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アメリカ国務省「海外旅行せぬよう」勧告 最高レベル4に(日本からは渡航できる?)

安部かすみニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者
ニューヨークのJFK国際空港で(3月13日)(写真:ロイター/アフロ)

アメリカでは、現地時間の今日(3月19日)が春の始まり。

一部の学校で早めの春休みが始まっている。しかしCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)騒動の中、若者がマイアミのビーチに大挙して押し寄せるなど問題になっていた。その後ビーチもバーも閉鎖。人がまったくいなくなったビーチの光景もまた異様だ。

大学生に限らず、春休み中の海外旅行を計画していた人も多いことだろう。

しかし、新型コロナウイルスの感染拡大により19日、アメリカの国務省は、海外渡航をせぬよう促す警告をレベル3から最高レベルの4に引き上げた。これにより渡航の中止(すでに滞在している場合は退避)をアメリカ市民に勧告した。

新型コロナ騒動以前からアメリカでは、渡航しないように勧告しているレベル4の国がいくつかある。シリア、イラン、イエメン、北朝鮮の4ヵ国だ。しかし新型コロナウイルス騒動により国際渡航の旅程が乱され、アメリカ国外に無期限に留まることを強いられる可能性も出てきたため、渡航先がどの国であれ、国外に無期限に留まる準備がない限り「渡航しない」、すでに国外に出ている場合は「国内に戻る」、もしくは国外滞在を今後も予定している場合は「国境を越えての渡航をしない」ことが勧告された。

もちろんこれは禁止や命令ではないから、勧告を無視してどこの国に行こうと個人の自由なのだが、ここにきて突然の国境閉鎖(ペルー、エクアドル、ヨルダン、モロッコなど)や国際線フライトの運航中止などにより「アメリカに帰国できない市民」が続出しているから厄介なのだ。

ペルーからアメリカに戻れなくなった人々

エル・パソ・タイムス紙が報じたところによると、テキサス在住の医師、マックス・ペラルタ(Max Peralta)さんは春休みを利用し、故郷ペルーに娘2人を連れて15日から帰郷していた。

15日、ペルーのマルティン・ビスカラ大統領が、ウイルスの感染拡大防止のため国境を閉鎖すると発表。すべての国際線フライトが運航停止となった。ペラルタさん家族がペルーに到着した同じ日のことだ。そして本来なら20日にアメリカに帰国予定だったが、帰国の見通しは立っていない。同紙によると、ペルーにはほかに何千人もの旅行者が立ち往生しているという。

アメリカの国務省のスポークスマンの談話では「アメリカ市民の安全面よりも優先順位が高いものはない」としながら、同紙は「今回のケースのように国外に取り残されたアメリカ市民を国が避難させるかどうかは明らかではない」と報じている。これはおそらく、チャーター機などによる避難救助などを意味しているのだろう。

トランプ大統領は19日の記者会見でこの件について記者団に質問をされ「アメリカ市民が帰国できるよう、各国当局と話し合いを進めている」と語った。

NY州の感染者4152人、死者29人

アメリカは、ニューヨーク州やワシントン州などで感染者数や死者が日に日に増えている。感染者数全米最多のニューヨーク州では19日現在、患者数4152人、死者29人だ。

州では、患者数の爆発的な増加による医療崩壊を阻止するため 「フラッテン・ザ・カーブ」(カーブを平にする)戦略が取られている。

まだ外出禁止令などは出ていないが、公立学校や図書館、バー、ブロードウェイ、博物館や美術館、ジムなどがクローズし、レストランも持ち帰りやデリバリーに限り認められている。デパートやリテール店も閉店しているところが多い。職場では在宅勤務が奨励されており、19日より職場では通常の人数の25%しか働けなくなった。

もはや外国へ旅行、どころではない状況だ。とにかく「自宅待機」(Stay Home)が叫ばれている。

日本からは渡航できる?

日本からビジネスや観光、留学によるアメリカへの渡航は、今のところ禁止になっていない。しかし、日本人観光客も多く滞在するマンハッタンのホテル、ニューヨーク・ヒルトン・ミッドタウンでは18日、20日から2ヵ月間クローズすると突然発表があった。つまり予約済みであっても泊まれない。

(日本からの渡航者にもアメリカ到着後、以前は2週間、今は無期限の室内待機が奨励されている。滞在先のホテルがクローズしたら?ニューヨークには日本人が経営する民宿も多数ある。コロナ騒動で万が一宿泊先に困った場合は利用してほしい)

ホテルだけではない。先述のように航空会社の国際線フライトもクルーズ船も相次いで運航中止を発表している。

またアメリカでのビジネスや留学に必要な非移民ビザも18日、大きな変更の発表があった。

日本を含む各国のアメリカ大使館・領事館では、翌19日から館内での面接(新規)が無期限で中止になった。今後の面接予約もすべて取り消された。(例外:郵送で手続きができる領事との面接が必要でない種類のビザ、同じ種類のビザの更新、追加書類を提出するだけのケース、アメリカ渡航が生死にかかわる緊急事態など。またESTAは引き続きオンライン上で申請できる)

このように、世界は新型コロナウイルスのパンデミックにより大きく揺れており、中止や延期、閉鎖が突然発表されるなど、情勢が刻一刻と変わっている。筆者も本来ならば今ごろは、18年ぶりに日本の桜を見ていたはずだったが、旅行はしばらくおあずけだ。

渡航先で感染した、帰国できなくなったなど、思わぬトラブルに巻き込まれないよう、今は家の中でひたすら辛抱の時なのだろう。

(Text by Kasumi Abe)  無断転載禁止

ニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者

米国務省外国記者組織所属のジャーナリスト。雑誌、ラジオ、テレビ、オンラインメディアを通し、米最新事情やトレンドを「現地発」で届けている。日本の出版社で雑誌編集者、有名アーティストのインタビュアー、ガイドブック編集長を経て、2002年活動拠点をN.Y.に移す。N.Y.の出版社でシニアエディターとして街ネタ、トレンド、環境・社会問題を取材。日米で計13年半の正社員編集者・記者経験を経て、2014年アメリカで独立。著書「NYのクリエイティブ地区ブルックリンへ」イカロス出版。福岡県生まれ

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