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イクメンに見習え!シングルファーザーの育児、家事テクニック紹介(明智カイト×吉田大樹)

明智カイト『NPO法人 市民アドボカシー連盟』代表理事
画像はイメージです

育児や家事、そして仕事との両立を日々こなしているシングルファーザー。

厚生労働省「イクメンプロジェクト推進委員会」委員などの公職を務めながら、シングルファーザーとして3人の子どもを育てている吉田大樹さんにお話を伺いました。

3人の子どもを育てるシングルファーザーとして

明智 まず、自己紹介をお願いします。

吉田 埼玉県鴻巣市在住の3児(2003、06、08年生まれ)のシングルファーザーです。

「労働安全衛生広報」「労働基準広報」(労働調査会発行)記者を務めた後に、2012年7月よりNPO法人ファザーリング・ジャパン代表理事(~14年6月)を経て、現在は労働・子育てジャーナリストとして活動しています。

2010年8月頃に妻が家を出て行って別居状態になりました。それから3人の子どもを私が一人で育てています。当時、一番下の子は2歳2月。長女が年少、長男が小1でした。

明智 シングルになってからそれまでの育児や仕事はどう変化しましたか?

吉田 まさか自分の身にそのような問題が起こると思っていなかったので、2週間くらいずっと泣いてましたね。でも、基本的な家事・育児に関しては、妻がいるときから積極的に関わっていたので、その点で困ることはありませんでした。

出版社に勤務していたときは9時に出社していましたが、シングルファーザーになってからは子どもたちを保育園に送り届けてから出社するので会社と相談して10時出社に変えてもらいました。もちろん残業はできません。17時30分には仕事を終わらせる必要がありました。専門誌の記者をしていたので、時間の都合はつけやすかったのです。

まずは、自分の状況を会社に理解してもらうことが重要でした。運良く会社側の理解がありました。労働関係の出版社だったので働く人への配慮がありました。それでも、子どもが熱を出して会社を休んだり早退したりすることが多く、年休はほとんど使い果たしてましたね。働き続けるのは厳しかったです。

子どもたちと4人暮らしですが、両親が近くにいるので必要なときには子どもたちを預かってもらっています。

家事にもミッションを!「お皿洗い芸術置き協会」を設立

「支え合い」
「支え合い」

明智 子どもが3人もいるとそれだけで家事も仕事量が増えて大変ではないですか?

吉田 私の両親は共働きでしたが、母親は家事を完璧にこなす人でした。10代の頃に私はそんな母親を見て食事や皿洗いの手伝いをはじめました。

家事は“やらなければならない”という性質のものが多いので、モチベーションを保つのが難しいですね。そこで、いかにモチベーションを保つかですが、例えば、皿を洗う中で、淡々と皿を洗うだけではなくゲーム性を持って皿洗いをすることが大事だと思うようになりました。水が下に滴るように芸術的に皿を重ねていくことを常にミッションにしています。

せっかくなのでその気持ちを共有できないものかと、フェイスブックに「お皿洗い芸術置き協会」を作りました。皿の重ね方も「支え合い」というネーミングを付けたりと楽しみながらやっています(笑)

家事に対して苦手意識を持っている男性に対してポジティブな意識を持たせ、ミッション性があったほうが良いと考えています。自分なりの楽しみ方を見つけて欲しいです。一つの事例として「お皿洗い芸術置き協会」があります。“ただ家事をやるだけ”ではやはりもったいないですね。

制度を変えるために政策提言をはじめた

選挙のときには2人で投票を呼び掛けました。
選挙のときには2人で投票を呼び掛けました。

明智 シングルファーザーとして困ったことはありましたか?

吉田 妻とは3年4カ月別居状態でした。2012年から調停がはじまって2013年の年末に離婚しています。離婚するまでは法的な「ひとり親」としての支援は受けられません。

妻は専業主婦だったので配偶者控除がありました。でも、別居すると同一生計ではなくなるので配偶者控除がなくなり税金が上がりました。「ひとり親」として仕事して、家事・育児をしているのに税金が上がることに大きな矛盾があると思いました。今の制度に疑問を感じる瞬間でした。

明智 制度を変えるために何か取り組みをしていますか?

吉田 2007年くらいから地元の子育て団体と関わっていました。でも、ぜんぜんパパがいない。それで、翌年NPO法人ファザーリング・ジャパンに入会しました。

私は出版社で労働問題を扱っていて知識もある程度あったので政策提言をまとめました。平成21年10月22日に鳩山政権に対してファザーリング・ジャパンは下記のような政策提言をしています。

・ワーク・ライフ・バランスの実現について

・保育所待機児童の解消について

・父子家庭への児童扶養手当支給について

・子ども手当の支給について

明智 吉田さんは今もいろいろと活動されていますよね。

吉田 そうですね。昨年6月にファザーリング・ジャパンの代表理事を退任してからは労働・子育てジャーナリストとして情報発信をしています。

また内閣府「子ども・子育て会議」委員として4月から始まる「子ども・子育て支援新制度」の制度構築や、ベビーシッターの基準を作るために設置された厚労省社会保障審議会児童部会「子どもの預かりサービスの在り方に関する専門委員会」の委員も務め、子育て当事者としても関わっています。

そのほかには、厚労省「イクメンプロジェクト推進委員会」委員を務めたり、最近では、経済財政諮問会議の点検会合で意見を述べたりという機会もいただきました。これからは自分の立場で情報を発信していきたいと考えています。個人として意見を言うので責任が増したと思う。

でも、やはり子育てをしながらだとなかなか時間がとれませんけどね・・。

「グリーンパパプロジェクト」の取り組み

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明智 これからやりたいことは何ですか?

吉田 今は「グリーンパパプロジェクト」という団体を立ち上げているところです。

この「グリーンパパプロジェクト」は、農・林・食・旅などの「グリーン」をキーワードにして、都市部にいるパパたちがもっと地方に関心を持つためのソーシャルプロジェクトです。

私は農業や、林業体験を通して、もっと都市部にいるパパたちに地方へ目を向いてもらいたいと考えています。そして、これからは子育て世代の人たちが家族で地方に移住できるように働き掛けていきます。

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吉田大樹

労働・子育てジャーナリスト

1977年7月東京生まれ。埼玉・鴻巣市在住で3児(2003、06、08年生まれ)のシングルファーザー。2003年3月日本大学大学院法学研究科政治学専攻(政治哲学)修了後、「労働安全衛生広報」「労働基準広報」(労働調査会発行)記者に。2012年7月よりNPO法人ファザーリング・ジャパン代表理事(~14年6月)を経て、現在は労働・子育てジャーナリストとして活動中。内閣府「子ども・子育て会議」委員、厚生労働省社会保障審議会児童部会「子どもの預かりサービスの在り方に関する専門委員会」委員、同省「イクメンプロジェクト推進委員会」委員などの公職を務める。著書に「パパの働き方が社会を変える!」(労働調査会)

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『NPO法人 市民アドボカシー連盟』代表理事

定期的な勉強会の開催などを通して市民セクターのロビイングへの参加促進、ロビイストの認知拡大と地位向上、アドボカシーの体系化を目指して活動している。「いのち リスペクト。ホワイトリボン・キャンペーン」を立ち上げて、「いじめ対策」「自殺対策」などのロビー活動を行ってきた。著書に『誰でもできるロビイング入門 社会を変える技術』(光文社新書)。日本政策学校の講師、NPO法人「ストップいじめ!ナビ」メンバー、などを務めている。

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