子どもの貧困と学校給食費の無償化。将来の子どもたちも担えるサービスの提供を目指し問われる自治体の手腕

(写真:アフロ)

子どもの貧困が抱える食生活

経済的に苦しくなったとき家計で切り詰められるのは食費。貧困が原因で朝ごはんぬきで学校に登校、両親が働いているため家で1人きりのコンビニ弁当。食事難や孤食と称される実態。子どもの貧困が社会問題になるなかで、親が経済的に困窮し食事も満足に取れない子どもたちに対して、無償で食事を提供する「子ども食堂」が活発化するとともに、学校給食も重要な役割を果たしている。とはいえ、公立の小中学校の学校関連の費用のなかで大きな割合を占めているのが学校給食費である。学校給食費における保護者の年間負担額は1人あたり小学校4万7,773円、中学校5万4,351円にのぼり(文部科学省「平成30年度学校給食費調査」)、貧困家庭には大きな負担となっている。たしかに憲法第26条第2項に規定されている義務教育の無償はある。その範囲は授業料および教科書としている。

学校給食費の無償化

そもそも学校給食とは、1889年、山形県の日本海沿岸の南部に位置する鶴岡町(現・鶴岡市)の忠愛小学校で、貧困児童を対象に無償で行われたことに端を発する。現在、公立小中学校の給食無償化が検討されるものの遅々として進まない。全国の都道府県教育委員会を通じて、市区町村教育委員会(1,740自治体)に対して、平成29年の学校給食費(食材費)の無償化等の実施状況及び完全給食の実施状況の調査が行われた。その結果、1,740 自治体のうちで学校給食費の無償化を実施している自治体は、小学校・中学校ともに無償化を実施しているのが76 自治体(4.4%)、小学校のみ無償化が4 自治体(0.2%)、中学校のみ無償化が2 自治体(0.1%)に留まっている。このとき無償化に踏み切った自治体の多くが町村であり(71 自治体(93.4%))、かつ人口1万未満の自治体(56 自治体(73.7%))である(文部科学省「学校給食費の無償化等の実施状況」及び「完全給食の実施状況」)。学校給食費の無償化が進まない理由として、同調査では予算の継続的な確保を挙げている。

政策の持続可能性の要とは何か

このようななかで、2020年4月に中核市レベルで初めて学校給食費の無償化を実施する。兵庫県明石市の全13中学校だ。完全無償化で同市は新たに約3億5,000万円の負担を計上している。この財源を同年10月から国の幼児教育・保育の無償化で市の財政負担の年間約7億5千万円が浮くため、一部を学校給食費の無償化の財源とする。また政令市レベルでは大阪市も検討段階に入った。だが市内には小学校285校と中学校128校がある。これらすべての小中学校の学校給食費の無償化を行うとすれば、新たに毎年度約60億円の財源が必要となる。この財源を各自治体はこの先も継続的に確保し続けられるだろうか。

代替できる制度への検討

一方で、学校給食費を含む、学校に通うのに必要な費用を援助する制度として「就学援助」がある。就学援助とは、「経済的に就学困難と認められる学齢児童又は学齢生徒の保護者に対しては、市町村は、必要な援助を与えなければならない(学校教育法第19条)」とする制度である。この就学援助によって、学校給食費をはじめ、学校で必要な文房具・楽器などの学用品代や、クラブ活動費、PTA会費が支給される。就学援助の支援を受けている小中学生(要保護児童および準要保護児童)は、2016年度では全国で145万人、約6人に1人(就学援助率は15.23%)。つまりクラスの人数が30人であれば5人が援助をうけている計算になる。就学援助の割合が高い高知県(25.62%)に対し、富山県(6.74%)は低く自治体間で格差が生じている。(文部科学省「就学援助実施状況等調査」)。この数値をどう考えるのか。就学援助制度の周知方法は自治体によりバラツキがあり、就学援助制度を知っていても手続きの煩雑さ、貧困家庭であることを知られたくないという思いから、申請にいたらないケースがある。そこには、同制度を必要とする子どもたちに、サービスが届いていない可能性がある。

次の時代の子どもたちへ

全ての公立の小中学校の児童・生徒に対して、所得に関係なく公平に行われる学校給食費の無償化。そこには学校給食費を支払うに困らない世帯も含まれてくる。だがサービスにはどうしても費用がかかる。子どもの成長を支える学校給食、これ自体はとても重要な政策である。でも見過ごしてはならない。国からの補助金や交付金の削減、少子高齢化を背景とした税収の減少と歳出の増加、各自治体の財政状況は決して余裕のある状況とはいえない。もし学校給食費の無償化が何にも代えがたいサービスと判断し、公的給付として学校給食費を賄うという選択をするのであれば、つまり、この先も持続的に学校給食費を税財源で提供していくのであれば、厳しい財政状況に立たされている自治体は、新たなサービスの給付の代わりに何らかのサービスを抑えるか、それとも、次の世代に更なる税負担を課すのか。その選択を、もしかしたらしていないだろうか。将来を見据えて考えてほしい。すでにわが国には、どうしても学校給食費をはじめ、学校に通ううえで必要とされる費用を支払うには困難な児童・生徒には就学援助制度がある。果たして就学援助制度を必要とする家庭に充分サービスが届いているのだろうか。限られた予算のなかで、本当に必要とする人に適切にサービスが届くようにする。サービスをどのように提供していくのか。その手腕が自治体に問われている。次の時代の子どもたちが担い続けることができる政策、その視点が今まさに求められているのではないだろうか。