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とても他人事とは思えない「無縁仏となってしまうホームレスの人々が入れるお墓を建てたい!」プロジェクト

明智カイト『NPO法人 市民アドボカシー連盟』代表理事

都内でホームレス支援を行う「山友会」という団体が、クラウドファンディングを使って「無縁仏となってしまうホームレスの人々が入れるお墓を建てたい!」というプロジェクトを行っています。

→「無縁仏となってしまうホームレスの人々が入れるお墓を建てたい!」

(2015年1月24日まで)

死後まで見渡して、様々なつながりを紡いでいきたい

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山友会は、東京都の台東区・荒川区をまたぐエリアにある通称「山谷地域」で、1984年から無料診療、生活相談、炊き出し・路上訪問、宿泊支援などのホームレス支援活動を行っている団体です。

ホームレスの人々には、様々な事情によって、最も人間のつながりを感じられる存在であるはずの家族や親族との縁が途絶えてしまっているかたも少なくないそうです。そのため、亡くなった後は、遺骨の引き取り手がおらず、無縁仏となってしまう方も多いのです。

山友会では、年配のホームレスの人々のことを親しみを込めて「おじさん」と呼んでいるそうなのですが、代表のルボ・ジャンさんは、「おじさん」達の多くが無縁仏となってしまうことについて、「おじさん達は、亡くなっても誰も迎えに来ないからさ。亡くなっても、仲間たちと過ごせたら、幸せじゃないか。」と語っています。

ルボ・ジャンさんは、カナダより宣教師として来日しながらも、山谷で生きる人々の孤独さを感じ、それでもたくましく生きる姿に深く共感し、一人の人間として、彼らと共に生きていくことを覚悟し、30年近く活動に取り組んできました。

ルボ・ジャンさんのそうした想いから生まれたこのプロジェクト。来年2月に山谷地域付近にあるお寺の協力のもと、お墓を建立するために建立費用200万円を募集しているそうです。

この取り組みの意義について、READY FOR?のプロジェクトページの中で、

この取り組みによって、家族との縁が途絶え、無縁仏となってしまうホームレスの方々が、無縁仏とならずにすみ、お亡くなりになった後も生前親しかった仲間とのつながりを感じていられることができると思います。

そして、何より無縁状態にあるホームレスの人々にも、人としての尊厳を保ちながら旅立つことができるという希望を届けたいと思っています。

さらに、お墓は「遺骨を納める場所」であったり、「家族や親族が管理するもの」という認識が一般的ですが、

「仲間やコミュニティが故人とのつながりを感じることのできる場所」

「故人を偲んだ仲間やコミュニティが支えるもの」

という、お墓の価値を社会に還元して提供できると思っています。

と説明しています。

そうした意義を持ったプロジェクト、

「無縁のまま死を迎え、死後も無縁であり続ける」人とのつながりが失われつつある現在だからこそ、生きている間だけでなく死後まで見渡して、様々なつながりを紡いでいきたい。

という想いを込めて取り組んでいるそうです。ぜひご支援をお願いします!

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LGBTの孤独

次にLGBTなど性的少数者の孤独についても考えてみたいと思います。私自身も同性愛者として10代の頃より様々な孤独を感じてきました。また、当事者によってその体験している内容も様々です。ここでは、その一例についてご紹介します。

先日、朝日新聞デジタルに私のコメントが掲載されました、

孤独な元労働者、無縁仏にしない 東京・山谷のNPO「お墓づくり支援を」

朝日新聞デジタル 2014年12月17日16時30分

家族や親族と縁が切れ、孤独な元労働者たちのお墓をつくろう。そんな企画を東京・山谷地区のNPO「山友会」がインターネットで呼びかけている。「無縁仏にしない」とのメッセージに、親から見放された性的少数者が共感を寄せるなどの反応もあるという。

理事の油井和徳(ゆいかずのり)さん(30)は「墓は家族という単位のもの、というのが一般的。でも、血縁に頼れない人は『死んでもホームレス状態か』と不安なはず。人間の尊厳にかかわる問題です」と話す。ネットで呼びかけたのは「無縁社会と呼ばれる今、山谷地区だけの問題ではない」という思いから。実際、サイトには「他人事と思えない」といった書き込みが寄せられている。

