2020年必見のビジネストレンド--ESGとサステナビリティ

エコは大事。でも…(写真:アフロ)

■投資家らが企業に情報開示を求める

2020年が始まったばかりですので、本記事では2020年のビジネストレンドとして「ESG」と「サステナビリティ」を紹介したいと思います。

トレンドというのも、それこそ日経新聞などでは「ESG(環境・社会・企業統治)」「サステナビリティ(持続可能性)」「CSR(企業の社会的責任)」といった企業の社会的側面を表すワードを見ない日はないからです。また、ある程度の規模の書店であれば、経営の棚でESGやサステナビリティ(SDGs含む)がタイトルにある書籍を多数見つけることができるでしょう。

そしてこれらは、従来の慈善活動(企業寄付など)とは一線を画しており、企業の経営戦略にまでつながる話となっています。つまり、これらの概念は“金の匂いがするようになった”から普及し始めた、という側面があるということです。ではこれらの考え方が世界中で注目されるようになってきているのはなぜか。今週に我々が調査&格付けを行った「サステナビリティサイト・アワード」の調査結果を含めて、企業の対応状況を解説したいと思います。

ちなみに、本稿における「CSR」とは、ESG/CSV/SDGs/サステナビリティ/エシカル/社会貢献などを含む広義の意味を指すものとします。

■用語の整理

初見の用語も多いと思いますのでもう少し詳しく説明します。ESGとは主に投資家・ファイナンス・IRのカテゴリで使われるワードで、サステナビリティはもっと範囲が広く、様々なステークホルダーが使うワードとなっています。関連用語を含めると以下のような意味になります。

ESG(環境・社会・企業統治の頭文字)

事業活動をカテゴライズした「分野」

サステナビリティ(持続可能性)

将来に社会課題を先送りしない「姿勢・あり方」

SDGs(持続可能な開発目標)

グローバルな社会課題解決をまとめた「目標・ゴール」

CSR(企業の社会的責任)

企業の倫理・社会的責任をまとめた「概念」

ソーシャルグッド(社会善)

社会貢献全般の「総称」

エシカル(倫理的)

倫理観のある「商慣習」

これらのワードの意味が固まってきたのは2010年代後半です。ESG投資も、以前はSRI投資という表現のほうがよく使われていましたし、SDGsは2015年9月に国連で発表されたものですから、この5年程度で世界が大きく変わっているのがわかります。

ちなみに、ここ数年でサステナビリティという単語がよく登場するようになったのはアパレル/ファッション業界です。雑誌からニュースサイトからサステナビリティというワードをよく見聞きするようになりました。以前はエシカルというワードが多かったですが、より意味範囲の大きいサステナビリティがよく使われるようになってきています。

■良い企業の定義が変わった

ではなぜ、これらのワードがビジネスセクター(企業)で語られるようになってきたのか。一つは良い企業の定義が変わってきていることがあります。例えば、2013年に「ブラック企業」が流行語大賞のトップ10入りをし、メディアでも大々的に取り上げられてから7年たちますが、労働慣行(労務)が倫理的な企業は当然ながら求職者が殺到することになります。あなたもブラック企業に転職したいと思いませんよね?

日本では、日経や東洋経済が企業のCSR総合評価を行なっていますが、ランキングの上位企業は「良い企業」とされ、様々なメディアからの取材を受けたり、書籍やデータブックになり大学に置かれたりし、レピュテーションの向上が見込めます。そこで重要になってくるのが企業側の情報開示です。

これはまだ賛否ある問題ですが、企業のESG側面にフォーカスした投資(ESG投資)などの普及にともない、企業側に積極的な情報開示が求められているのですが、どの調査をみても、企業側の情報開示レベルはまだまだ低いとするものが多いです。

そのような状況の中でも、現状の情報開示で優れている企業はどこか。我々の調査である、全上場企業のCSRウェブコンテンツ格付け「サステナビリティサイト・アワード2020」(旧CSRコンテンツ充実度ランキング)が一つの指標になると思います。以下の企業は情報開示自体は非常に積極的に行い情報充実度が国内トップクラスの企業です。

■サステナビリティサイト・アワード2020

■ゴールド(最優秀賞)

サントリーホールディングス、大建工業、日本電気、伊藤忠商事、大和ハウス工業

■シルバー(優秀賞)

