「誰でも、結婚式は、できる。」~日本国内におけるLGBTと結婚式~

ゲイカップルによる「平等結婚式」の様子

最近、「同性婚」や「パートナーシップ」という言葉を耳にすることが増えてきていますが、この数年間で緩やかに結婚式というセレモニーは男女間だけのものではなくなってきています。

2013年にはフランスやイギリス、ブラジルで、2014年にはルクセンブルクやフィンランドで、2015年にはスロベニアやアイルランド、グリーンランドで同性婚が認められました。先日、ルクセンブルクの首相が同性パートナーと結婚したことや、アイルランドで国民投票が行われ同性婚が認められたことがニュースで取り上げられていたので、ご存知の方もいるのではないでしょうか。アメリカ合衆国で同性婚を認める州は、2012年末で10州だったのが、2013年末には17州に、2014年末には35州と増え、2015年6月26日には全米で認められることになりました。

欧米での変化に呼応するように、日本国内でも動きがみられます。新聞やテレビ番組で(その表現や取り上げられ方には賛否両論あるが)LGBTという言葉が取り上げられることが増えてきました。同性カップルの挙式が報道され、夫夫・婦婦として生活している人たちがいます。

2013年9月には大阪市淀川区が国内初の「LGBT支援宣言」を発表しました。そして、2015年7月19日に沖縄県那覇市でも「性の多様性を尊重する都市・なは(レインボーなは)」宣言を行っています。そんな中、今年3月に東京都渋谷区で「渋谷区男女平等及び多様性を尊重する社会を推進する条例案」(同性パートナーシップ条例案)が区議会に提出され、3月31日に可決、4月1日より施行されました。ここ数年で、国内外の情勢は確実に変化しています。

「誰でも、結婚式は、できる。」-glitterの取り組み

講演会の様子
講演会の様子

このように情勢が変わっていくなかで、LGBT向けの結婚式を取り行っているglitter-wedding for LGBT-(以下、glitter)代表の桜井秀人さんにお話を伺いました。

明智 どのような経緯でglitterを設立したのですが?

桜井 「glitter」は2015年7月4日で3年の節目を迎えました。ちょうど世間の「同性婚」「パートナーシップ」事情の盛り上がりと共に成長をしてきた団体です。

私自身がバイセクシュアルであり、全米ブライダルコンサルタント協会認定のプロフェッショナルブライダルコンサルタントです。自らの立ち位置から、あらゆるセクシュアリティのカップルが平等に結婚式を挙げる権利があり、それを牽引していくべきだと考えました。当事者であることが何よりの安心感につながり、強みになる、と信じて団体を立ち上げました。“誰もが輝ける”、”誰もがキラキラできる”という思いを込めて、団体名を「glitter」と名付けました。

明智 「glitter」はどのような活動をしていますか?

桜井 今、glitterは3本の柱をメインに活動しています。

・ブライダル

ブライダルにたずさわっていくことが最終的にはglitterの着地点であるという認識で、日々活動をしています。まずはglitterの認知を広めることをメインに活動しています。そのために、大阪のレインボーフェスタ!や東京レインボープライドなどのイベントでブース出展をしています。また、2014年のレインボーフェスタ!ではglitterが企画した平等結婚式を行いました。ゲイのカップルが多くの人に見守られながら、指輪の交換や誓いのキスを交わしました。

これからは会場様とのタイアップでブライダルフェアを開催したり、結婚式の施行を進めたりしていく段階になってきています。立ち上げた時からのキャッチフレーズである「誰でも、結婚式は、できる。」という言葉を大切に、glitterを選んでくださったお二人の気持ちに沿った結婚式をプロデュースしていけたらと考えています。2015年9月には、大阪市内でブライダルフェアを開催予定です。

・イベント

RAINBOW CIRCLEという交流イベントを企画しています。表に出て活動するのにまだ勇気を持てないでいる人、自分のセクシュアリティが何なのかを自分でも分かりかねている人、もっと友人を作りたいと感じている人、様々なセクシュアリティの人と接していきたいと感じている人など、人それぞれに求めるものが違います。全ての思いに応えることはできないとしても、少しでも多くの人の想いに寄り添えるようなイベントを開催していくことで、気付きや発見があればと願っています。

