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すばるからマゼランへ。さいはての天体“ファーアウト”を発見した望遠鏡のリレー

秋山文野サイエンスライター/翻訳者(宇宙開発)
出典Roberto Molar Candanosa/Scott Sheppard
2018 VG18“ファーアウト”の想像図。Credit: Roberto Molar Candanosa/Carnegie Institution for Science.
2018 VG18“ファーアウト”の想像図。Credit: Roberto Molar Candanosa/Carnegie Institution for Science.

2018年12月17日、国際天文学連合小惑星センターは、米カーネギー研究所の天文学者Scott S. Sheppard氏らによる研究チームが、これまで確認された中で太陽系で最も遠くにある天体「2018 VG18」愛称ファーアウトを発見したと報告した。太陽-地球間の距離を1単位とするAU(天文単位、約1億5000万キロメートル)にして120 AU離れており、これまでに知られていた天体「エリス」の96 AUよりもさらに遠い。

2018年11月10日、すばる望遠鏡が捉えた“ファーアウト”の画像。Credit: Scott S. Sheppard/David Tholen.
2018年11月10日、すばる望遠鏡が捉えた“ファーアウト”の画像。Credit: Scott S. Sheppard/David Tholen.

2018年11月10日、最初に2018 VG18を発見したのは、ハワイ・マウナケア山頂で日本の国立天文台が運用する口径8メートルのすばる望遠鏡による。このとき、天体との距離が非常に遠いことはわかったものの、さらなる観測が必要とされた。次に2018 VG18を捉えたのは、チリのラス・カンパナス天文台でカーネギー研究所などが運用する口径6.5メートルのマゼラン望遠鏡で、12月初頭のことだった。

マゼラン望遠鏡の観測から、2018 VG18は太陽から120 AU(約180億キロメートル)離れていることが確認され、100 AUを超えて太陽系で最も外側で確認された天体となった。遠く離れているという意味を持つ英語の“Farout”からファーアウトという愛称で呼ばれることになった2018 VG18は、すばる望遠鏡に搭載された超広視野主焦点カメラ 「HSC:ハイパー・シュプリーム・カム」の観測画像により、直径500キロメートル程度の球形の準惑星と見られている。表面の色はピンクがかかっており、氷を多く含む天体の可能性がある。

Credit Scott S. Sheppard/David Tholen.
Credit Scott S. Sheppard/David Tholen.

すばる望遠鏡とマゼラン望遠鏡の連携による観測は、「惑星X」または「プラネット・ナイン」と呼ばれる、理論的に予測されている太陽系の未知の惑星の探索を目的として行われてきたものだ。プラネット・ナインは冥王星より外側の80 AUよりも遠いところにあるとされている。研究チームは、2015年10月にすばる望遠鏡が最初に観測した「2015 TG387」をマゼラン望遠鏡で追跡観測し、この天体が80 AUの距離にある直径300キロメートルほどの天体であることを確認。“ゴブリン”という愛称をつけた。

こうした太陽系の外縁部にある天体を多く発見して軌道を解析することにより、軌道に影響を与えているであろうプラネット・ナインの存在の確度が上がっていくと期待されている。研究チームで北アリゾナ大学のChad Trujillo氏は、「世界でも最大級の大口径の望遠鏡に搭載された新しい広視野カメラのおかげで、冥王星よりもはるかに遠い、太陽系の外縁部を探査できるようになっています」とコメントしている。

2018 VG18“ファーアウト”について、ハワイ天文台のDavid Tholen氏は、「現在2018 VG18についてわかっているのは、太陽から非常に遠いということ、およその直径、色だけです。その距離のためにこの天体の動きは非常に遅く、太陽を1周するのに1000年以上かかると見られます」と述べている。

太陽系天体を専門とする、国立天文台の渡部潤一副台長によれば、こうした発見により太陽系外縁天体の発見、研究が進むこと、ひいてはプラネット・ナイン探索の盛り上がりが期待されるという。

太陽から“ファーアウト”までの距離。Credit:Roberto Molar Candanosa/Scott S. Sheppard/Carnegie Institution for Science.
太陽から“ファーアウト”までの距離。Credit:Roberto Molar Candanosa/Scott S. Sheppard/Carnegie Institution for Science.
サイエンスライター/翻訳者(宇宙開発)

1990年代からパソコン雑誌の編集・ライターを経てサイエンスライターへ。ロケット/人工衛星プロジェクトから宇宙探査、宇宙政策、宇宙ビジネス、NewSpace事情、宇宙開発史まで。著書に電子書籍『「はやぶさ」7年60億kmのミッション完全解説』、訳書に『ロケットガールの誕生 コンピューターになった女性たち』ほか。2023年4月より文部科学省 宇宙開発利用部会臨時委員。

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