ひとり親家庭の貧困をなくすには

ママは子どもたちを育てるためにけんめいです

(この文章は、4月26日、児童扶養手当法改正案についての参議院質疑で参考人として発言したもの、および時間の関係上発言できなかったものも含めて再構成したものです)

このたびは、貴重な機会をつくっていただき、ありがとうございます。

しんぐるまざあず・ふぉーらむの理事長をしております、赤石です。私は、団体の運営とともに、各地の講座や研修の講師を務めさせていただいております。

しんぐるまざあず・ふぉーらむの紹介

しんぐるまざあず・ふぉーらむは、当事者中心のシングルマザーと子どもの支援団体です。電話相談、グループ相談会、そしてパーソナルサポートを実施しております。また各地でセミナーも実施しています。さらに、人材育成として、ひとり親サポーター養成講座を各地で実施、300人以上のサポーターを養成しております。子ども支援としては、学習支援とともに、昨年度初めて入学お祝い金事業として、ご寄附の中から26人のお子さんに3万円の準備金をお渡ししました。これは制服代などで3月に経済的に困窮するときに早めにお祝金をお渡しし、入学準備をしていただくためのものです。

その中のおひとりと昨日お会いしてきました。

うつで働けなくなり、児童扶養手当と児童手当、月額5万円余だけで生活をしておられます。その方は昨年はベッドから起き上がることもできず自死念慮も高く、食料支援を続ける中で徐々によくなってきたということでした。少しずつ働きたいとおっしゃっているのですが、お子さんはお母さんがいつ死んでしまうか不安で、今でも夜中に飛び起きて泣き出すということでした。タンパク質は、納豆と卵だけの生活をしておられるということです。いかに児童扶養手当が重要な手当であるかがわかると思います。

今日は、第一に、ひとり親家庭が貧困なのはなぜか、第2に、2003年以来の母子家庭支援策をどう評価するのか、第3に児童扶養手当の支給回数そのほか問題、そして、第4にそのほかのひとり親家庭の支援施策の問題についてお話したいと思います。

ひとり親家庭の貧困の原因とは

子どもの貧困問題が大きな日本社会の問題となっております。ひとり親家庭の貧困率が高いのでしょうか。ひとり親家庭の親は、福祉に依存し、怠けて働いていないのでしょうか。

そうではありません。

ひとり親家庭の貧困とは、就労収入が低い結果世帯収入が低いこと、そしてそこに十分な社会保障が届いていない、養育費ももらえていないことにあるのです。

(この部分はカットしました)

○就労収入が低い

ひとり親家庭、特にシングルマザーの就労率は世界でも4番目に高いにも関わらず、就労収入が低いのです。これは、日本の男女の賃金格差が先進国の中で非常に大きく、特に子育てをしている労働者の賃金が安い、さらに正規と非正規の賃金格差が広がっているからなのです。

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つまり、日本社会が男女の賃金格差の是正、あるいは、仕事と子育ての両立支援、同一価値労働同一賃金、こうした問題を根本的に解決してこなかった、そのつけが、シングルマザーにもっとも押し寄せている、ということなのです。

ですから、ひとり親家庭の貧困問題を解決するには、男女の賃金格差の是正、同一価値労働同一賃金、最低賃金の引き上げは有効な施策です。

しかし、就労収入で計るとほかの国でも貧困率が高い国はあります。しかしその後の税や社会保障により、貧困率がぐっと下がる国が多いのですが、日本の場合はそうはなりません。

つまり、社会保障が貧困を解決するに至っていない、ということがもうひとつの問題です。

[カット終わり]

○ひとり親支援施策の検証の必要

・2003年以来、母子(ひとり親)施策は改革が行われ、1、子育て・生活支援、2、就業支援、3、養育費の確保支援、4、経済的支援の4本柱で行われてきました。

その代り、児童扶養手当は減額されてきました。

その中で、特に就業支援には力を入れてきました。

十数年行われてきた、就業支援は果たして効果が上がってきたのでしょうか。ひとり親家庭の収入は上がってきたのでしょうか。

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これについて日本労働政策研究・研修機構の周燕飛さんの報告によりますと、この10数年行われてきた、主に母子世帯の母に対する就労支援については、高等職業訓練促進費事業(これは、看護師や保育士などの資格取得のための学校に修学する場合に、生活費を援助する制度ですが)については積極的な効果がみられるものの、そのほかの自立支援教育訓練給付金制度、母子自立支援プログラム策定(年間7000件)、母子家庭等就業・自立支援センター事業については、就業効果や賃金上昇効果は観察されなかった、と報告しています。

