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シングルマザーがお金を借りるとき

赤石千衣子しんぐるまざあず・ふぉーらむ理事長 
お金がないということは精神的にも追い詰められること(写真:アフロ)

 シングルマザーがまとまったお金が必要なのはどんなときでしょうか。

 私がご相談を受けていて、

 1、別居後まだひとり親としての支援が受けられないとき

 2、子どもの教育費

 3、就労訓練を受けるとき

 4、ケガ、病気等々

というのが多いように思います。

 日本のひとり親家庭は、半数以上が相対的な貧困にあります。

母子世帯の母の平均年間就労年収は200万円であり、児童扶養手当などの給付や同居している親族の収入を含めても約300万円です。生活はギリギリなりたっても、教育費を捻出することが困難です。

 わたしが理事長を務めるNPO法人しんぐるまざあず・ふぉーらむが取り組んでいる小学校・中学校・高校・大学等の入学お祝い金事業に申込むひとり親は、非正規で働く人が3分の2、入学時の費用を捻出するために、食費を削り、さらに仕事を増やし(夜の仕事など)ていました。

 また預貯金についてですが、全国ひとり親世帯等調査によると、預貯金が50万円以下のひとり親が39.7%となっています。

 想像では、預貯金がゼロ家庭は珍しくないでしょう。それどころか、借金を抱えている人も少なくはないのです。

 

別居中の困難は筆舌につくしがたい

 特に困窮するのが、1、の「別居後まだひとり親としての支援が受けられないとき」です。

 結婚時に専業主婦だった場合、別居後働こうと思っても、子どもが小さい、保育園に入れない、離婚の手続きや裁判所の調停などで生活が不安定などでなかなか仕事に就けません。

 このあいだもある別居中調停中のママが、「早く働きたいけれど、まだ離婚の取り決めが決まらないから働けない」と嘆いていました。こういう状態が1年以上2年、3年と続く人もいるのです。

 先日も小学生の子どもが二人いるシングルマザーがしみじみ、「別居中がいちばんたいへんだった」と振り返っていました。その人は両親に借金を申し込み、まとまったお金を借りることができ、転居、別居中の収入が不足している間をなんとか乗り切り、就職後に少しずつ返しているとのことでした。

 

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 ひとり親に出る手当、児童扶養手当は、離婚が成立しないとなかなか支給されません。遺棄状態であれば支給されるのですが、遺棄状態であることの証明には1年待たねばならず、また夫から連絡がすこしでもあると支給されません。

 この別居のときに、なんらかの援助をできないのか、常々思っています。実は今年度少してがけた事業がありますので、別居中の方のご支援もわずかですがやることができました。また報告をしたいと思います。

 このときに助けられるのは生活保護制度くらいしかないのですが、それも自動車の保有などがネックとなりますので、限定的になってしまいます。又当座少しだけの支援が必要な方に、まるごと生活保護で支援するのがいいのかどうか、微妙なことかなあと思っています。

 

教育費でまとまったお金が必要

 ひとり親だけでなく、子どもを育てていれば、教育費はまとまったお金が必要です。

 わたしたちの新入学お祝い金事業の受給者にアンケートをした結果、中学に入学するときでも約15万円~20万円、高校に入学するときは約20万円~30万円かかっているようです。さらに、大学となると入学準備金だけで100万円くらいかかると見ておかねばなりませんね。

 大学の入学準備のためには、貯金をしておくか学資保険を用意する、あるいは母子父子寡婦福祉資金貸付金の修学資金か、国の教育ローン(日本政策金融公庫)を借りるように、私は伝えています。奨学金は、入学時のお金を用意するときには間に合わないからです。

 国の教育ローンは、現在低金利なので、1.78%以下の利率で350万円まで借りることができます。これは親が借りるもので、返済も保護者が行うことになります。

 https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/ippan.html

 

 

 

職業訓練を受けるときのお金

 

 訓練を受けて資格を取るなど、就労へ向けてひとり親が自分に投資することはとても大切だと思っています。

 しかし、訓練校や学校に通う場合に、生活費が出ない、あるいは不足している、となると、生活が大変です。

 また学校の受講費用などをひとり親の場合6割負担してくれる自立教育訓練給付金制度というものがあるのですが、これは終了後に6割を支払ってくれるものなので(一般の方は2割)、最初は立替しておかねばならないのが大変です。

 参考 母子家庭自立支援給付金及び父子家庭自立支援給付金事業の実施についてhttps://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000062986.html

ケガや病気について

 ご相談の中で、社会保険に加入していて病気で休業した方が、傷病手当を受けていない事例が散見されます。社会保険に入っていれば、4日目から傷病手当は出ることになっています。ぜひ手続きしてほしいものです。

 なかなか会社に言いにくいなどのことはあるかとは思います。

 こうしたときには、ほんとうに大変な状況の方が多いのが実情です。

母子父子寡婦福祉資金貸付金に3万人以上

 こうしたまとまったお金が必要な場合に、日本のひとり親家庭はどこでお金を借りているのでしょうか。

 実は、日本では、1953年代に母子福祉資金が成立し、母子寡婦福祉法と改正され、その法律のもと、母子父子寡婦福祉資金として運用されています。こうした制度をつくった先見の明に感心します。

 この法律のもと全国の自治体ではひとり親支援として「事業開始資金、事業継続資金、技能習得資金、修業資金、就職支度資金、医療介護資金、生活資金、住宅資金、転宅資金、結婚資金、修学資金、就学支度資金」の種類があり、無利子あるいは年1%で運用され、償還期間は3年から20年以内となっています。

 http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/kodomo/hitorioya_shien/keizai/boshi.html

