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全仏OP女子ダブルス準々決勝:穂積/二宮、同期の二人が想いを重ね、第1シードを破りベスト4へ!

内田暁フリーランスライター

「次は絶対に決勝の舞台に立って、優勝目指して戦いたいという気持ちになりました」。

 全豪オープンの準決勝で敗れた時、目に涙をためてそう言ったのは穂積でした。

「自分のできることは精一杯やったので、悔いはない」と断言するも、「決勝まで2ポイントまで来られたので……そこは悔しいです」とこぼしたのは、ウインブルドンでの二宮です。2人はいずれも、昨年のグランドスラムでベスト4へと勝ち進み、決勝に肉薄するもわずかに届かず。悔しさと共に「次こそは」の誓いを持ち帰りました。

 今回の全仏で、その「次」に続く道に立ちはだかるのが、大会第1シードのムラデノビッチ/バボス。穂積と二宮よりも1歳年長のこの2人は、ジュニア時代から単複で頂点に君臨してきた言わばエリート。穂積や二宮も10年近く前から大会会場で顔を合わせ、対戦経験もある相手です。

 身長でも20センチ以上自分を上回る相手と並んだ時、二宮は「ムラデノビッチはスタイル良いし、バボスはドーンとしているし」と、威圧感を覚えたことを隠しません。ただそれも、コートに入るまでのこと。相手を分析し作戦を立てた上で、2人とも「自分たちの良いプレーができれば、絶対にチャンスはある」との自信を胸にコートに立っていました。

 ただ試合序盤で、対日本ペア用の策を徹底してきたのは、相手の方だったでしょう。高いボールを多用して、二宮を回避する第1シード。得意の形に持ち込めぬ日本ペアは、やや劣勢に追い込まれます。

 しかし“94年組”の2人は、慌てません。相手の角度あるストロークとロブ攻勢を封じるためにも、Iフォーメーションを用いてストレートでの打ち合いを増やします。この策が見事にハマり、第1セット終盤では驚異のボレーを連発する二宮。後衛での打ち合いでは、穂積が相手前衛を巧みにかわしつつ、時に大胆にコースを変えて勝負に出ます。コート上で常時言葉を交わし、臨機応変に策を構築していく2人。それはジュニア時代から、ナショナルの強化合宿でそれこそ同じ釜のメシを食べ、共にダブルスのセオリーを学んできたからこそ共有できる意識と知識が、2人のベースにあるからでしょう。第1セットを奪った2人は、第2セットも終盤で抜け出し第1シードを堂々撃破しました。

 日本人ペアとして全仏16年ぶりのベスト4は、もちろん快挙。しかし昨年、いずれも「この先」を誓った2人にしてみれば、この地点こそがスタートライン。

「次の試合もスタートからトップスピードで、自分たちの良いプレーを最初から最後までできるよう良い準備をしたい」(穂積)

「これ勝ったら決勝とか考えず、ウインブルドンでも準決勝で敗れた(チャン・)ハオチンを倒すと考えてやりたい」(二宮)

 それぞれの想いを抱き、“壁”を打ち破りに行きます。

※テニス専門誌『スマッシュ』のFacebookより転載

フリーランスライター

編集プロダクション勤務を経て、2004年にフリーランスのライターに。ロサンゼルス在住時代に、テニスや総合格闘技、アメリカンフットボール等の取材を開始。2008年に帰国後はテニスを中心に取材し、テニス専門誌『スマッシュ』や、『スポーツナビ』『スポルティーバ』等のネット媒体に寄稿。その他、科学情報の取材/執筆も行う。近著に、錦織圭の幼少期から2015年全米OPまでの足跡をつづった『錦織圭 リターンゲーム:世界に挑む9387日の軌跡』(学研プラス)や、アスリートのパフォーマンスを神経科学(脳科学)の見地から分析する『勝てる脳、負ける脳 一流アスリートの脳内で起きていること』(集英社)がある。

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