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人口減少社会を見据えた保育サービス3:仕事と子育て、どうしても生じる月々の保育料

足立泰美甲南大学経済学部教授/博士「医学」博士「国際公共政策」

月々の保育料って、どのくらいなの?

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保育料ってどのくらいかかるだろう?認可保育所は安いって聞くけど、でも月あたりどのくらいの金額だろう?色々と調べるなかで、料金がまちまちであるのに戸惑うこともあるのではないでしょうか。

また保育所を利用している人のなかには。同じ職場の同僚でお給料は同じくらい、お子さんもわが子と同じ年齢。お迎えのお時間も同じくらいのはずなのに。でも、うちの保育料が高いのはなぜだろう。

保育料、どうして違う料金なの?

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実は、保育料は住む市町村によって料金の設定が異なります。例えば、町田市の保育料。0歳児であれば月あたり平均17,400円。この価格は全国平均よりも安いです。

保育料の徴収の目安に、国が定めている徴収基準額があります(表1参照)。でも大半の市町村はこの目安を守っていません。利用する保護者の負担を軽減するために、自主財源を投入し、利用料金を抑えています。

たとえば浦安フォーラム「保育ランキングH25(都道府県庁所在地比較)」では、保育料の限度額を比較しています。国は、3歳未満児の利用には月あたり104,000円の上限を設定。しかし、この上限を守っている自治体はほとんどありません。最も低い限度額を設定している大分県大分市では、国の基準額の半分以下の46,000円。高い金額の兵庫県神戸市でも85,800円と国の設定を大幅に下回っています。

住む場所によって支払う保育料が違う。自分が住んでいる市よりも、隣の市の保育料が低い。そんなこともあるかもしれません。たとえば2011年の時点では、武蔵野市は国の基準徴収額に対して47.6%の徴収割合、一方、隣の西東京市は50.0%とやや高め。近くの清瀬市は46.5%と一様ではありません。

保育料の設定の方法とは

保育所の管轄は市町村です。保育所には、市町村が運営しているところもあれば、社会福祉法人、学校法人、民間企業で運営しているところもあります。厚生労働省が認可している認可保育所には、市区町村が運営する公立と企業や法人が運営する私立があり、自治体の補助金が投入されています。公立及び私立ともに保育料は同じですが、公立はサービスの内容が類似ですが、私立は運営する法人によって方針や独自の保育内容があります。

厚生労働省の認可を受けていない保育所は認定外保育所で、その大半に補助金が投入されていません。そのため保育料が高い傾向にあります(表2参照)。たとえば、全国平均よりも低い値段が設定されています町田市では、認可保育所で0歳児の月平均が17,400円です。認可外保育所ではどうでしょう。認可外保育所の1つ。認証保育所では63,000円です。その額は、認可保育所の3倍以上になります。

そもそも保育所の運営にはどのくらいの費用がかかるのでしょう。認可保育所の0歳児の月あたり平均17,400円に対し、運営費はその10倍近くの137,550円になります。言い換えますと、補助金の入っている認可保育所では、運営費から各家庭がご負担している保育料を差し引きました額を市の財源である補助金で賄っています。

保育料、望ましい料金とは

たしかに、保育所利用者の所得階層の大半が世帯所得300万円未満やひとり親の市町村民非課税世帯が多いといわれています。そのため、ほかの予算を削ってでも保育を充実させたほうがいいという考え、また補助金という形で市の一部で肩代わりするのはやむをえないという考えが多いかもしれません。

一方で、補助金が投入される認可保育所に対し、認可外保育所の値段の設定には格段の差があります。そこには利用者間の負担の格差が生じています。所得に一定の考慮をすべきものの、同じサービスが提供されるのであれば同じ負担という考えがあります。市の財源が限られているなかで、認可外にも一定の補助金を投じつつも、認可保育所には一定の値上げを検討し、同額の負担をという考えも出てきてもおかしくないかもしれません。

さらに、潜在的利用者の公平性はどうなるのでしょうか。待機児童問題を踏まえれば、保育所を利用したくとも利用できず家庭で保育している保護者もいます。その公平性はどうなるのでしょうか。

このような財源問題や利用者の公平性に対し、市町村のなかには検討委員会を立ち上げ、保育の見直しを検討する自治体も出てきています。その一つに町田市では、保育所の利用料金に差が生じている現状を明らかにし、利用者間の公平性、および保育所を利用せずに家庭で保育している保護者の公平性を検討するため委員会を発足しています。

今後の将来を考えますと、望ましいサービスであろうとも、限られた財源のなかではいかに運用していくのか、それを検討することが重要な課題かもしれません。

表1出典)筆者作成

表2出典)町田市(2012)「保育料等の在り方検討委員会報告書」をもとに筆者作成

甲南大学経済学部教授/博士「医学」博士「国際公共政策」

専門:財政学「共創」を目指しサービスという受益の裏にある財政負担. それをどう捉えるのか. 現場に赴き, 公的個票データを用い実証的に検証していく【略歴】大阪大学 博士「医学」博士「国際公共政策」内閣府「政府税制調査会」国土交通省「都道府県構想策定マニュアル検討委員会」総務省「公営企業の経営健全化等に関す​る調査研究会」大阪府「高齢者保健福祉計画推進審議会」委員を多数歴任【著書】『保健・医療・介護における財源と給付の経済学』『税と社会保障負担の経済分析』『雇用と結婚・出産・子育て支援 の経済学』『Tax and Social Security Policy Analysis in Japan』

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