拾えなかった。ボールが落ちるところにカナダの選手が多かったかなと思います。ボールが収まるとか収まらないとかじゃなくて、ボールが拾えなかった」

長谷部が説明するに、セカンドボールへの対応については「相手が2トップということで、ゴールキックはボランチの1人が競るという約束事」があったが、「中盤のところ、トップ下、ボランチ、サイドの選手というところでなかなかセカンドボールが拾えていなかった」ことが原因でカナダに後れを取った。長谷部は「もう少しセカンドボールの意識を全体的に持たなきゃいけないし、その意識を持つことでポジショニングも変わってくる。セカンドボールはほとんどポジショニングで決まるので、そういうところが今日は欠けていたかなと思います」と言葉を続けている。

本田圭佑と長友佑都、カナダ戦の一つの焦点はこの2人の“代役”にあったが、本来は本田が担うトップ下を前半で務めた香川真司もセカンドボールへの対応をチームとしての課題に挙げた。

「前半に関してはトップ下うんぬんではなくて、すべてにおいて相手のほうが球際やセカンドボール、プレスの掛け方だったりがうまくて、こっちは逆にやりたかったことができなかった。そういう意味では、いい課題というか、前半の戦いのまま行ったらヨルダン戦は厳しいと思いますけど、今日の試合を受けて修正していきたいと思います」

「(ハーフタイムに)まずはディフェンスのほうで、プレスの掛け方に関して、行っているけどかわされたり、曖昧なディフェンスが多かったので、しっかりFWから1つの方向に、高い位置からではなく、低い位置からコンパクトにしながら連動してサイドに追いやる守備をしていこうという話もしました。それを前半からやれればよかったんですけど、なかなか意思統一ができず、後半はうまくやっていこうという話はしていて、攻撃においては距離の面で、特に前半の最初のほうは両サイドハーフが張っていたから。それプラス、ボランチがなかなかボールを受けられなくて、センターバックから(前田)遼一さんへのロングボールが多くて、相手も球際が激しかった分、そこで起点が作れなかった。そういう意味では、前半の途中から乾(貴士)がうまく中に入ってボールを受けることでリズムが出てきた。そういう意味ではちょっと形にとらわれすぎたと思います」

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一方、後半からピッチに登場した中村憲剛は「みんなのポジションがちょっと等間隔すぎるかなと思っていて、近距離でテンポ良くつなぐことができていなかったので、後半から出ると聞いた時はしっかり前と後ろをつなぐというか、そこをまずやったほうがいいかなと考えました。前半はカウンターで良さは出てたから、それはそれで大事にしつつ、(自分が)トップ下に入ったらどうするか考えながらを見ていました」

自身がトップ下に入ることでボールの収まりが良くなったことについて、中村は「中盤的なタイプというか、自分自身がセカンドアタッカーのタイプではないので、自分でやれることをやろうとなったら必然的にそうなるというか、結局、相手のボランチもうちのダブルボランチに来ていたので、ヘルプに1人は入れればいいかなという感じはしていました」と語っている。

カナダ戦では、セカンドアタッカータイプの香川と、より中盤的なタイプの中村憲剛がトップ下を務めたわけだが、奇しくも、中村憲剛の次の言葉に本田不在の影響が表現されているように思う。

「あとは得点が足りなかったかなと思う。崩しに関してはかなりできていたけど、ちょっと攻め急ぎというか、急いで取られるシーンが少し多かったので、もっと相手の陣地で回せてもいいかなという感じはしました」

この「攻め急ぎ」を回避し、攻撃にタメを作り変化をもたらすのが本田のキープ力であることはこれまでの戦いからも証明されている。中盤からゲームを作る役割は遠藤保仁が担うものの、高い位置でキープ力をベースにゲームを作る役割を本田以上にこなせる人材はいない。結果、カナダ戦でも、中央からの攻めはおのずとカウンターが主体となった(もちろん、アウェーのヨルダン戦ではカウンター主体での攻撃もプランの一つになるだろうが)。

長友佑都の代役については好パフォーマンスを披露した酒井高徳で目処が立ったように見えたが、気になるのは後半途中での負傷交代。負傷者という「懸念」と、セカンドボールへの対応、本田不在時の攻撃の形という「課題」を抱えた日本は、“ワールドカップ世界最速出場”をかけて、26日のヨルダン戦に挑む。

OneNews編集長

編集者/KKベストセラーズで『Street JACK』などファッション誌の編集者として活動し、その後、株式会社フロムワンで雑誌『ワールドサッカーキング』、Webメディア『サッカーキング』 編集長を務めた。現在は株式会社KADOKAWAに所属。『ウォーカープラス』編集長を卒業後、動画の領域でウォーカー、レタスクラブ、ザテレビジョン、ダ・ヴィンチを担当。2022年3月に無料のプレスリリース配信サービス「PressWalker」をスタートし、同年9月、「OneNews」創刊編集長に就任。

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