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世の不条理を問う映画「狼煙が呼ぶ」好評で「新宿のろし一揆!!!」決定

「狼煙が呼ぶ」上映館で舞台あいさつする監督の豊田利晃(撮影・池田由利子氏)

 祖父と父の形見の古ぼけた拳銃が自宅にあったというだけで逮捕された映画監督、豊田利晃(とよだ・としあき)50歳。彼は、不条理な逮捕、不条理な報道、不条理な誹謗中傷に対する返答として、短編映画「狼煙(のろし)が呼ぶ」を制作した。9月20日から全国各地のミニシアターで一般公開が始まり、同日、このYahoo!ニュースでも記事として紹介した(以下に記事のリンク)。

https://news.yahoo.co.jp/byline/aizawafuyuki/20190920-00143488/

世の矛盾を撃つ!「狼煙が呼ぶ」の一場面(提供・イマジネーション)
世の矛盾を撃つ!「狼煙が呼ぶ」の一場面(提供・イマジネーション)

 その映画が予想以上に好評で、早くも一部映画館が上映延長を決めたほか、特別イベントの実施も決定した。

 矛盾に満ちたこの世の中に狼煙を上げた男の記事の続編である。(敬称略)

16分1800円でも満席になった映画館

 「狼煙が呼ぶ」は16分の短編映画だ。しかし通常の100分前後ある映画と同じように1800円の料金がかかる。それでも観客は集まった。世の不条理に対し作品で立ち向かおうという映画監督・豊田の姿勢への共感と賛同の表れだろうか?

東京・渋谷の上映館ユーロスペースで舞台あいさつする豊田と出演者たち(提供・イマジネーション)
東京・渋谷の上映館ユーロスペースで舞台あいさつする豊田と出演者たち(提供・イマジネーション)

 20日に上映が始まった東京・渋谷の映画館ユーロスペースは、立ち見も出るほどの満席に。ユーロスペースやアップリンク吉祥寺など数館は、当初1週間だった上映予定を、急きょさらに1週間延長することを決めた。

地方巡業で制作のいきさつを語る

 豊田は今、全国各地の上映館を回って舞台あいさつをしている。それ自体異例のことだ。普通は地方を回ったりはしない。

 24日は大阪を訪れた。豊田は大阪市東成区の出身で、21歳で東京に行くまで東大阪市布施で育った。映画館の観客を前に豊田は、「大阪弁と東京弁が混ざった変な言葉になっています」と自己紹介した上で、映画制作のいきさつを語った。

大阪の上映館シネマート心斎橋で観客に語りかける豊田(撮影・池田由利子氏)
大阪の上映館シネマート心斎橋で観客に語りかける豊田(撮影・池田由利子氏)

「おじいさんが持っていた形見の拳銃で、さびついて引き金も動かないような古い拳銃です。それが自宅にあったんだけど、警察も最初は『大丈夫だ。それで捕まえることはない』と言ってたのに、彼らが本部に連絡して30分くらいしたら『逮捕します』って言われて、え~って思いました」

「警察署に着いたらテレビカメラが20台くらい待ち構えていて、撮影しやすいようにタイミングを決めて車から出されたんです。見せしめみたいなものですよ」

「狼煙が呼ぶ」の高良健吾(提供・イマジネーション)
「狼煙が呼ぶ」の高良健吾(提供・イマジネーション)

「おじいさんの形見だと証明されて、すぐに出された(釈放された)んですけど、その時にはマスコミとネットの相乗効果社会的ないじめ、リンチのようなことになっていました。まさか自分が当事者になるとは思っていなかった。不起訴になったと各マスコミに伝えても取り上げてくれない。ネガティブなニュースしかメディアは取り上げない。で、記者会見をするとか、取材を受けるとか、いろいろ話はあったんですけど、僕は映画監督ですから、映画でまっとうしますと」

 かくして短編映画「狼煙が呼ぶ」が誕生した。逮捕・釈放からわずか3か月での完成だった。

「狼煙が呼ぶ」の主役、渋川清彦(提供・イマジネーション)
「狼煙が呼ぶ」の主役、渋川清彦(提供・イマジネーション)

新宿のろし一揆!!!開催決定

 映画の好評を受けて急きょ特別イベントの開催も決定した。その名も『狼煙が呼ぶ』新宿のろし一揆!!!

 新宿の映画館「シネマート新宿」で10月6日(日)18時半から。映画の上映に続き、監督の豊田と出演者の渋川清彦、村上正人、切腹ピストルズの飯田団紅らとのトークショーが行われる。

 そして最後に、照井利幸×豊田利晃(VJ)のスペシャルライブ。照井は豊田の映画「泣き虫しょったんの奇跡」の音楽を担当したミュージシャン。豊田はVJとして映像を担当する。

「みんなそれぞれのやり方でのろしを上げよう、立ち上がろう」と呼びかける豊田利晃(撮影・池田由利子氏)
「みんなそれぞれのやり方でのろしを上げよう、立ち上がろう」と呼びかける豊田利晃(撮影・池田由利子氏)

 豊田は語る。

「僕の逮捕の不当さ、マスコミ報道のおかしさ、ネット上でのリンチ。そういうこともおかしいけれど、それ以上に、何かあるとすぐに上映自粛、販売自粛に走る世の中。そんな“自粛”社会に対して立ち上がろう!そんな思いを込めました。皆さん、それぞれの場所で、それぞれのやり方で狼煙を上げよう農民一揆のように立ち上がろう、そういう意志が伝わるといいなと」

 豊田の短編映画は、日本社会に確実にのろしを上げているようだ。

【執筆・相澤冬樹】

『狼煙が呼ぶ』新宿のろし一揆!!!の告知画像(提供・イマジネーション)
『狼煙が呼ぶ』新宿のろし一揆!!!の告知画像(提供・イマジネーション)

特別イベントのオンライン予約サイトhttps://www.cinemart-ticket.jp/shinjuku/schedule/index.php

問い合わせ先 シネマート新宿03-5369-2831

制作・配給・宣伝 IMAGINATION

https://www.imaginationtoyoda.com

宮崎生まれ。NHKで記者修業30年余(山口・神戸・東京・徳島・大阪)。森友事件取材中に記者を外され退職。経緯は文春文庫『メディアの闇「安倍官邸vs.NHK」森友取材全真相』。還暦間近なるも修業継続中。「取材は恋愛に似ている」を信条に、Yahoo!ニュースや週刊文春、週刊ポスト、日刊SPA!、日刊ゲンダイなど様々な媒体で執筆。ニュースレター「相澤冬樹のリアル徒然草」配信中→http://fuyu3710.theletter.jp/about

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