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イタリア国際テニス:ダブルス好調の日比野菜緒。パートナーの「ハッピー」パワーが開いた新たな視界

内田暁フリーランスライター
日比野がストロークでゲームを作り、ロソルスカ(左)が前衛で決めるのが必勝パターン(写真:ムツ・カワモリ/アフロ)

日本勢のダブルスといえば、全豪ベスト4の穂積絵莉/加藤未唯組、そしてフェドカップ代表でもあるダブルスの名手・青山修子の名が真っ先に思い浮かぶでしょう。

それらの面々と並んで現在もうひとり、急激に成績を伸ばしダブルストップ50に飛び込んで来たのが、シングルスでもトップ100を維持している日比野菜緒です。4月のモントレー大会ではダブルス初タイトルを獲得し、今回のイタリア国際(ローマ)でも、初戦でダブルスランキング1位のマテックサンズとM・キーズのペアを撃破。2回戦では大観衆が見守るなか、マドリード優勝ペアであるヒンギス/チャン・ユンジャン相手にマッチポイントを握る死闘を演じてみせました。

その躍進の日比野の傍らに立つのは、昨年のウィンブルドン以降ほぼ不動のパートナーとなったA・ロソルスカ。ポーランド出身の31歳は、WTAツアー7つのタイトルを持つダブルス巧者です。

シングルスでグランドスラムの常連となった昨年、日比野のもとには複数の選手から、ダブルスを組まないかとのオファーが舞い込んだと言います。それら候補者の中から誰と組もうかと悩んだ時、アドバイスをくれたのが同期の穂積でした。ダブルスでは一日の長のある穂積には、選手個々のプレースタイルや性格面を蓄えたデータベースがあり、それらを照合したうえで、友人に相応しい相手としてピンと来るものがあったのでしょう。果たして穂積の見立て通り、ロソルスカは日比野の最良のパートナーだったようです。

「私がストロークでラリーを作り、彼女(ロソルスカ)が前で動く」というプレー面での相性に加え、「とにかくオンコートでもオフコートでもハッピー」という性格の配合も好循環を産んでいる模様。

日比野が練習でうまくいかずイライラした時は、「こんなに天気が良く、こんなに良い大会でプレーが出来るのに、何がそんなに不満なの?」と笑顔で声を掛けてくれる。モントレー大会の決勝前に緊張を隠せずにいた時も、「彼女に鏡の前に連れていかれて、『あなたの大切な人達を思い浮かべてみて。その人達は、あなたにどんな気持ちでいて欲しいと思っているか考えてみて』と言われて……」。そう明かす日比野の顔にも、明るい笑みが広がりました。

「驚くこともあるけれど、そういう考え方が、今のわたしには必要なのかもしれない」

昨年は戦う土俵がグランドスラムやWTAツアーに上がるなかで、悩みや葛藤を抱えたままコートに上がる日々も。それだけにダブルスでの好調さが、最近やや苦しんでいるシングルスに好影響を及ぼすことを、彼女も自身に期待します。今大会のダブルスではマテックサンズを破り、ヒンギス/チャン・ユンジャンとも互角に戦ったことで、「トップとも大きな差はない。相手もミスをするし、試合中に緊張や迷いも見て取れる」と、新たな視野も開けた様子でした。

シングルスとダブルスを両立させ、相乗効果を望む日比野の直近の目標は「単複トップ50」。

その目標に近づくためにも、次なる戦地のニュルンベルグを経て、レッドクレー・ロードの終着点である全仏オープンへと向かいます。

フリーランスライター

編集プロダクション勤務を経て、2004年にフリーランスのライターに。ロサンゼルス在住時代に、テニスや総合格闘技、アメリカンフットボール等の取材を開始。2008年に帰国後はテニスを中心に取材し、テニス専門誌『スマッシュ』や、『スポーツナビ』『スポルティーバ』等のネット媒体に寄稿。その他、科学情報の取材/執筆も行う。近著に、錦織圭の幼少期から2015年全米OPまでの足跡をつづった『錦織圭 リターンゲーム:世界に挑む9387日の軌跡』(学研プラス)や、アスリートのパフォーマンスを神経科学(脳科学)の見地から分析する『勝てる脳、負ける脳 一流アスリートの脳内で起きていること』(集英社)がある。

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