ある30代の同性愛者は「私は親とのつながりが切れてしまっている。結婚はできないし、子どもも持てない。自分たちにもそういうお墓があるといいな」と、フェイスブックで情報を広めてくれた。

私のコメントは「ある30代の同性愛者」として「私は親とのつながりが切れてしまっている。結婚はできないし、子どもも持てない。自分たちにもそういうお墓があるといいな」と書かれています。

カミングアウトやいじめに悩む10代の子どもたち

LGBTの子どもたちは下記のように様々な困難を抱えています。

・家庭や学校などにおいてカミングアウトすることが難しい。また、カミングアウトすることによって暴力やいじめのリスクが高まる。

・暴力やいじめを経験した子どもは心に傷を負うだけではなく、長期に渡る不登校やひきこもりなどによって進学、就職の機会を奪われるリスクが高まる。

・自殺の場合は、LGBTであることを理由に自殺したのかわからない、そもそもLGBT当事者だったのかわからない。また、家族も把握していないことが多い。

大人になってもいろいろな課題を抱えながら生きていくことに

同性愛者が抱える困難

・異性との結婚や、子どもを持つことが困難なため独りで生きていく場合が多い。

・カミングアウトしたことによって親や兄弟、親戚との関係が悪化している当事者が多い。

・同性パートナーがいても法的保障がないので周囲から家族として扱われることがない。そもそも、親や親戚が同性パートナーを家族として認めない。同性パートナーの入院、葬式(喪主)、お墓、遺産相続など生活上に様々な困難を抱えている。

トランスジェンダーが抱える困難

・職場などで偏見や差別を受けやすい。

・そもそも家族や親戚から理解を得られずに、家族や親戚と疎遠になっている当事者が多い。

・安心して繋がれる場所として当事者コミュニティが存在するが、地域に当事者コミュニティが存在しない場合は孤立してしまう。

・うつ病や未就業などについて一人で苦悩している場合が多い。

このように様々な孤独や悩みを抱えながら生きているLGBT当事者たちの存在が浮かび上がります。もちろん、なんの困難もなく生きている当事者もたくさんいますが、個人の逞しさ度や家族や周囲からの理解度によって「生きやすさ/生きづらさ」が決定されてしまう状況は好ましくありません。

もしかしたら近い将来「無縁仏となってしまうLGBTの人々が入れるお墓を建てたい!」というプロジェクトが立ち上がることだってあるかもしれません。どのような立場、関係であろうとも家族として認められる社会を創っていきたいものです。そのためにもまずはLGBTに対する差別や偏見を解消していくことが必要です。

誰もが他人に優しくなれる社会を目指して

私自身もLGBT当事者の一人としてこの「無縁仏となってしまうホームレスの人々が入れるお墓を建てたい!」は、とても他人事とは思えないプロジェクトでした。

自分にだけ優しくしてくれる社会を私は望んでいません。私は誰もが他人に優しくなれる社会を目指していきたいと思っています。そのための第一歩として「無縁仏となってしまうホームレスの人々が入れるお墓を建てたい!」を応援します。

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山友会

東京都の台東区・荒川区をまたぐエリアにある通称「山谷地域」で、1984年から無料診療、生活相談、炊き出し・路上訪問、宿泊支援などのホームレス支援活動を行っている団体。

『NPO法人 市民アドボカシー連盟』代表理事

定期的な勉強会の開催などを通して市民セクターのロビイングへの参加促進、ロビイストの認知拡大と地位向上、アドボカシーの体系化を目指して活動している。「いのち リスペクト。ホワイトリボン・キャンペーン」を立ち上げて、「いじめ対策」「自殺対策」などのロビー活動を行ってきた。著書に『誰でもできるロビイング入門 社会を変える技術』(光文社新書)。日本政策学校の講師、NPO法人「ストップいじめ!ナビ」メンバー、などを務めている。

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