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ツアー通算400勝はウインブルドン1週目を締めくくる快勝劇。3戦連続の3セット勝利で錦織圭3回戦突破

内田暁フリーランスライター
(写真:アフロ)

〇錦織圭 [6-4 6-3 6-2] S・ジョンソン●

 第3セットのラスト2ゲームは、この日の試合を象徴しているようでした。

 まずはゲームカウント4-2からの、錦織のサービスゲーム。ワイドに切れるサービスで相手を崩すと、リターンをすかさずクロスに打ち込み相手を棒立ちにさせます。30-15の局面では、センターに打ち込むサービスでウイナーを決め、「ヤッ!」と短く雄叫びをあげました。

 かくして気持ちよくサービスをキープすると、続くゲームは錦織のリターン劇場。試合序盤では手を焼いたジョンソンのワイドへのサービスを、フォアで完璧に捉えると相手は一歩も動けません。15-15からは再びリターンをクロスに打ち込み、相手のフォアを打ち破ります。次のポイントでも、センターへのサービスをまたもドンピシャのタイミングで打ち抜いて、ストレートへのリターンウイナー。最後は、鋭いリターンからラリーの主導権を握り、バックのダウンザラインで試合に終止符。わずかか1時間50分のスピード勝利ながら、芝の上を跳ねるように躍動する錦織のプレーは、観るものを十分に楽しませました。

 大会6日目の週末のウインブルドンは、子どもや若いファンが多く、いつも以上の活気と熱気に満たされます。錦織対ジョンソンが行なわれた3番コートも、客席とコートの距離が近いこともあり、好プレーに湧く拍手や選手に向けられる声援にも、より濃い感情が込められるようでした。それらファンの歓声は、錦織の軽快なプレーに呼応して音量を増し、錦織も沸き立つ熱気に乗り一層加速していきます。立ち上がりのサービスゲームこそブレークを許しますが、結果的に錦織が、サービスゲームで3ポイント以上落としたのはこれが最初で最後。以降はファーストサービスの確率を上げると、12度のネットアプローチのうち11本を決める速攻テニスで、相手を崩し逆転で第1セットを奪取しました。

 第2セットの中盤以降は、「コースが読めるようになってきた」という相手のサービスを尽く捉え、ブレークを重ねます。ドロップショットで相手を誘い出し、ロブの返球をジャンピングスマッシュで決める痛快なプレーも披露。本人も、「サービスは、今日が一番良かったんじゃないかというくらい気持ちよく打てていた。リターンゲームでも相手にプレッシャーを掛けられた」と、自画自賛の快勝でした。

 ガッツポーズを振り上げファンの声援に答える錦織は、コートを去る際にはバッグを放るように地面に置き、サインを求める子どもたちのTシャツやボールにペンを走らせます。通路を抜ける瞬間にも、退出を促すセキュリティの手を遮り、身を乗り出す少年の手からボールを受け取りサインしました。

 プレーのみならず、立ち居振る舞いにもトッププレーヤーのゆとりを漂わせながら、錦織はウインブルドンの二週目へと歩みを進めます。

※テニス専門誌『スマッシュ』のFacebookより転載

フリーランスライター

編集プロダクション勤務を経て、2004年にフリーランスのライターに。ロサンゼルス在住時代に、テニスや総合格闘技、アメリカンフットボール等の取材を開始。2008年に帰国後はテニスを中心に取材し、テニス専門誌『スマッシュ』や、『スポーツナビ』『スポルティーバ』等のネット媒体に寄稿。その他、科学情報の取材/執筆も行う。近著に、錦織圭の幼少期から2015年全米OPまでの足跡をつづった『錦織圭 リターンゲーム:世界に挑む9387日の軌跡』(学研プラス)や、アスリートのパフォーマンスを神経科学(脳科学)の見地から分析する『勝てる脳、負ける脳 一流アスリートの脳内で起きていること』(集英社)がある。

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