東レ、野村不動産ホールディングス、ロッテ、SOMPOホールディングス、オムロン、日本碍子、ダイキン工業、住友林業、日本郵政、帝人、積水ハウス、東急不動産ホールディングス、綜合警備保障、LIXILグループ、長谷工コーポレーション

■ブロンズ(優良賞)

カシオ計算機、富士フイルムホールディングス、明治ホールディングス、住友商事、日立システムズ、日立化成、ローム、カルソニックカンセイ、ヒューリック、ヤフー、グローリー、ニコン、三井化学、日本電信電話、日本生命保険

※当メディアであるヤフー(Zホールディングス)が含まれますが、厳選な評価の格付けのため、忖度での入選ではありません。

参照:「サステナビリティサイト・アワード2020」プレスリリース

■全上場企業の傾向

統合報告書やCSR報告書という冊子版の企業レポートもあるのですが、そもそもステークホルダーがそれらを入手するのはどこかというとウェブサイトです。たとえば、海外のESG評価機関から「イギリス本社まで統合報告書の冊子を郵送してくれ」なんて問合せはありません。

で、私が全上場企業のCSRウェブサイトをチェック(目視)して思ったのは、比較的情報開示が充実しているな、と感じられるレベルの企業は全体の1割以下しかなかったということです。非上場企業が情報開示であまり進んでいないならまだわかります。それは非上場の開示の緩さはメリットでもあるので。しかし、透明性を求められる上場企業がそれでいいのでしょうか。

上場企業はステークホルダーのことをどう思っているのでしょうか。やはり投資家サイドからのプレッシャーが増している企業から対応が進むという現実が、あらためて浮き彫りになったということでしょう。ジャスダック・マザーズ・東証二部の企業はひどいものです。仮に開示があっても自己中心的。自分の言いたいことしか開示していません。東証一部でさえほとんどの企業は開示不足と言わざるを得ません。メディアでは散々、ESGだSDGsだと言われていますが、まだまだ“身内ネタ”にすぎません。

■IRコンテンツの重要性

我々の調査では「CSRコンテンツのIR要素(投資家や評価機関目線)」を含めた分析を行なっています。しかし、我々の調査とは逆に「IRコンテンツのCSR要素」を調査している組織もあります。後者のタイプの方が多く、前者の総合調査をする評価機関が日本で我々しかいないという現状は、残念ながら、まだまだ企業のCSRコンテンツは、一般のビジネスパーソンの興味関心がある領域ではないということでしょう。

日興アイ・アール「全上場企業 ホームページ充実度ランキング調査」などは、コーポレートサイト全体の調査をしているので、総合評価に関してはこちらを参考にするとよいと思います。最新の日興アイ・アールの調査によれば、全上場企業のうち60.7%はCSR・環境対応コンテンツがあるとしていますが、我々の調査では“ただ存在する”だけでは評価していないので、評価差に開きがあります。

■日常生活におけるサステナビリティ

日常生活において、企業のCSRページを見る人はほぼいないでしょう。しかし、世界中の投資家や企業評価機関では、非常に注目度が上がっています。まずはこうした現状だけでも知っていただきたいです。

今の注目度は、企業のステークホルダーでいえば、消費者よりも投資家・株主からの情報開示圧力に企業が対応している状況ですが、BtoB企業も含めて、声の大きいステークホルダーである消費者/顧客が、企業のCSR関連情報の発信に注目するようになれば、また企業の活動も情報発信も変わることでしょう。みなさんの行動が、企業を変え、社会を変えられる可能性があるということでもあります。消費者のパワーは偉大です。

CSRを中心とする非財務情報の一部がほぼ開示義務化されている現状を考えると、上場企業は特にステークホルダーへの説明責任を果たすべきと言えるでしょう。当然、これらの情報はCSR推進担当だけががんばれば良いという話ではなく、トップ以下すべての従業員が関わらなければならない問題です。

最近は「気候変動」というワードを新聞やウェブメディアで見聞きする人もいると思います。社会問題がメディアで積極的に取り上げられるようになったのは良いことですが、それだけ環境問題が我々の生活に影響を及ぼしているということでもあります。日本の将来の重要なポイントにもつながる話ですので、2020年はぜひ企業のCSR関連の情報発信にも注目してみてください。