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12月5日はやぶさ2 地球離脱へのエンジン噴射「完全完璧な成功」カプセルは分離し地球へ

秋山文野サイエンスライター/翻訳者(宇宙開発)
TCM-5終了後のはやぶさ2管制室。撮影:秋山文野

2020年12月5日17:30(日本時間)更新

2020年12月5日、小惑星探査機はやぶさ2は、小惑星サンプルを小惑星リュウグウの物質サンプルコンテナを収めた再突入カプセルを探査機本体から分離することに成功した。14時30分にカプセルは手順通り、計画通り分離され、5分後に探査機から届いた姿勢変更や火薬を使ってカプセルの固定具を外した際の熱の上昇などのデータをもとに分離が確認された。2019年、小惑星リュウグウに2回のタッチダウン(着地)を行って採取された表面の物質が入っているはずのカプセルは、完全に計画通りに地球に向かうコースに乗っている。12月6日午前2時28分27秒に大気圏に再突入し、2時47~57分にはオーストラリア南部に着地する予定だ。

日本時間5日17時5分ごろ、オーストラリア南部で着地点に近いクーバーペディの映像から、現地の天候が快晴のカプセル回収に向けて好条件との一報が入った。カプセルの大気圏再突入に伴い、熱で発光するカプセルがしっかり捉えられることが期待される。

カプセル分離成功に続き、はやぶさ2は軌道変更のためのスラスター(小型化学エンジン)噴射「TCM-5」を実施した。こちらも予定の時間帯の中で最も早い時間に順調に噴射を行い、15時30分から16時30分にかけて3回、それぞれ30秒、30秒、25秒とエンジン噴射を行った。最初の2回でオーストラリア上空からの離脱に成功し、3回目で地球をかすめるように飛行して深宇宙へ向かう軌道に入った。

TCM-5を3回に分けて実施するのは、化学エンジンの熱が上がりすぎ損傷するトラブルを避けるため。「2回までの出来高をみて3回目は25秒になった」とはやぶさ2プロジェクトチームの久保田孝教授はコメントし、すべての運用が「想定のよい方」となったことをうかがわせた。この成功によって、はやぶさ2は初代小惑星探査機はやぶさで果たせなかった「主要なミッションを終えた後、再び宇宙に向かって新たな探査を行う」ことが可能になった。

2020年12月5日16:37(日本時間)更新

16:30 第3回噴射に成功を確認。久保田教授「3回、長い時間吹くことで緊張もあった。完全完璧にこなした。次のステップまでつなげた、すごいことだと思う」

16:28 久保田教授「カプセル分離時の温度が上昇していたことを管制室から確認」。2回のTCM-5噴射により地球帰還の可能性はないとのこと。

16:12 TCM-5B(第2回目)まで完了と管制室より報告。第1回でオーストラリア上空を離脱、第2回で地球をかすめるように飛行。16:30に第3回を実施予定。

15:30 TCM-5第1回スラスター噴射を確認。スラスター(化学エンジン)にとっては30秒間と長秒時の噴射であり、また同じスラスター(機体上面の+Z面)を連続して行うため、正しく実行されているかどうかを確認。

2020年12月5日15:15(日本時間)更新

15:14 ゲートチェック5、津田PMより地球離脱にGO判断。15:30ごろにエンジン噴射を開始予定

15:10 TCM-5に向けたGO/NOGO判断が進む状況。スラスター(小型エンジン)を長時間噴射するため、推進系担当者が注視している

カプセル分離を確認した後の管制室の様子。撮影:秋山文野
カプセル分離を確認した後の管制室の様子。撮影:秋山文野

2020年12月5日14:45(日本時間)更新

はやぶさ2チームの久保田教授より説明。「カプセルが分離できたかどうかの判断は大きく4つ。分離シーケンスがすべて通ったかどうかを地上で確認。姿勢の乱れを正すためリアクションホイールが回転し、これが予定通りの回転数かどうか。10ミリ毎秒の速度変化をドップラーモニターで確認。カプセル分離の火工品動作に伴う温度上昇を確認の4点。予定通りの時刻、予定通りの軌道で分離ができたためこれから予定通りの着陸に入ると思われる」

「はやぶさ2チームをほめてあげたい」

「リアクションホイールの確認に時間がかかったのは、思ったより大きな姿勢の乱れがあったからだと考えられ、その終息を待っている状況だと考えられる。15時に延長ミッションに入る(TCM-5の実施)の最終判断を行う」

