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LauncherOne打ち上げ失敗は「第2段エンジン燃焼中のトラブル」ヴァージン・オービット発表

秋山文野サイエンスライター/翻訳者(宇宙開発)
出典:ヴァージン・オービット中継映像より

日本時間1月10日午前7時16分にイングランド南西部のコーンウォール宇宙港から離陸した米ヴァージン・オービットの小型ロケット「LauncherOne(ランチャーワン)」打ち上げ失敗について、同社は日本時間午後3時ごろに公式の見解を発表した。第2段エンジンの燃焼中にトラブルが発生したという。

747を改造したコズミック・ガールはコーンウォール宇宙港を離陸し、ロケット分離の海域に到達してLauncherOneを無事に切り離した。 ロケットは続いてエンジンに点火し、速やかに極超音速に達して宇宙空間に到達することに成功した。続いて飛行は第1段の分離成功、第2段の点火へと進んだ。しかしながら、ロケットの第2段エンジン燃焼中、時速1万7700kmで飛行中のある時点においてシステムに不具合が発生し、ミッションは早期に終了した。

ヴァージン・オービット1月10日発表より

LauncherOne「Start Me Up」ミッションの飛行計画。出典:ヴァージン・オービット中継映像より
LauncherOne「Start Me Up」ミッションの飛行計画。出典:ヴァージン・オービット中継映像より

1月10日段階での発表では「第2段エンジン燃焼段階のトラブル」ということのみで、外部から原因を推測することは難しい。ヴァージン・オービットは打ち上げ中継映像で詳細な打ち上げミッションの飛行計画を公表しており、ステータスは「S2 CUT-OFF(第2段エンジンの第1回燃焼終了)」の段階まで進んでいた。ロケットの飛行開始から3200秒後(およそ53分後、日本時間10日9時すぎ)に衛星が分離される計画で、その直前に第2段エンジンの2回目の燃焼が始まる予定だったが、第2段エンジン点火のステータスには到達しなかった。中継映像では飛行速度の表示が0のまま、高度が100kmに達していないなど正確な状態を反映していない部分もあるが、第2段が正常に飛行できなかったということはいえそうだ。

第2段エンジンの詳細と飛行中の状態。出典:ヴァージン・オービット中継映像より
第2段エンジンの詳細と飛行中の状態。出典:ヴァージン・オービット中継映像より

ランチャーワンは2020年以降6回の打ち上げを実施し、失敗はこれで2回目となる。2020年5月のランチャーワン最初の打ち上げでは、第1段エンジンに燃料を供給する配管の一部が破損し、エンジンが正常に燃焼できないという原因で失敗した。今回は第1段は機能したものの、また新たな部分で不具合が発生したことになる。

一方でトラブルは母機であるコズミック・ガールからの分離から時間が経過して発生している。同機は無事にコーンウォール宇宙港に帰還した。

ヴァージン・オービットは2022年中に6回の打ち上げを予定していたが、3回目に計画されていた英国でのミッションが2023年にずれ込み、失敗したことでかなりの遅延を抱えることになる。大分空港での打ち上げ開始も大きく影響を受けるとみられる。

サイエンスライター/翻訳者(宇宙開発)

1990年代からパソコン雑誌の編集・ライターを経てサイエンスライターへ。ロケット/人工衛星プロジェクトから宇宙探査、宇宙政策、宇宙ビジネス、NewSpace事情、宇宙開発史まで。著書に電子書籍『「はやぶさ」7年60億kmのミッション完全解説』、訳書に『ロケットガールの誕生 コンピューターになった女性たち』ほか。2023年4月より文部科学省 宇宙開発利用部会臨時委員。

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