Yahoo!ニュース

BNPパリバオープンレポート:錦織圭、感覚の合わないコートで勝利を呼び込めず

内田暁フリーランスライター

錦織圭 46 67(2) F・ロペス

「あの1ゲームだけが良くなかった。それまではストロークで押していたしチャンスもあった。あの1つのゲームが全てだった」

会見の冒頭で真っ先に錦織圭が言及した運命の1ゲームとは、第1セット、4-5で迎えた錦織のサービスゲームでした。最初にトライしたサーブ&ボレーはミスになり、その後もバックのストロークがラインを割っていきます。15-40の場面でも果敢にネットに詰めますが、ロペスのフォアの逆クロスは伸ばしたラケットの先を抜けていきます。両選手通じて初のブレークは、試合そのもののターニングポイントでもありました。

「風下だったこともあり、スライスが伸びてきて、少し焦ってしまった部分もあった。相手のリターンがスライスなので、サーブ&ボレーはやっていこうという思いはありました」

錦織は、このゲームでミスが重なった理由を、そう振り返ります。その言葉の背景には、ロペスの好調なサービスに加え、「高く跳ねる」コートと「重くて、バウンドが変な所に来る」ボールの組み合わせにより生まれる、「しっくりこない」打球感もあったのでしょう。相手のセカンドサービスでのリターンポイント獲得率が試合全体で42%に留まっていたことも、焦りの原因だったかもしれません。

第1セットにつかんだ流れをロペスはそのまま持ち込み、第2セットでも錦織は相手に先行を許す苦しい展開。その中でも何とか突破口を見いだすべく、2-4からのリターンゲームでは、ニューボールに合わせてラケットもチェンジ。狙い通りリターンから攻めて、ブレークバックに成功しました。

これが反撃の狼煙になるか――? 

そう思われましたが、ロペスのサービスには衰えが見られず、対する錦織はゲームが進みボールが摩耗していくほどに、ショットのフィーリングを失いタイミングを逃していくようでした。結果的には第2セットも、33歳にしてキャリア最高位に付ける好調ロペスが、今季8回やって1度しか落としていないタイブレークとの相性の良さを見せつけ奪います。4-6,6-7で敗れた錦織は「ここは難しいです。コートとボールのコンビネーションに、まだなかなか合わない感じがします」と目に失意と諦めの感情をのぞかせました。

「ここはとにかく忘れて」

向かう先は、拠点のブラデントンにほど近いマイアミ。コーチのマイケル・チャンも、第1週目は帯同予定。万全のチューンアップを施し、昨年ベスト4に入った喜びと棄権に屈した悔しさが入り混じる、相性の良いコートへと乗り込みます。

※テニス専門誌『Smash』のfacebookより転載

フリーランスライター

編集プロダクション勤務を経て、2004年にフリーランスのライターに。ロサンゼルス在住時代に、テニスや総合格闘技、アメリカンフットボール等の取材を開始。2008年に帰国後はテニスを中心に取材し、テニス専門誌『スマッシュ』や、『スポーツナビ』『スポルティーバ』等のネット媒体に寄稿。その他、科学情報の取材/執筆も行う。近著に、錦織圭の幼少期から2015年全米OPまでの足跡をつづった『錦織圭 リターンゲーム:世界に挑む9387日の軌跡』(学研プラス)や、アスリートのパフォーマンスを神経科学(脳科学)の見地から分析する『勝てる脳、負ける脳 一流アスリートの脳内で起きていること』(集英社)がある。

内田暁の最近の記事