「逆回転クランク」って何? バイクのエンジンは何がどっちに回っている?
車体右側から見て「時計回り」が主流だが……
バイクが走るためのパワーを生むために、エンジンの中では爆発エネルギーでピストンが激しく上下に動いているイメージがあります。しかしピストンの上下運動を「回転運動」に変換しなければタイヤを回すことができません。そのための部品がクランクシャフトです。 【画像】「逆回転クランク」の画像をもっと見る(11枚)
そのクランクシャフトは、どちらの方向に回転しているのでしょうか? じつは市販バイクの多くは、昔から排気量や気筒数、並列やV型などエンジン形式に関わらず、クランクの回転軸が車体の前後方向に対して90度に配置された「横置きエンジン」の場合は、車体を右側から見た時に右回転(時計回り)が主流です。 そして主流がゆえに、とくにクランクシャフトの回転方向に対する呼び方は無かったのですが、近年は判別するために「正回転クランク」と呼ぶ場合があります。 近年では、車体の右側から見るとクランクシャフトが左回転(反時計回り)するエンジンが登場しています。そのため「逆回転クランク」と呼ばれ、高いスポーツ性を狙うバイクの中で注目されています。かなりマニアックではありますが……。
「逆回転クランク」のメリットは?
クランクシャフトは、バイクの構成部品の中ではかなりの重量があり、それが高速で回転します。そのため加速する時にスロットルを開けてエンジンの回転(クランクシャフトの回転)が上昇する時は、相応に「反力」が発生します。重いクランクシャフトが回転数を上げようとすると、車体に対して回転方向と逆の力が生じるワケです。
たとえばパワーのあるバイクでスロットルを大きく開けると、前輪が浮き上がってウイリーします。これは後輪から路面に伝わるトルクの大きさと後輪のグリップ力によるものですが、正回転クランクだと、その反力も手伝っていっそうウイリーしやすくなります。 ウイリーはエクストリームライディングとしては派手でカッコ良いですが、これが速さを競うレースの場合だと、コーナーの立ち上がりで大きくウイリーしたらタイムが落ちてしまいます。 またスロットルを開けた際に前輪荷重が減少するため、立ち上がっていく時に走行ラインがアウト側に膨らんでいく「アンダーステア」にもなりやすく、やはり狙ったラインを走行できないためタイムが落ち、ライバルと競り合う際にも不利になります。 しかし逆回転クランクなら、スロットルを開けると前輪を路面に押し付ける方向の力が働くので、ウイリーやアンダーステアを抑制することができます。