当事者だけではなく、そこには非当事者も集まってきます。2015年の電通ダイバーシティ・ラボの調査によると、7.6%が当事者であるという結果が出ています。つまり、92.4%は非当事者であると言えます。その92.4%の人の中でどれだけの人が寄り添ってくれているか、いわゆるストレート・アライ(LGBT・セクシュアルマイノリティを支援する異性愛者の人)であるのか。我々の活動を通じて、そのように寄り添ってくれる人がどれだけ増えていくかというのもひとつの課題だと考えています。そのため、当事者だけのためのイベントを開いていくのではなく、あらゆる人が集まることができる場を作り続けていけたらと思っています。

・講演

LGBT講習会と題して、glitter主催で講演イベントを開催しています。私がLGBT・セクシュアルマイノリティについての講演をした後に数人でグループを作ってもらい、茶話会という形式で交流をしてもらいます。講演はLGBTという言葉の意味から、昨今の世界や日本での情勢について、できるだけ細かくお話をしています。

聞きなれない言葉や、持ったことのない考え方に触れることが多くあり、参加者の皆様には大変好評です。どのような事象にも、そうなる要因やきっかけがあり、そこを説明することで問題点や改善点、新たな気付きが得られるのです。

ホスピタリティ――こまやかな心遣い

交流イベント「RAINBOW CIRCLE」
交流イベント「RAINBOW CIRCLE」

明智 特に気を付けていることは何ですか?

桜井 ホスピタリティという言葉がひとつのキーワードになっています。ホスピタリティという言葉は、語源がラテン語のHospics(客人などの保護)です。サービス(語源はラテン語 Servitusであり、「奴隷」を意味する)とは違い、「心のこもったおもてなし」や「歓待」という意味合いになります。ブライダルにたずさわる者として、それは非常に重要な言葉です。

交わされる言葉や態度は、心を反映しています。そして、その心の内が見えた時に、信頼関係が生まれるのだと考えています。サービスは相手との主従関係によって成り立つ関係でしかありませんが、ホスピタリティとは相手のことを慮り、もてなすことにより喜びの感情が生まれます。そうすることで、自らの心の内を満たすことにもつながり、それがホスピタリティの精神であると考えています。

イベントや講習会に集う人たちは、それぞれ生き方や考え方、立ち位置が違います。ひとりひとりが違っているのは当然であり、それを全て理解することは非常に難しいのです。相手の立場に少しでも立とうと試み、少しでも寄り添い、感じること。ホスピタリティという言葉にはこのような意味合いが含まれているのではないでしょうか。こまやかな心遣いを、さりげなくできる人材を育成していくことが今求められているのだと感じています。

澪標(みおつくし)でありたい

明智 今後の課題について教えてください。

桜井 今、メディアでLGBTという言葉を目にすることが多くあります。有名企業がLGBTに関するキャンペーンを開くことも見受けられます。このような動きがあるのを歓迎する一方で、一過性のブームのようになることや、ビジネスの一端として消費されるようことがあってはいけないと考えています。

また、「LGBTというグループの人たちが居て、その人たちは様々な権利を勝ち取るために頑張っているんだよ」といった認識で見られている側面もあります。流行語のようにLGBTという言葉が独り歩きし、消費され、一時的な盛り上がりだけで終わるようなことがあってはならない。そのためには我々が警鐘を鳴らし続け、導いていくことも大事ではないかと思っています。

澪標(みおつくし)という言葉をご存知でしょうか。航路を示す標識のことですが、私は澪標となっていくべきだと考えています。和歌では澪標は「身を尽くし」との掛詞で使われていることがあります。glitterとしての活動に身を尽くし、安泰に航行していくための澪標となることを目標にしています。

ちなみに我々が活動している大阪市の市章が澪標である。これもひとつのご縁のような気がしています。

(いのち リスペクト。ホワイトリボン・キャンペーン代表 明智カイト)

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glitter-wedding for LGBT-

代表の桜井を中心に2012年7月に設立。セクシュアルマイノリティも、安心して「結婚式という選択」ができたらと願う。ブライダル・イベント・講演の3本柱をメインに活動している。キャッチフレーズは「誰でも、結婚式は、できる。」

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