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コロナ禍で気になるアメリカ入国のESTAやビザ滞在。在米弁護士に聞いた

安部かすみニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者
(写真:GYRO PHOTOGRAPHY/アフロイメージマート)

COVID-19(新型コロナウイルス感染症)の感染拡大阻止のため、アメリカはいまだ中国とヨーロッパからの外国人の入国を制限している状態だが、日本とはずっと行き来ができている状態だ。(*到着後、14日間の自己隔離が必要)

本数は減少したが、日米間を繋ぐ飛行機の直行便も定期運航している。90日以内の観光・商用目的でビザ(査証)なしでアメリカを訪問する人(日本を含む一部の国籍保持者)に必要なESTA(エスタ=電子渡航認証システム)の申請も行える状態だ。

一方、非移民ビザと移民ビザ(グリーンカード)の面接については、3月より一時的に停止したままだ。日本を含む各国のアメリカ大使館・領事館で面接がいつ再開されるかは、いまだ不透明な状況となったまま。

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  • 3月19日からアメリカ大使館・領事館での面接(新規)が無期限で中止になっている。

アメリカでビザで働いている人やESTAで行き来することが多い人は、コロナ禍で不安に思っていることだろう。

先日ジェトロ(JETRO、日本貿易振興機構)が、在米の弁護士を講師に迎えてウェビナーを開催した。興味深いポイントが触れられていたので、ここでいくつか抜粋して紹介したい。

ESTAで延長滞在が可能に

Q. ESTAで入国しましたが、このパンデミックの中でも90日以内に出国しなければならないでしょうか?

A: ESTAで入国すると通常は90日で期限がきますが、それなりの理由があれば最長で60日間の延長が認められています。「理由」については、例えば母国でもコロナの感染が拡大しており、母国に戻るのが安全ではないというような差し迫った理由でなくとも、柔軟に対応されています。一度の申請で30日の延長が可能です。延長は2回まで認められているので、最長で150日間滞在が可能になっています。(RBLパートナーズPLLC、ボアズ麗奈弁護士)

ボアズ麗奈弁護士(写真は本人提供)
ボアズ麗奈弁護士(写真は本人提供)

移民受け入れを一部停止する大統領令について

Q. トランプ大統領は、移民の受け入れを一部停止する大統領令を発令していますが、今後どのような影響を及ぼしますか?

A: 今回の大統領令は、アメリカ国外から移民ビザ(グリーンカード)を申請する外国人の受け入れを60日間停止するものです。移民の受け入れ停止は過去に行われたことがなく、今回が初めてです。9.11同時多発テロのときもこういった停止措置はありませんでした。そのことからも、非常に新しい大統領令と言えます。

非移民ビザへの影響は、今のところはっきりとはわかりません。大統領令では、非移民ビザの手続き方法に関しても見直すよう指示されており、国務省や移民局で検討がなされていると思われます。何らかの制限がスタートするのでしょうが、まったく非移民ビザを受け入れなくなるといった極端な方向へは進まないと思っています。(RBLパートナーズPLLC、ボアズ麗奈弁護士)

I-94フォームと延長滞在について

I-94フォームとは?

アメリカの入国審査でパスポートに押されるスタンプと共に電子的に管理される滞在許可証(ビザは通行手形であるのに対し、I-94は滞在期間をコントロールする書類)。訪問者は書かれた期日までにアメリカを出国する義務があり、就労ビザ保持者が延長申請をせずにこの期日を超えると不法滞在になる。

Q. 現在出国しづらい状況が続いていますが、I-94に書かれている出国期日が迫ってきました。どうしたらよいのでしょうか?

山本真理弁護士(写真は本人提供)
山本真理弁護士(写真は本人提供)

A: 通常はI-94の期日を超えて滞在し続けると不法滞在になります。しかし、パンデミック下では期日までに出国できない状況が多発しているため、I-94に記載された期限前に延長申請を出せば、その期限から240日の就労と滞在が合法的に認められるような措置が取られています。本人ではなく雇用者が期限までに延長申請を出すことが重要です。

また持っているビザがH1で解雇されてしまった場合、解雇日から60日以内に新しい雇用者を見つけて新しい雇用者がH1を申請した場合、申請を出した日をもって新しい雇用者に移籍できます。もちろんそれまでは就労できませんが、アメリカに滞在することは可能です。OPT(オプショナル・プラクティカル・トレーニング)で働いていて解雇された場合、即時卒業したアメリカの学校の学生課に通知をする必要がありますので、ご注意ください。(バーンズ&ソーンバーグ法律事務所、山本真理弁護士)

この記事はジェトロ主催のウェビナー「新型コロナウイルス感染拡大下でのビザ問題-最新情報と今後の見通し-」(講師:ボアズ麗奈弁護士)と「新型コロナ感染拡大下での事業運営とは」(講師:山本真理弁護士)から抜粋し、補足してもらったものをまとめたものです。個人の法的助言として依拠するものではありません。情報は2020年5月現在のもので、法律改正によって変更される場合があります。

(Text by Kasumi Abe) 無断転載禁止

ニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者

米国務省外国記者組織所属のジャーナリスト。雑誌、ラジオ、テレビ、オンラインメディアを通し、米最新事情やトレンドを「現地発」で届けている。日本の出版社で雑誌編集者、有名アーティストのインタビュアー、ガイドブック編集長を経て、2002年活動拠点をN.Y.に移す。N.Y.の出版社でシニアエディターとして街ネタ、トレンド、環境・社会問題を取材。日米で計13年半の正社員編集者・記者経験を経て、2014年アメリカで独立。著書「NYのクリエイティブ地区ブルックリンへ」イカロス出版。福岡県生まれ

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