周さんの報告によりますと、効果が上がらない理由としては、名前が変わり周知度が低い、見切り発車による現場の混乱、母子世帯のニーズが汲み上げられていない、事業の効果検証が行われていないことを上げています。

そこで、費用対効果を考え、新規事業含め検証が必要と結論しています。

ぜひ、ひとり親施策をエビデンスに基づく施策にしていただきたい、と思います。効果が上がらない施策が何百億円も投じられ、手当が減額になっている状況を続けてはなりません。

また、就業支援に力を入れることで、子どもへの世話する時間がないといった問題も生じています。労働政策研究・研修機構の 「第3回(2014)子育て世帯全国調査」によると、母子世帯の不登校経験率が9.1%、父子世帯の不登校経験率が19.0%となっております。子どもの健全な育ちを保障するためには、就労に力をいれるべきか、子どもに時間を費やすべきか、ひとり親は揺れているんですね。ここをご理解いただければと思います。

○児童扶養手当の残る問題について

2003年改革で児童扶養手当を減額し、就労支援策に力をいれるとしたものを、再度児童扶養手当の額を上げたという意味は大きいと考えます。果たしてこれは方向転換と言えるのか、注視したいと思います。

・第2子第3子の加算での暮らしの変化(当事者の声)及び、

「子どもの人数が多ければその分お金もかかると思います。今回の増額はほんとうにありがたい」

「子どもひとりずつ買ってあげられなかったワークブックをひとりずつに買ってあげようと思う」

「少し食事におかずが増やせる」

こういった声が聞こえてきました。

児童扶養手当増額が36年ぶりに行われたことの意義は大きいと思います

次に、この第2子、第3子の加算額の推移をお示しします。

昭和36年には、児童扶養手当は一人の場合には800円、ふたりの場合には、400円と、2対1の割合で支給されていました。これが、加算額が数年間は増えてたのですが、その後5000円に固定され、35年間経過いたということです。

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二人目、3人目の加算額がどういうルールによって、決定されるのか、ぜひそこについて、ご議論していただければと思います。

同時に、支給年齢についても、子どもたちが大学に進学する道を閉ざさないためにも20歳までの支給をお願いしたいと思っています。

・支給回数問題で、支給月前の困窮について

児童扶養手当が、4カ月に一度の後払いであることで、どんな不都合が生じているのでしょうか。

日本では電気、ガス、携帯料金、家賃、等々は毎月払いとなっているものが非常に多いです。ですので、4カ月に1度の支払いでありますと、家計管理が困難となるのです。

棒グラフを見てください。

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特に3月、入学、進学時期になりますと、大変な困難が押し寄せます。

Aさんは、小学校から中学に子どもが入るときに、卒業アルバムで1万円以上、制服代体操服代などで10万円かかるところだったのでした。制服は代金引き換えのために、制服が入手できない、最悪は入学式を欠席することになる子どももいるのです。

この支給回数問題はぜひ解決していただきたいです。

自治体でも、毎月支給に変えたいという自治体があると聞いています。ぜひその裁量に任せられるよう、お願いいたします。

・児童扶養手当は支援を次につなげるハブステーションの意味を再確認したいと思います。

自治体は、その地域のひとり親世帯の名簿をどのような形でもっているのでしょうか。児童扶養手当受給者名簿として把握しています。

図をご覧ください。

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児童扶養手当の所得制限よりも所得の高いシングルファーザー(半分はそうです)、シングルマザー、同居親族が所得制限を超えているシングルマザー、あるいは死別で遺族年金受給シングルマザー、また、障害をもっている障害年金受給シングルマザーには、情報が届きません。現在150万世帯のひとり親のうち、107万人が受給者ですから、漏れてしまう方たちにも有効有益な情報をどう届けるのか。知恵を絞るべきです。

今回、情報を周知するために、ホームページ、メルマガ、SNSの活用などについて自治体に対応を促しております。それはとてもよいことだと思います。

しかし、実態としては、県のホームページに学習支援の情報があり、委託先の団体のリンク先が示されていても、そのリンク先を見ると、新年会の写真、日本舞踊の写真が載っている、といった県もあり、まだまだ機能していないことを感じます。

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子育て支援、就労支援などは死別でも受けられることを周知していくべきではないでしょうか。

