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選択的夫婦別姓制度は跡継ぎ娘にとって現代的な解決策の一つになるのか?

明智カイト『NPO法人 市民アドボカシー連盟』代表理事
(写真:アフロ)

これまで夫婦別姓の議論には賛否両論さまざまな意見が出てきています。今回は片桐さん(仮名)の実体験を通して、選択的夫婦別姓制度の必要性について検証していきます。

片桐さんは40代の女性です。20代で結婚して改姓しましたが、徐々に「自分に自信を失くしていった」と言います。メニエール病やパニック障害を発症し、今は心療内科に通っています。

生い立ちを伺ってみました。男兄弟がいない片桐さんは小さいころからお婿さんをとりたいと思っており、大好きな祖母からもそう言われて育ちました。片桐さんの家では、祖母も母親も婿養子をとるなどで姓を継いでいました。

片桐さんは20代半ばの頃、6年間お付き合いをしていた男性と別れました。「結婚したかったのですが、長男なので婿には入れないと分かっていたので、お別れを選んでしまいました。」

その後、知り合ったのが今の夫。次男でした。いずれは婿に入るから結婚しようという約束で結婚しましたが、今になり婿には入らないと言われてしまいました。

「どうしたらいいか分かりません。子どももおり離婚する勇気もありません。亡くなった祖母との約束を守れず苦しい気持ちで仕方ありません」と片桐さん。

「祖母と継ぐ約束もしたし、約束覚えているよね?と夫に話をしましたが、それを聞いた義母の言葉が『死んだらどうせ何も分からないんだから』でした。確かにそうかもしれませんが、私にはあまりにショックな言葉でした。」

実家の近所には片桐さんのように婿希望の女性が何人かいたそうです。「みんなお婿さんがきたようで、母にウチだけ婿がとれなかった・・・とポツリと言われました。いつもはそんなことを言う母ではなかったので、心の中ではやはり悲しんでたんだな・・・と心が痛くなりました。ツライです。」

このような場合に選択的夫婦別姓制度があれば、ひとつの解決策になるのではないでしょうか。

長年、片桐さんは一人で葛藤していたそうです。もう、こんなの私が幼い頃から望んだ幸せではない!と思ったり、子どもが幸せならいいのかな、と思ったり、私は母として妻として間違っているんだろうかと思ったり・・・。

そしてある日、倒れてしまいました。「私、大丈夫じゃないのに平気な顔をして・・・ずっとそうやって生きてきました。心配かけたくないから言えないし。そんな日々を過ごしていたら立つことも目を開けることも出来なくなり、けいれん状態になって救急車で運ばれました。」

今、片桐さんは、「実家の名前を継承したい姉妹の会(略称:姉妹の会)」とつながっています。同じような悩みを持つ人と出会い、悩みを話せるようになって、気持ちが少し楽になりました。

姉妹の会では、実家の名前を継承したいと願う人々の声を国会議員に届ける活動をしていて、ウェブサイトでは当事者の声を集めています。今回、姉妹の会の事務局からメッセージが寄せられました。

「当会には、今まで誰にも相談できなかった、というような声が届いています。一人で苦しんでいる人が少なからずいるようです。議員に陳情するような元気はないけれど、辛い・・・当会はそういう方々ともつながっています。片桐さんは当会に連絡をとったことがきっかけで話せる仲間と出会いました。素晴らしい行動力です。一人で悩んでおられる方は、どこかに声を挙げてみてください。当会でよければご連絡ください。何も声を出さないと、誰にも気付かれず、問題は放置されたままです。本当に困っている人自らが声を挙げる以外に解決する方法はありません。」

この会は「姉妹の会」という名称ですが、一人娘さんや、男性(女の子しかいない家の父親、一人娘さんとお付き合いをしている男性など)の声も集めています。

姉妹の会のサイトに寄せられた当事者の声を読むと、片桐さんのように夫婦別姓制度の導入を望んでいる方たちがたくさんいらっしゃいます。そろそろ夫婦別姓制度の実現に向けて進み出しても良いのではないでしょうか。

『NPO法人 市民アドボカシー連盟』代表理事

定期的な勉強会の開催などを通して市民セクターのロビイングへの参加促進、ロビイストの認知拡大と地位向上、アドボカシーの体系化を目指して活動している。「いのち リスペクト。ホワイトリボン・キャンペーン」を立ち上げて、「いじめ対策」「自殺対策」などのロビー活動を行ってきた。著書に『誰でもできるロビイング入門 社会を変える技術』(光文社新書)。日本政策学校の講師、NPO法人「ストップいじめ!ナビ」メンバー、などを務めている。

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