日銀・黒田総裁会見3月15日(全文1)景気は緩やかに拡大
「2%にこだわるのは新聞記者と日本銀行ぐらい」との麻生氏の発言をどう思うか
朝日新聞:2点目なんですが、麻生財務大臣が今朝の記者会見で2%目標に触れて、2%にこだわっているのは新聞記者と日本銀行ぐらいなものだと、独特の言い回しをされていて、その上であまりこだわり過ぎると、いろいろおかしな点が出てくるというような発言をされていて、政権の中枢からこういった発言が出ていることへの受け止めをお聞かせください。 黒田:麻生大臣のご発言について具体的にコメントするというのは差し控えたいと思いますけれども、その上で申し上げますと、この2%の物価安定の目標というものは、日本銀行の政策委員会が自ら決定したものでありまして、物価の安定という日本銀行の使命を果たすためには、これを実現していくことが必要だと考えております。 もちろんかねてから申し上げていますとおり、物価が2%に上がりさえすれば良いというわけではありませんで、日本銀行は企業収益、あるいは雇用賃金が増加して投資や消費が活発化する下で、物価も緩やかに上昇していくという経済を目指しているわけであります。また物価が原油価格の動きを含めてさまざまな要因によって変動しますし、長期にわたる低成長やデフレの経験などを踏まえますと、物価上昇率が高まるには相応の時間が掛かる可能性があることも念頭に置く必要があると思っております。 さらには金融緩和が市場機能、金融仲介機能に与える影響なども考慮する必要があると思っておりまして、日本銀行としてはこうした経済・物価・金融情勢を総合的に勘案した上で、物価安定の目標の実現を目指していくという方針に変わりはございません。
今春闘の状況が景気、物価にどう影響すると見ているのか
テレビ東京:テレビ東京の大江と申します、よろしくお願いいたします。前回総裁会見で、総裁が今年どんなことに注目なさっているのかというのを伺ったんですけれども、そのときのお答えが、春闘でどのような賃上げが実現するかということでした。そして実際に春闘の動きどうなっているかといいますと、自動車、電機の主力企業で賃上げが去年を下回っているという状況です。今後の景気、それから物価にどういうふうに影響するとみていらっしゃるでしょうか。2%の物価目標というのはまだまだ遠いなというふうにご覧になっているんでしょうか。それがまず1問です。 黒田:春闘につきましては、一昨日のいわゆる集中回答というのが出ましたけれども、中小企業も含めて、まだ現在も労使間で交渉が行われておりまして、全体的な賃金の設定動向というのはまだ見極めが必要な状況でありまして、今の時分で断定的なことは言えないと思いますが、その上で確かに集中回答の状況を見ますと、まずは多くの企業で6年連続のベースアップが見込まれているということ。それからこの先ボーナスや諸手当など、多様な方法による年収ベースの賃上げが進められるものというふうに考えております。 先ほど申し上げたように強力な金融緩和によって企業収益の増加、あるいは賃金の上昇を伴いながら物価上昇率が緩やかに高まっていくという好循環をつくり出すことを目指しておりますので、ベースアップの定着、あるいは賃上げ手法の多様化といったことは、こうした経済の好循環の実現を後押しするのではないかというふうに考えております。 いずれにしても今後、より深刻な人手不足に直面している中小企業の状況も明らかになってくるわけでありまして、日本銀行としてもこうした動向には十分注目をしておりますし、良好な企業収益、あるいは労働需給の引き締まり、消費者物価の緩やかな上昇といった経済環境を生かしながら労使双方において前向きな取り組みが広がって、賃金と物価の好循環が実現していくということを強く期待しています。 【書き起こし】日銀・黒田総裁会見3月15日 全文2へ続く