2020年12月5日14:36(日本時間)更新

14:35 リアクションホイールの動作からカプセル分離に伴う姿勢変更の情報を元にカプセル分離の判断される。分離成功

14:30 はやぶさ2から小惑星試料のカプセル分離をドップラーモニターで確認開始。

2020年12月5日14:27(日本時間)更新

14:26 カプセルをつなぐワイヤーカット確認。

14:23 カプセルとはやぶさ2をつなぐハーネスを切断する判断、ゲートチェック3Bを実施、ノミナル通りクリア。

14:20 JAXA 宇宙科学研究所内の管制室にてゲートチェック3A、カプセル分離シーケンスのGO判断3段階の1が確認された。これまでのシーケンスは予定通り。内部電源の切り替えにも成功。

14:16 「カプセル分離に向けた姿勢変更が行われていることを確認」と管制室より中継。

13:55 はやぶさ2チーム久保田教授より12月5日運用経緯の説明。「10:00にチームのブリーフィング開始。11:06、津田PMよりカプセル分離の運用開始。11:45、最初のGO判断。13時すぎからカプセルの分離準備姿勢に入っている。14:20に最終の確認の上、カプセル分離を始まる予定」 

13:48 オーストラリア現地の天候について。回収班の藤本正樹宇宙科学研究所副所長から、「快晴になりつつある」との一報。

13:16 「カプセルシーケンスの正常動作を確認」と管制室より中継音声。

2020年12月5日、JAXA はやぶさ2プロジェクトチームは、小惑星探査機はやぶさ2から小惑星リュウグウの物質サンプルが入っていると見られるコンテナを収めた再突入カプセルを探査機本体から分離する予定だ。分離は日本時間5日14時30分、地球とはやぶさ2の距離は22万3000キロメートルとなる。探査機はその後、15時30分から18時ごろまでかけて3回の小型エンジン噴射を行い、地球を離れて新たな小惑星探査の旅、「拡張ミッション」に向かう準備を整える。

12月5日のタイムライン

はやぶさ2プロジェクトチームは、12月5日10時30分から24時間連続してカプセル再突入のためのリエントリ運用を開始する。

10:30  リエントリ運用を開始。地球-探査の距離は29万1000キロメートル

11:15  カプセルの電源を内部電源に切り替え

12:59  カプセル分離に向けた準備のための姿勢変更を行う。地球-探査の距離は24万9000キロメートル

14:13  カプセル分離のための姿勢変更

14:30  はやぶさ2本体からカプセルを分離。カプセル分離の確認作業を行い、確認できた場合に地球離脱に向けた軌道変更「TCM-5」に向けて探査機の姿勢変更を行う。地球-探査の距離は22万3000キロメートル。この後、カプセルはオーストラリア南部の砂漠地帯へ再突入、着地するコースに入り、はやぶさ2はいったん地球に接近してから離れていくコースに入る

15:30~16:30  TCM-5第1回噴射

16:00~17:00  TCM-5第2回噴射

17:00~18:00  TCM-5第3回噴射。完了後、6日未明に探査機が地球の影に入る時間帯に向けて姿勢を変更する

はやぶさ2がカプセルを分離する際に、地球と探査機の距離はおよそ22万キロメートル。地球と月の距離(約38万キロメートル)より近いとはいえ、狙ったオーストラリアの地域へ精密にカプセルを着地させるならばより地球に近いほうがよいのではないかとの疑問に対し、津田雄一プロジェクトマネージャは12月4日の会見で「22万キロメートルでカプセルを切り離すから難しいかというと、実は難しさのポイントが違う。(カプセルには)何も外から力が加わらない方が軌道を正確に予測できる。正確に飛行するにはむしろ早く分離したい。カプセル単独で軌道を乱す力が加わらない状態の方が弾道飛行で飛び、かえって軌道を予測しやすい。ただし、カプセルを正しい軌道に乗せてから分離しなくてはならないので、これまで2週間ほどはやぶさ2の精密な軌道計測をしてきた。リエントリの12日前ごろから外乱抑止運用という『絶対にスラスターを吹くな』で慎重に運用してきた」と述べた。

津田雄一プロジェクトマネージャ。撮影:秋山文野
津田雄一プロジェクトマネージャ。撮影:秋山文野

「カプセルは自分で進路調整するものではないので、どう飛ぶかを読み切ったうえで分離する。『読み切る』作業は4日朝に終わり、100×150キロメートルの楕円の領域に収まるようになった」(津田PM)といい、2010年に小惑星探査機はやぶさが見せた精密なカプセル再突入をはやぶさ2でも実現できるよう、地球帰還のプロセスを着実に実行してきたと述べた。

サイエンスライター/翻訳者(宇宙開発)

1990年代からパソコン雑誌の編集・ライターを経てサイエンスライターへ。ロケット/人工衛星プロジェクトから宇宙探査、宇宙政策、宇宙ビジネス、NewSpace事情、宇宙開発史まで。著書に電子書籍『「はやぶさ」7年60億kmのミッション完全解説』、訳書に『ロケットガールの誕生 コンピューターになった女性たち』ほか。2023年4月より文部科学省 宇宙開発利用部会臨時委員。

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