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受動喫煙防止策のことで揉めていますが、勤務時間中の喫煙も止めて欲しい。

明智カイト『NPO法人 市民アドボカシー連盟』代表理事
(写真:ロイター/アフロ)

先日、他人が吸うたばこの煙を吸い込む「受動喫煙」防止のための対策強化が先送りされました。政府は健康増進法改正案の国会提出を目指していましたが、規制慎重論がある自民党側と一致できなかったようです。この受動喫煙防止策は東京都議選でも争点の一つとなっています。

もちろん私も受動喫煙防止策は重要な施策だと思っていますので早期の実現を期待しています。

塩崎恭久厚労相は6/20の談話で「いまだ多くの国民が飲食店や職場等の『公衆の集まる場』において深刻な受動喫煙の被害に遭っている」と訴えたそうです。それは確かにその通りなのですが、私はこの喫煙に関して「場所」のことだけ議論が盛り上がっていることには少し不満を持っています。

たとえば喫煙の自由について論じた最高裁昭和45.9.16判決では「喫煙の自由は、あらゆる時、所において保障されなければならないものではない。」と判示しています。つまり「場所」だけではなく、「時間」についても制限されるものなのです。

というのも以前の職場では勤務時間中に喫煙する人がたくさんいました。もちろん喫煙スペースが確保されているので目の前で喫煙されるわけではありません。ただ、「場所」はOKでも、「時間」は勤務時間中の喫煙だったので私的には納得ができませんでした。

ちなみに私は煙草が苦手でこれまで一度も吸ったことがありません。なので、転職の際には喫煙のことも気になっていました。現在は喫煙習慣が一切ないことを採用条件とした職場に勤めています。

企業は、従業員に対して安全配慮義務を負っています(労働契約法5条)。受動喫煙の問題も、この安全配慮義務の問題です。過去の判例でも、職場における受動喫煙対策を講じなかったことが、非喫煙の従業員に対する安全配慮義務違反になることとされています。

そのため企業側の対策としては喫煙室設置による分煙や、建物外で喫煙させることなどの対策を採っているところが多いようです。

この場合に場所の禁煙だけではなく、勤務時間中に喫煙を禁止するということも徹底して欲しいと思います(ここでは休憩時間や勤務時間外の喫煙のことは除きます)

以前の職場では1時間毎に5分~10分ほど職場離脱して喫煙している人たちがたくさんいました。私は非喫煙者なのでトイレかコーヒーを淹れるときくらいしか離席したことはありません。

ただわかってきたことは喫煙者のほうが残業している時間が長いという不満です。たとえば、1時間毎に10分間の喫煙のために職場離脱をしていた場合に、勤務時間が8時間であれば80分も仕事をしていません。その80分は当然、残業して巻き返すということになります。

なぜ、喫煙者は残業代が増えるのか、そして残業している人の方が良い評価もらっているという理不尽さが耐えられませんでした(残業を嫌がる人は評価が悪くなる傾向だったので)。当然、効率性や生産性の観点から見たら喫煙者のほうが悪いと思えるのです。なので喫煙者と非喫煙者とでは職場内で不公平に扱われているケースがあくまでも私が体験したことですけれどもあるということです。

もちろん喫煙は「受動喫煙」の問題だけではなく喫煙者本人に対しても多大な影響を及ぼすできごとです。たとえば煙草に含まれるニコチンは依存性物質であり、自力で禁煙することは容易ではありません。また、がんなどの様々な病気のリスクにも繋がっています。

私は政策や法律の議論をするときに「煙草が嫌いだから吸わないで」といった感情論をぶつけるつもりは全くありません。でも、喫煙者の方には職場で喫煙を禁止している、法律で喫煙を禁止しているといった外部からの圧力でストレスを溜め込みながら喫煙する生活を見直し、普段の生活の中でいつの時間にどの場所で、どの程度の喫煙なら自分も他人も安心して煙草を楽しめるのかという自分なりの付き合い方を見つけ出して欲しいなと思います。

『NPO法人 市民アドボカシー連盟』代表理事

定期的な勉強会の開催などを通して市民セクターのロビイングへの参加促進、ロビイストの認知拡大と地位向上、アドボカシーの体系化を目指して活動している。「いのち リスペクト。ホワイトリボン・キャンペーン」を立ち上げて、「いじめ対策」「自殺対策」などのロビー活動を行ってきた。著書に『誰でもできるロビイング入門 社会を変える技術』(光文社新書)。日本政策学校の講師、NPO法人「ストップいじめ!ナビ」メンバー、などを務めている。

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