・不正受給監視と社会的排除は表裏一体であること

この国会審議でも不正受給という言葉が何度も聞かれました。

今回児童扶養手当の増額に伴い、不正受給監視の強化が謳われております。

児童扶養手当は、いわゆる親が事実婚をしている場合には支給されないわけですが、この事実婚の規定は、非常にあいまいです。親がほかの異性と同居している場合を事実婚とするだけでなく、ひんぱんに訪問している、生計費の補助を受けている場合、も事実婚とみなすとされています。しかし、離婚後の養育費や面会交流は事実婚にはあたらないとしています。しかし、一方、偽装離婚という言葉も言われます。今回訪問調査もする、あるいは民生委員に調査を委託するということになっています。

事実は、実の父と団地を歩いていても、近所に通報されたなど、笑えない例もあり、不正受給監視ということをされていることで、行政嫌いになる例もあります。

事実婚の疑いをかけられ、実際に異性と交際している、といった母子が、実は、相手からDV、虐待のリスクにさらされることもあるのです。不正と言われ、排除され、福祉とのつながりを失い、虐待事例などもありえます。

要件を的確に運用しつつ、一方で、相談につながり続けられるような対応が必要です。

○婚姻歴のない父母へ保育料等の寡婦(夫)控除みなし適用を全国で

次の論点にうつります。

非婚の母、正確に言うと婚姻歴のない父母には所得税法、地方所得税法の寡婦控除が適用されません。この結果、所得が高く計算され、所得税が高くなり、同時に保育料、公営住宅家賃なども高いものを払うことになります。東京都八王子市では、年収200万円の非婚ママの場合離婚の母と比べ、合計で年額20万円負担が増えていた。年収200万円で20万円の負担増は1割にも及びます。

この結果、各地方自治体に訴え、かなりの自治体が寡婦控除のみなし適用を認めるように是正が進んでいます。また公営住宅法入居基準を改めました。

衆議院での附帯決議に、婚姻歴のない父母へのみなし寡婦控除適用についての実態把握が入ったことをもう一歩進めて、制度化していただきたいと思います。

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○ひとり親家庭 日常生活支援事業について

さて、最後に、ひとり親家庭日常生活支援事業の問題点についてお話します。

ひとり親家庭の生活では、経済的な貧困と同時に時間の貧困にさらされます。子どもと過ごす時間は非常に少ないのが実情です。長時間働くことで、責任ある仕事をしたいという思いと、子どもを見てくれる人がいない、という問題にさらされます。

こうした問題で、お子さんを低料金で見てくれる「ひとり親家庭日常生活支援事業」はその助けになると思われる制度です。

しかし、一時的な必要しか対応しないなど今までは大変使い勝手の悪いものでした。

このパネルを見てください。

平成25年度の日常生活支援事業の都道府県別の利用件数は10人以下の県が15県、利用者ゼロ県3県となっています。

少なくありませんか。

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「書いてあるのに利用できない」多くの利用者はひとり親支援についてこういいます。

どのくらいのニーズがあるのか。人口7万4000人の東京都清瀬市で、この日常生活支援事業、都内はひとり親ホームヘルプサービス事業、というのですが、これで、シングルファーザー、シングルマザーのお宅に訪問しお子さんを看ている、子育て支援ネットワークピッコロという団体がありますが、なんと、年間1373件、45家庭に派遣しているそうです。もっと必要な人がいるということです。

一方、山梨県では、日常生活支援事業を利用しようとしたところ、「予算がないから使えない」と断られたという訴えがありました。

解決策は、基礎自治体に事業をおろすこと、子育て支援のユニバーサルな事業である、ファミリーサポート事業に統合し減免措置をつけることも含め、基礎自治体の裁量にすること、マッチングのための人件費をつけることです。今のままの県単位では、地域に派遣できる人がいなければ終わってしまいます。

ひとり親支援施策については、今ある枠組みであっても、もっと当事者によりそって、生活と就労を支えることでできるはずなのです。しかし、当事者の声が届かないために、名ばかりの制度がある、このことを是正していくことも必要です。あえて、実例をあげさせていただきました。

ぜひとも、こうしたことを改めて、経済的困難の中で、なんとか子どもを育てている、ひとり親を、わがままだ、感謝の気持ちが足りないなどという目で見ずに支援する施策が必要です。

実際の質疑についてはインターネットで見ることができます。

http://www.webtv.sangiin.go.jp/webtv/index.php(厚生労働委員会)

ご静聴ありがとうございました。