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消費増税カウントダウン、いまのうちにやっておくべきことはある?

浅田里花ファイナンシャル・プランナー(CFPⓇ・1級FP 技能士)
いよいよ3度目の正直で、消費税10%の時代がやってきそうです。(ペイレスイメージズ/アフロ)

◆社会保障の財源となる増税分の消費税

 消費税が8%から10%に引き上げられるまで、あと1年となりました。

 当初のスケジュールでは2015年10月に引き上げられるはずだったのが、2017年4月に1年半延期。しかし、デフレ脱却が思うように進んでいないことから、個人消費を落ち込ませないよう、さらに2019年10月へと延期されました。

 予定より4年遅れになったのは家計にとって嬉しいことでしたが、いよいよ3度目の正直で、消費税10%の時代がやってきそうです。家計に響くから、できればアップして欲しくないというのが生活者の本音でしょう。

 そもそも消費増税は、社会保障制度の財源を確保するために行われ、消費税率アップによる増収分は全て社会保障に充てるとされています。

 社会保障は、私たちが不安なく暮らしていくために欠かせない制度であって、医療や介護、年金といった分野だけでなく、将来を担う子どもを社会全体で支えるなど、子育て支援策も含まれます。

 子育て支援策のひとつとして、「幼児教育・保育の無償化」が2019年10月から実施されます。2020年4月に予定されていたのが、消費増税の時期に合わせて前倒しされるかたちです。

 これは、3歳から5歳までの全ての子どもと0歳から2歳までの住民税非課税世帯の子どもについて、幼稚園・保育所・認定こども園の費用を無償化するというもの(利用状況などにより月の上限額あり)。消費税アップによって家計支出が増えるものの、子育て世帯の家計には助けとなるでしょう。

 また、2020年4月からは大学など「高等教育無償化」が実施されます。現在のところ、住民税非課税世帯(年収270万円未満)に大学の入学金・授業料を減免、300万円未満の世帯には住民税非課税世帯への支援額の3分の2、380万円未満の世帯には3分の1を支援となっています。

 家庭の経済的事情で進学を諦めざるをえない子どもをなくす施策で、学ぶ意欲がある子どもにとって朗報だといえるでしょう。

 制度の対象となる子どもがいない家庭にとっては、消費税アップによる負担が重みを増すばかりですが、社会保障の恩恵を全く受けない人はいません。いま問題なく暮らしていても、予期せぬ事態で手厚い保障が必要になることもあり得ますから、増税分は安心のための必要経費と割り切るしかなさそうです。

◆飲食料品などに適用される「軽減税率」

 ただし、今回の消費増税にはこれまでになかった「軽減税率」が取り入れられており、大きく家計を圧迫しないよう、一部の品目は税率8%に据え置かれます。

 「軽減税率」の対象となる品目は、(1)酒類および外食を除く飲食料品、(2)定期購読契約が締結された週2回以上発行される新聞。

 (1)が対象になった理由は比較的わかりやすいと思います。生きていくのに不可欠の食料品や飲料品は、低所得者から富裕層まで誰もが日々購入するもの。富裕層も恩恵を受けるとはいえ、「軽減税率」がないより低所得者の負担抑制にはつながると思われます。

 

 ただし、軽減税率の対象となる「飲食料品」とそうでないものがあるので注意が必要です。前述どおり「酒類」と「外食」は対象外。それ以外の飲食料品は、人の飲料・食料として提供されるものであれば対象です。肉・魚・野菜など生鮮食品はもちろん、弁当やお惣菜などに加工されたものもOK。

 ところが、同じ弁当やお惣菜でも、スーパーマーケットやコンビニなどのイートインコーナーで食べると「外食」の扱いになり、10%の消費税がかかります。同様に、ハンバーガー店でも注文した品を店内で食べれば「外食」ですが、テイクアウトすれば「軽減税率」の対象となります。

 少し整理してみましょう。10%の消費税がかかる「外食」の範囲は、

・牛丼屋・ハンバーガー店などでの「店内飲食」

・そば屋などでの「店内飲食」

・ピザ屋などでの「店内飲食」

・フードコートでの飲食

・寿司屋などでの「店内飲食」

・スーパーマーケットやコンビニなどでのイートインコーナーでの飲食

・ケータリング・出張料理等

 そして、「外食」に当たらず8%の軽減税率が適用される範囲は、

・牛丼屋・ハンバーガー店などでの「テイクアウト」

・そば屋などでの「出前」

・ピザ屋などでの「宅配」

・屋台での軽食(テーブル、椅子等の飲食設備がない場合)

・寿司屋などでの「お土産」

・スーパーマーケットやコンビニなどでの「弁当・惣菜」

・有料老人ホームでの飲食料品の提供や学校給食等 となっています。

 おなかが空いていたら買ってすぐに店で食べたくなりますが、持ち帰ることで消費税の節税になるのですから、意識しておく必要がありそうです。

 次に(2)ですが、対象となる新聞には、一般紙はもちろん、スポーツ新聞や、週2回以上発行されているものであれば業界紙なども含まれます。ただし、定期購読契約されている必要があるので、「宅配」であれば消費税率8%ですが、駅の売店やコンビニで買った場合は10%になります。毎日読むなら、定期購読したほうがいいでしょう。