 この事業開始資金で、事業を始めた人もいます。

 あるシングルマザーは、カフェを開業するためにこの事業開始資金を借りました。 

 母子父子寡婦福祉資金の貸付のうち、もっとも多いのが、修学資金で、子どもが私立高校に進学したときや、専門学校や大学に進学するときに借りる人が多いと思います。

 無利子ですので、大変ありがたい制度です。ただ、借りるにはかなり時間がかかりますので、3カ月は見ておきましょう。

 そのほか、生活資金などで借りる方もいます。よくある例としては、シングルマザーが看護学校や保育の学校に通っている場合に、生活費の援助として高等職業訓練促進給付金制度があるが、この10万円あるいは7万500円だけでは不足し借りる場合などがあります。

 現在、母子父子寡婦福祉資金貸付金は年間約3万5000件総額172億円の貸付を行っている(平成28年度)だそうです。

 この母子父子寡婦福祉資金貸付金にはいくつかの問題点がありました。

 連帯保証人を建てなければならないとは明記されていないのですが、運用上連帯保証人が必要な自治体が多いこと。借りるまでに2~3カ月かかるので、前もって準備しておかねばならないこと、などです。

 ただ、厚生労働省はこうした問題に対処し、連帯保証人がいなくても貸し出すように制度を改めるとしています。

https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11900000-Koyoukintoujidoukateikyoku/0000202714.pdf

 ただし、連帯保証人がいない場合は無利子ではなく、有利子(1.5%)にするとしています。

小口の貸付に民間支援

 シングルマザーなど貧困な人びとを応援しようと2018年グラミンバンク日本が立ち上げられました。https://grameen.jp/

 わたしは10数年前に、ムハマド・ユヌス氏の著書を読み、バングラデシュの女性たちが小口資金を借りて、小さな事業を起こし、きちんと返済し、女性が経済的にエンパワーしていくストーリーに感動しました。

 日本版グラミンバンクの内容をみると、

  支援対象者はメンバーと呼ばれ、働く意欲と能力がある人で、互助グループをつくれ、働いて生活をステップアップしたい人、前向きに生きていきたい人、となっています。

  具体的な仕組みとして、  ・互助グループ(5人一組)をつくる。 

  ・金利はできるだけ低くし6%とする。  ・融資期間は半年~一年。

  ・無担保連帯責任。  ・毎週1回のミーティングに参加する。

  ・融資の使途は就労(起業ないし被雇用)のよって所得を創出。

  ・毎週返済。据置期間は1週間。

 などとされています。

  

 しかしよくよく考えてみると、小口資金貸付として、すでに日本には無利子あるいは低利の母子父子寡婦福祉資金があるのです。これをもっとよい制度にしていくことがまず肝要です。もちろん、いろいろな支援や仕組みがあることは大切です。

 グラミン日本の年利6%という利率を聞くと支援団体からは高いという声が漏れました。また生活資金にはあてられないので、そこも限定的です。もしかすると仕組み自体、グループミーティングなど金融だけではない「つながり」などをめざしているのかもしれないのですが、金利と上限20万円は適用対象が限られる気がします。

既存の貸付金制度などを改善しつつ漏れている別居中の方などの支援を

 日本では60年前に、政府が小口貸付制度である、母子父子寡婦福祉資金(無利子か1.5%)をつくったのです。

 また国民政策金融公庫の開業資金の金利(2%前後)もあります。

 あるシングルマザーは離婚後の仕事として行政書士の資格を取ったあと、国民政策金融公庫の開業資金を借りて、結局それで離婚前後の働けない時期の困難を乗り切ったと言っていました。それはかしこいやり方だったのでは、と思います。

 

 起業支援については、女性の起業の収入がまだまだ低いということも気になります。 

 経済産業省の「女性起業家に関するアンケート調査」によりますと、女性起業家の個人所得は100万円未満が70%、100万円以上200万円未満が18.0%、200万円以上300万円未満が8.7%、平均93.1万円となっています。

 http://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/H24/H24/html/k222200.html

 これまでのシングルマザーの起業を見ていると、カフェや食べ物を扱う事業はなかなか成功に至らず、保育ママ(家庭福祉員)などの小規模な保育室を立ち上げて自立した方がいました。

 まとめると、シングルマザーがお金を必要とするときは1、別居から生活が安定するまで 2、子どもの教育費 3、自分の職業訓練 4、ケガや病気 です。特に1、の別居の時期のニーズに対応できるものがありません。

 母子寡婦福祉資金貸付金や、国民金融公庫の教育ローンや開業資金などまずは低利の貸付制度を、より利用しやすく改善していきながら、今は支援対象からはずれている別居中のひとり親の応援ができる仕組みづくりを検討したいものです。 

 それが現実的にひとり親家庭の困難を解決するのに役立つでしょう。

                                         

しんぐるまざあず・ふぉーらむ理事長 

NPO法人しんぐるまざあず・ふぉーらむ理事長。当事者としてシングルマザーと子どもたちが生き生きくらせる社会をめざして活動中。社会保障審議会児童部会ひとり親家庭の支援の在り方専門委員会参考人。社会福祉士。国家資格キャリアコンサルタント。東京都ひとり親家庭の自立支援計画策定委員。全国の講演多数。著書に『ひとり親家庭』(岩波新書)、共著に『災害支援に女性の視点を』、編著に『母子家庭にカンパイ!』(現代書館)、『シングルマザー365日サポートブック』ほかがある。

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