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WTAファイナルズ:大坂なおみ、準決勝進出をかけ運命の3戦目へ。強打自慢同士の打ち合い制すか!?

内田暁フリーランスライター
(写真:ロイター/アフロ)

■WTAファイナルズ:●大坂なおみ 4-6, 7-5, 4-6 A・ケルバー■

「まるで、前の試合の続きをやっているような感じだった……」

 ラウンドロビンの第2戦。ケルバーとの戦いを終えた大坂は、いくぶん赤みを帯びた目でそう言いました。

 確かに、第1セットを失うが第2セットを競り勝ち、追い上げムードのなか最終セットを迎えるものの、突き放されたのも初戦のスティーブンス戦と似た展開。高い走力を誇るカウンターの名手相手に、長いラリーでの忍耐力と戦略性が試されたのも、初戦との高い相似性を示します。

 ただ、この日のケルバー戦が初戦と少し異なっていたのは、ファイナルセットでより多くの勝機が大坂にあったこと。2本のブレークポイントを手にした第4ゲーム、あるいは、相手が2度ダブルフォールトし崩れる気配が濃厚だった第6ゲーム……。しかし、これらの好機を逃した後に大坂は、決めるべきスマッシュを決めそこね、相手にブレークを許します。初戦後の会見時より遥かに悄然とした表情の理由は、ここにあったでしょう。

 体力的にも、長いシーズンの終盤に来て、大きな疲労を抱えていることは隠しようもない様子。それでもまだ大坂には、準決勝進出の可能性が残されています。

 もちろん次戦のベルテンス戦に勝つのは、必須条件。さらにはスティーブンスがケルバーに勝利することも、絶対的に必要になります。それらの条件を満たしたうえで、もし大坂がストレート勝ちした場合は、大坂の突破が決定。また、大坂の試合がフルセットだとしても、スティーブンスのストレート勝利の場合は大坂がグループ2位に。唯一もつれるのが、大坂とスティーブンスともにフルセット勝利の場合で、この時には1勝2敗で並ぶ大坂、ケルバー、そしてベルテンス間での、ゲーム率での争いとなります。

 なお、ベルテンスと大坂は2年前に一度だけ対戦し、この時はベルテンスがストレートで勝利。もちろん、その当時に比べ大坂が大きく成長したのは間違いありませんが、それはベルテンスにしても同様でしょう。WTA創設者の一人であり、女子テニスのご意見番的存在のビリージーン・キングは、躍進のベルテンスを「この1年で、サービスとフォアハンドが驚異的に上達した」と評します。ベルテンス本人は、大坂を「素晴らしいサービスと強打を持つ、超攻撃的なプレーヤー」と警戒しつつも、「私もサービスとフォアはここ数年で磨きを掛け、今では最大の武器」と不敵に笑いました。

 果たして次の試合が、今季の大坂のラストマッチとなるか、あるいは準決勝への扉を開く鍵となるのか? 

 いずれにせよ、ある意味で似た武器を持つ者同士の一戦は、過去の2試合とは異なる展開になりそうです。

※テニス専門誌『スマッシュ』のFacebookより転載

フリーランスライター

編集プロダクション勤務を経て、2004年にフリーランスのライターに。ロサンゼルス在住時代に、テニスや総合格闘技、アメリカンフットボール等の取材を開始。2008年に帰国後はテニスを中心に取材し、テニス専門誌『スマッシュ』や、『スポーツナビ』『スポルティーバ』等のネット媒体に寄稿。その他、科学情報の取材/執筆も行う。近著に、錦織圭の幼少期から2015年全米OPまでの足跡をつづった『錦織圭 リターンゲーム:世界に挑む9387日の軌跡』(学研プラス)や、アスリートのパフォーマンスを神経科学(脳科学)の見地から分析する『勝てる脳、負ける脳 一流アスリートの脳内で起きていること』(集英社)がある。

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