危険因子を知っておこう。腎機能を見極めるコツ(専門家が監修)
ヒトの寿命を決める重要な臓器、腎臓。同じく重要な肝臓と違い、一度失われた機能は容易には戻らないため、腎臓の状態を見極め、危険因子をしっかり押さえておきたい。腎機能を見極めるコツを知り、日々のケアを欠かさずに。[取材協力/川村哲也(東京慈恵会医科大学客員教授)、田畑尚吾(田畑クリニック院長)]
教えてくれた人:
川村哲也さん(かわむら・てつや)/腎臓専門医。東京慈恵会医科大学客員教授、同腎臓・高血圧内科客員診療医長。腎臓病の臨床と研究に長年携わるほか、患者向け「腎臓病教室」を開くなど腎臓病の正しい知識の啓蒙に努める。医学博士。 田畑尚吾さん(たばた•しょうご)/総合内科専門医。田畑クリニック院長。北里研究所病院、慶應義塾大学病院、東京オリンピック•パラリンピック選手村診療所内科チーフドクターなどを経て現職。糖尿病専門医、総合内科専門医、スポーツ内科医。
アスリートは血清シスタチンCで腎機能を判定する
腎機能チェックには一般的に血中クレアチニン値が使われる。クレアチニンは腎臓から排泄されるが、腎機能が落ちて排泄が滞るとクレアチニン値は上がる。この値に年齢と性別を加味し、腎機能の指標となるeGFR(推定糸球体濾過量)を弾く。60未満で慢性腎臓病が疑われる。 でも、腎機能は格別悪くないのに、クレアチニン値から求めたeGFRが低くなることもある。習慣的にトレーニングを行い、同性同世代の人より筋肉量が多いタイプだ。 クレアチニンは筋肉のエネルギー源。筋肉量が多いほど、クレアチニンの血中への放出量も増える。筋肉量が同性同世代の平均値を大きく上回ると、腎臓からのクレアチニン排出はスムーズでも、血中のクレアチニン値が高めに出ることがある。 「そういうときは、筋肉量に左右されず、eGFRが計算できる血清シスタチンCを調べるとより正確に腎機能が評価できます」(田畑先生) 逆に、高齢者で同性同世代よりも筋肉量が少なすぎると、筋肉から放出されるクレアチニンも低下。腎機能が衰えてクレアチニンの排泄が滞っていても、クレアチニン値から求めるeGFRでは問題ナシと判断されてしまう恐れもある。この場合も、血清シスタチンCが指標となる。腎臓内科などのクリニックで調べよう。