オスロは2019年に車なし、2030年に化石燃料フリーの街を実現できるか?

オスロ市を変革させる新市議会 Photo:Asaki Abumi

9月の統一地方選挙の結果をうけて、新しいオスロ市議会が構成される。オスロ市はこれまで中道右派保守主義政権の保守党(H)が1997年から18年間にも渡り、首都の市政をおさめてきた。中道左派 社会民主主義政権の労働党(Ap)が、緑の環境党(MDG)と左派社会党(SV)と連立を組むことで、オスロは大きな変革期を迎えることとなる。

19日の記者会見では、新オスロ市議会が目標とする計画目標が発表された。さまざまな側面で改革がおこなわれるが、注目を集めたのは環境対策と教育・福祉制度だ。

政治経験ゼロの女性が、緑の改革を推し進める

ヌイェン・ベルグ氏 Photo:Asaki Abumi
ヌイェン・ベルグ氏 Photo:Asaki Abumi

小規模で無名に近かった緑の環境党が、地方選挙で異例の勝利を収めた理由は、市民の環境問題への関心の高さだ。「現首相のいる保守党政権は、どうしてこんなにも産業重視の"灰色"政策なのだ?」と、石油産業に背を向け、自然と環境問題を重視する"緑色"政策の野党が支持を伸ばした。

緑の環境党の第一候補者であるラン・マリエ・ヌイェン・ベルグ氏は、「28歳・女性・政治家としての経験はほぼゼロ」という異色の経歴の持ち主だ。今後オスロ市議会で緑政策を率先して進めていく、緑のリーダーとなる。

オスロを車と大気汚染ガスのない「緑の街」に

世界でモデルとされるような欧州一の環境に優しい街を目指すことが、新たな市議会リーダーたちの目標だ。

  • 2019年までにオスロ中心地から一般自動車を撤退
  • 2020年までにオスロの大気汚染ガスの排出量を半分に減らす
  • 2022年までに窒素酸化物の排出量を60%減らす
  • 2030年までに化石燃料フリーに(95%減らす)
  • 60キロメートルに及ぶ自転車道とカーフリー道路の整備
  • 電気自転車の増加と補助制度の推進

オスロは電気「自動車」の優れた導入事例と世界的に評価されているが、今後は電気「自転車」の街になるかもしれない。

「自動車=喫煙」と同レベルの「悪」となる

ノルウェーでは屋内での喫煙が法律で禁止されている。そのことをふまえ、「屋内でタバコを吸うことに、私たちは居心地の悪さを感じますよね。将来、自動車の運転も、同じように違和感を感じるものとなるでしょう。地球温暖化の問題を後世に押し付けるのではなく、私たちの時代で解決しましょう」と、ヌイェン・ベルグ氏は笑顔で意気込みを語った

教育制度をさらに強化、弱者には特別サポートを

教育・福祉制度に熱い新オスロ市長 Photo:Asaki Abumi
教育・福祉制度に熱い新オスロ市長 Photo:Asaki Abumi

左派社会党のマリアンネ・ボルゲン氏は、21日に公式発表される市議会メンバーで、新たなオスロ市長になることが確実視されている。教育現場や福祉制度に積極的な政党であることから、子どもと老人に優しい目標を掲げる。

  • 教員増加
  • いじめ対策の強化
  • 外国人生徒に対する受け入れ対策の全国調査
  • ノルウェー語が十分に話せない幼稚園の外国人スタッフへの語学教育
  • 夜間・週末オープンの幼稚園の推進
  • 女子生徒のための自己防衛(セルフディフェンス)クラスの提供
  • 貧困層の多い地域では、放課後の小学校1~4年生の託児施設を無料化
  • 高校で落第しかけている生徒のサポート
  • 野菜と果物の多い健康的な学校給食
  • 子どもは文化行事施設への入場料を無料に
  • 学校での国際テストは、義務ではなく生徒の参加意思を尊重
  • 幼稚園での成績評価を無しに
  • 競争激化を避けるために、民間ではなく国営の幼稚園を優先

競争を好まず、テストの少ない「ゆとり」教育を好む傾向は、ノルウェーならではといえる。

オスロで動物警察ができる!?

人間の福祉制度の充実だけではなく、ノルウェーには「動物福祉」という一面もある。オスロで初の動物警察の導入も掲げられており、動物虐待問題に歯止めをかける狙いだ。

現政権からの反発が課題

ほかにも、様々な画期的な政策目標が挙げられているが、新市議会には今後の課題も多い。実現できれば推進派にとっては夢のようだが、緑政策で指摘されやすい不安点は経済面だ。同時に大きな壁となるのは、保守系の現政権である保守党と進歩党からの抵抗だ。特に、大気汚染を悪化させる車が走る「高速道路E18号線」に、これ以上の予算と時間をつぎ込みたくない新市議会の方針は、現政権の体制と真っ向から対立することとなる。

Photo&Text:Asaki Abumi