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皮とアンコを分けただけ、ハンコを○○専用に…コロナを乗り越えるビジネスチャンスの掴み方

秋元祥治やろまい代表取締役/武蔵野大学EMC教授/オカビズ

新型コロナウィルス感染症の影響で、様々な業種で大きな経営的なダメージが顕在化しています。こうした中小企業の支援に求められるのは2つのキーワード「安心」と「希望」ではないかと考えます。

まずは目の前の資金繰りや事業継続に向けての「安心」すなわち補助金や助成金の活用、さらに融資制度の拡充を受けて目の前の「安心」は確かにひとまず広がりつつあります。しかし経営者の率直な感想としては、今後事業がもとに戻っていく、あるいは売り上げが伸びていく見通しもないのにただ借金が増えると言うのは当然怖いもの。

だからこそ、このような状況下でも、新たな売り上げや事業の可能性を実感できるような、将来への「希望」を提供していけるかが重要なのです。

新しいライフスタイルやワークスタイルに、大きく社会は様変わりしました。言い換えれば、そこに新たなニーズが生まれていると言えます。だからこそ、小回りの利く中小企業こそスピード感を持って、その新しいニーズに対応した新商品や新サービスを提供することで、ビジネスチャンスを見いだすことができるはず。

そうはいっても、大きな社会の変化と自社の事業を結びつけて考えるのは難しいのではないか?と感じる方も多いかもしれません。しかし、視点を変え発想の転換を行うことで、ほとんど新たな投資をすることなく、ビジネスチャンスを掴むことも可能です。

マスクをデコる、というニューノーマルを提案

創業55年を迎える印章・ゴム印・印刷業(株)ウメモト (愛知県岡崎市 代表:梅本岳繁)は、主にこれまで文具店や印章販売店からの要望に応じて、ゴム印の製造販売を行ってきました。しかし、ペーパーレスの進展などから、ここ10年ほど前からニーズの減少を実感してきたとのこと。

そうした中、消費者への直接販売を強化したいと、ミンネやクリーマなどハンドメイドサイトを活用した出品・販売にも2年ほど前から取り組んできました。

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業務用を中心に新型コロナの影響を受ける中、ピンチの中にもチャンスを見出そうと投入した新商品が「マスクスタンプ」、不織布マスク用スタンプなんです。使い捨ての不織布マスクに押して、ワンポイントのおしゃれを楽しめるというこの商品は、マスクの着用が日常化する中、布製マスクだけではなく、使い捨ての不織布マスクでも気軽に個性を演出してもらおうという狙い。

スタンプは一個五百円(税別)から。サイズは縦三センチ、横三センチ。デザインは現在約二十種類で今後追加される予定も。疫病から人々を守るといわれる妖怪「アマビエ」や、動物・アイコンなどもある。会社のロゴマークなどオリジナルスタンプなども対応可能ということで、さっそく大きな反響をよんでいるとのこと。

どら焼きを皮とアンコに分けて「おうち時間を楽しむ」手作りキット

創業98年の老舗和菓子店の小野玉川堂(岡崎市伝馬通 代表:小野登)では、おうち時間を充実させる、自宅でできる「どら焼きセット」の販売をスタート。新型コロナウィルスの影響が顕在化した3月以降、イベントの自粛や行事などが軒並み中止となり、進物の売り上げが激減。そうした中、一方で自宅用の和菓子を購入する顧客の存在に気づき、日持ちもする自慢のどら焼きに注目したそうです。

兼ねてから、薪を使い釜で炊き上げる北海道産の小豆を利用したあんこは顧客の評判が高く、同店のどら焼きの皮だけを購入する常連客もいるほど皮も人気。

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そこで投入された新商品は、なんとどら焼きの皮と、あんこを別々に分けてセットにした「自宅で作るどら焼きセット」と言うもの。たったそれだけのこと、ですが自宅でおうち時間を楽しむ手作りができるどら焼きとして注目を集めています。

手軽に美味しいホットケーキが出来るということから、ホットケーキミックスがスーパーマーケットから蒸発するほどの人気に。ケーキのスポンジのみを購入し、生クリームでデコレーションをするなどの手軽に出来るお菓子作りのニーズも上昇している…といったトレンドをヒントに、自宅でできるキットを展開しているとのこと。

5セットのどら焼きの皮と、自慢のつぶあんと白あんがセットになって1500円で、地方発送も可能とのことです。

社会の変化、新たなニーズにアンテナを張ること!

新型コロナで社会が変わったというけれど、じゃあ具体的に何が変わってきているのか…、細かなこと、小さな変化にもアンテナを敏感に張ることがとても重要です。こまかな困りごとにたいして、どんなサービスがあれば喜ばれるのだろう…とその場その場でちょっと考えてみること。

そうした中で生まれる「気づき」こそが、ビジネスチャンスにつながるはずです。

もちろんこうした取り組みだけで、新型コロナ以前のような売り上げを確保することは困難かもしれません。しかし小さなチャレンジや新たな展開から広がる希望は、今まさに中小企業の現場に求められているものだと考えます。

※画像はいずれも事業者提供

やろまい代表取締役/武蔵野大学EMC教授/オカビズ

01年より、人材をテーマにした地域活性に取り組むG-netを創業し03年法人化。現在理事。13年オカビズセンター長に就任。開設9年で約3300社・2万2千件超の来訪相談が押し寄せ、相談は1ヶ月待ちに。お金をかけずに売上がアップすると評判で「行列のできる中小企業相談所」と呼ばれている。2022年より武蔵野大学アントレプレナーシップ学部教授に就任。内閣府・女性のチャレンジ支援賞、ものづくり日本大賞優秀賞、ニッポン新事業創出大賞・支援部門特別賞ほか。内閣府「地域活性化伝道師」等、公職も。著作「20代に伝えたい50のこと」、KBS京都「KyobizX」・ZIP-FM「ハイモニ」コーナーレギュラーも。

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