Yahoo!ニュース

新型コロナで初の死者も専門家により封じ込めに自信 「パニックになることは何もない」トランプ大統領

安部かすみニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者
(写真:ロイター/アフロ)

アメリカ国内でCOVID-19(新型コロナウイルス)の感染による初の死者が出たことを受け、トランプ大統領は2月29日、ホワイトハウスで記者会見を開いた。

記者会見の冒頭で、タリバンとアフガン和平合意に至ったことについてまず触れた上で、新型肺炎による死亡者を弔った。

記者会見で大統領は、死亡した患者について「リクスの高かった(基礎疾患のある)50代後半の素晴らしい女性だった」と表現したが、女性というのは大統領の勘違いだったようだ。CDC(アメリカ疾病管理予防センター)の発表では、亡くなったのは、ワシントン州シアトル近郊のカークランド市にある病院に入院していた男性患者とされている。

CDCによると、亡くなった男性に最近の渡航歴はなく、またウイルス感染者と濃厚接触した事実もないという。専門家は国内で感染ルート不明の症例が増えていると警告している。

また記者会見では、大統領より「国内の感染者は22人。そのうち4人は病状が悪く、15人が治療で回復方向に向かっている」との発表もあった。ニューヨークタイムズ紙の報道では、国内感染者は現在のところ70人とされているが、武漢での感染者3人とダイヤモンド・プリンセスでの感染者44人など国外での感染ケースは含まず、あくまでも「国内での感染者」として発表したようだ。

アメリカ国内の現在の感染者は70人

ニューヨークタイムズ紙による、現在の症例数がわかる中国近辺および世界のマップ(アップデート中)

Trump holds coronavirus press conference

大統領によるそのほかの主な発表

  • 基礎疾患のない健康な人がウイルス感染した場合は、適切な治療を受けることで回復する。
  • 米政権はウイルスが大流行するかなり初期段階で、大胆な政策に踏み込んだ。例えば1月31日、水際対策としてこれまでの政権で前例のない渡航制限を中国との間に設けた。これらが功を奏し、国内感染の広がりを抑えることができている。
  • 中国では(感染の広がり)が減っており、よく健闘している。
  • アメリカはイランを支援する準備がある。
  • アメリカ国内には需要に応じて、4,300万枚のマスクの供給準備があり、今後もさらに製造、入手可能の予定。(その後、マイク・ペンス副大統領が「医療関係者や感染の疑いがある人以外は、マスク着用の必要性はまったくない」とフォローし釘を刺した)
  • 我々は感染状況の大小にかかわらず、どんな状況になろうとも、(医療や公衆衛生の)プロフェッショナルな準備(タスクフォース)が整っている。
  • (国内の感染拡大はあり得ると認めつつ)パニックになる必要はまったくない。なぜなら、プロフェッショナルな方法で封じ込めができるからだ。(ニューヨーク株式市場が2008年以来続落しており、国民を落ち着かせる意図だろうか?)

集団感染か?ワシントン州では緊急事態宣言

ワシントン州の保健当局では、シアトル近郊のカークランド市にある介護施設「ライフケアセンター・オブ・カークランド」で働いている介護スタッフと入居中の人の計2人がウイルス検査で陽性反応となり、入院したことも発表された。この施設には288人のスタッフと入居者がおり、50人以上に症状が見られ始めたとの情報もある。これを受け、同州のジェイ・インスリー知事は、緊急事態を宣言している。この宣言により、必要に応じてワシントンのナショナルガード(州兵)の動員が許可されるという。

中国に続く新たな渡航制限を発表

記者会見では、新型コロナウイルス封じ込めのための専門家チーム「タスクフォース」の責任者に任命されたマイク・ペンス副大統領が、新たな海外への渡航制限も発表した。

  • アメリカ市民のイランへの渡航禁止に加え、新たに過去14日間にイランを訪問した外国人の入国を禁止。
  • イタリアと韓国、それぞれ一部地域への、アメリカ市民の渡航の取り止めを勧告(最高値のレベル4)。両国からの入国者は、空港などでスクリーニング(検査)が強化される予定。

今回、韓国を始め日本からの入国禁止措置についての発表はなかったが、日本国内で今後感染数が増えていくとなると、アメリカ市民の日本への渡航制限、さらに日本からアメリカへの入国にも支障が出てくる可能性がある。当面は注視が必要だ。

(Text by Kasumi Abe)  無断転載禁止

ニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者

米国務省外国記者組織所属のジャーナリスト。雑誌、ラジオ、テレビ、オンラインメディアを通し、米最新事情やトレンドを「現地発」で届けている。日本の出版社で雑誌編集者、有名アーティストのインタビュアー、ガイドブック編集長を経て、2002年活動拠点をN.Y.に移す。N.Y.の出版社でシニアエディターとして街ネタ、トレンド、環境・社会問題を取材。日米で計13年半の正社員編集者・記者経験を経て、2014年アメリカで独立。著書「NYのクリエイティブ地区ブルックリンへ」イカロス出版。福岡県生まれ

安部かすみの最近の記事