 「なぜ新聞だけ軽減税率の対象?」と疑問に思う人が大半ではないかと思います。「ニュースや知識を得るための公共性が高い」ということで、軽減税率が適用されるよう、新聞業界がかなり頑張ったようです。消費税にあたる付加価値税を導入しているヨーロッパ諸国も、新聞には軽減税率を適用していることもあげています。

 とはいえ、新聞以外の活字媒体や、TV、インターネットなどでもニュースや知識を得られます。ですが、こちらは信頼性が高いものからそうでないものまでまちまちということで、今回の軽減税率の対象から外れました。新聞社が提供している有料の電子新聞も、インターネットを通じて配信されることから軽減税率は適用されません。将来的に見直される可能性はあります。

◆高額の買い物は増税前にしておく?

 飲食料品については消費増税の影響がそれほどないことは安心材料ですが、その他の生活必需品などは増税の影響を受けます。

 消費増税までの1年間に、何か売っておく手はあるでしょうか。

 まず考えられるのは、高額の買い物を予定している場合は前倒しにすることでしょう。もとの価格が高いものについては、当然アップした消費税の負担感も重くなります。不動産(売主が法人の場合の建物部分、土地部分や個人が売主の中古物件には消費税がかからない)をはじめ、自動車、高額の家具・家電製品などがあげられます。

 とはいえ、あくまで近いうちに計画している買い物について当てはまることです。資金計画では数年先の予定となっている住宅取得、買い換えにはまだ早い自動車や家電などについては、消費税の節税目的だけで購入を前倒しすると、必ずしも家計運営に効果的とはいえません。どうしてもムリ・ムダが生じるからです。

 政府としても、増税前の駆け込み消費が目に見えていますから、対策を打ってきます。増税後に急激に消費が落ち込んだのでは、景気に陰りが出てその後の経済情勢に悪影響を及ぼすからです。

 住宅については、「住宅ローン減税制度」の拡充が検討されています。

 「住宅ローン減税制度」は、返済期間10年以上の住宅ローンを組んだ場合、年末の住宅ローン残高の1%を10年間、所得税額から控除(控除しきれない場合、翌年の住民税額から控除)する制度で、消費税が5%から8%に引き上げられた2014年に拡充されました。具体的な内容は2019年度の税制改正を待ちますが、現行制度での拡充の対象期間「2021年12月31日までに入居する場合」を延長するなどが考えられます。

 また、住宅取得した人の収入や持分に応じて給付金が受け取れる「すまい給付金制度」については拡充が決まっており、現行の年収制限「510万円以下」が「775万円以下」に、給付基礎額の最大30万円が50万円に引き上げられます。目安となる年収が450万円以下の人は、本人の持ち分が100%の場合、最大の給付金額50万円が受け取れる計算。消費税アップを必要以上に恐れる必要はなさそうです。

 こちらも2021年12月までに引渡され入居が完了した住宅を対象としていますが、住宅ローン減税制度と合わせて延長される可能性があります。

 自動車については、取得時にかかる「自動車取得税」(普通車は購入価格の3%、軽自動車は2%)が廃止され、車の燃費に応じて税率0~3%となる新税が導入される予定となっているところ、さらに保有中にかかる「自動車税」や利用にかかる「自動車重量税」なども、減税に向けて見直されるもようです。

 日用品などの生活必需品は「軽減税率」が適用されず、家具・家電製品についても税制面での施策はありません。

 けれども、家計から出るお金が大きく変化しないよう、増税前にはあまり値引きせず価格を高めに設定し、増税後に値引き額を大きくするなどの対応を、政府は流通業界に推奨するもようです。また、2014年の増税時には、「消費税還元セール」のような増税分の値引きセールを禁止していたのですが、今度の増税時にはOKとなりそうです。

 以上のことから、本当に必要で買うべきものはいまのうちに買うといいですが、もしかしたらセールなどの影響で、増税後のほうが安くなるものもあるかもしれません。いずれにせよ、必要以上のものを買いだめたりするのは避けたほうがいいでしょう。

ファイナンシャル・プランナー(CFPⓇ・1級FP 技能士)

㈱生活設計塾クルー取締役、個人事務所リアサイト代表、東洋大学社会学部 非常勤講師。同志社大学文学部卒業後、大手証券会社、独立系FP会社を経て現職。一人ひとり・家庭ごとに合った資産設計、保障設計、リタイア前後の生活設計等のコンサルティングのほか、新聞・雑誌等への原稿執筆、セミナー講師などを行う。著書に『50代からの「確実な」お金の貯め方、増やし方教えて下さい』、『住宅・教育・老後のお金に強くなる!』、『お金はこうして殖やしなさい』(共著)など。生活を守り続けるにはマネーリテラシーを磨くことが大切。その手伝いとなる情報を発信していきたい。

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