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スペースX、有人宇宙船クルードラゴンを国際宇宙ステーションへ打ち上げ試験。2019年1月7日実施へ

秋山文野サイエンスライター/翻訳者(宇宙開発)
クルードラゴン宇宙船の打ち上げイメージ。Credits: SpaceX

2018年11月22日、NASAはスペースXの開発した有人宇宙船クルードラゴンを国際宇宙ステーション(ISS)に向けて無人で打ち上げる試験を2019年1月7日に実施すると発表した。スペースXと共にNASAの有人宇宙船開発に選定されたボーイングも3月に飛行試験を行い、それぞれ2019年6月と8月には初の有人飛行を行う予定だ。

2011年7月のスペースシャトル退役以来、アメリカでは有人宇宙船の運用を行っておらず、国際宇宙ステーションに向かう宇宙飛行士はロシアのソユーズ宇宙船に搭乗してきた。NASAはアメリカ国土からの有人宇宙飛行を目指して民間企業による有人宇宙船の開発を開始し、2014年にスペースXとボーイングの2社を開発企業として選定した。

国際宇宙ステーションにドッキングするクルードラゴンのイメージ。Credit: SpaceX
国際宇宙ステーションにドッキングするクルードラゴンのイメージ。Credit: SpaceX

スペースXのクルードラゴン宇宙船、ボーイングのCST-100:スターライナー宇宙船は双方ともたびたび開発の遅れを発表し、クルードラゴンの無人飛行試験もおよそ1年近く遅れている。このため、NASAは2019年分のソユーズ搭乗権を急きょ購入することにもなった。2019年末から国際宇宙ステーションに滞在する予定のJAXA 野口聡一宇宙飛行士は、クルードラゴン、またはスターライナーに搭乗する可能性があるが、ソユーズ搭乗となる可能性もあるため、3機の宇宙船での訓練を進めているという。

2018年10月11日に2名の宇宙飛行士が搭乗したソユーズ宇宙船が、打ち上げ2分後に飛行を中断、地上に緊急帰還している。ISSでの運用や実験計画に遅れなどの影響が生じたほか、有人宇宙輸送をロシア一国に頼る状況のリスクがより鮮明になってきた。NASAとロシア宇宙機関Roscosmosは、12月3日にISSへのソユーズ宇宙船打ち上げを再開する予定で、搭乗するのはオレッグ・コノネンコ宇宙飛行士(ロシア)、デビッド・セイント=ジャック宇宙飛行士(カナダ)、アン・マクレイン宇宙飛行士(アメリカ)の3名。現在ISS滞在中の3名の宇宙飛行士は12月に帰還する予定で、コノネンコ宇宙飛行士らがISSでクルードラゴンを迎えることになりそうだ。

クルードラゴン、スターライナー飛行試験に搭乗する9人の宇宙飛行士。Credit: NASA
クルードラゴン、スターライナー飛行試験に搭乗する9人の宇宙飛行士。Credit: NASA

クルードラゴンの無人打ち上げ試験“Demo-1”は2019年1月7日に米フロリダ州のケネディ宇宙センター、LC39A発射台からFalcon 9ロケットに搭載され打ち上げられる予定だ。軌道上での飛行や地上系の実証、無人でISSへのドッキングや着陸などの運用試験が行われる予定で、NASAは民間有人宇宙船の飛行に向けて重要なマイルストーンになると位置づけている。飛行試験が無事に終了すれば、第1回運用ミッションは2019年8月、第2回運用ミッションは2019年12月に計画されている。

スペースX、ボーイング有人宇宙船の飛行試験予定

ボーイング 軌道飛行試験(無人):2019年3月

ボーイング 緊急脱出試験:軌道飛行試験と有人飛行試験の間

ボーイング 有人飛行試験(有人):2019年8月

スペースX デモ1飛行試験(無人):2019年1月7日17日3月2日(遅延の可能性有り)

スペースX 飛行中緊急脱出試験:デモ1とデモ2飛行試験の間

スペースX デモ2飛行試験(有人):2019年7月

※2019年1月7日、飛行試験予定を更新しました。

サイエンスライター/翻訳者(宇宙開発)

1990年代からパソコン雑誌の編集・ライターを経てサイエンスライターへ。ロケット/人工衛星プロジェクトから宇宙探査、宇宙政策、宇宙ビジネス、NewSpace事情、宇宙開発史まで。著書に電子書籍『「はやぶさ」7年60億kmのミッション完全解説』、訳書に『ロケットガールの誕生 コンピューターになった女性たち』ほか。2023年4月より文部科学省 宇宙開発利用部会臨時委員。

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