日銀・黒田総裁会見3月15日(全文1)景気は緩やかに拡大
景気の現状と先行きをどう見ているのか
産経新聞:ありがとうございます。続いて幹事から2問お願いします。まず公表文にもございましたが世界経済の減速感が強まっています。内閣府の景気動向指数は、後退局面入りすら示唆している状況です。景気の現状と先行きについて、あらためてご所見をお願いします。 黒田:今回、景気動向指数が大幅に低下したことについては、この1月の生産減少により、指数を構成する生産関連の指標が下落したことが大きく影響していると理解しております。日本銀行としても輸出・生産面に海外経済の減速の影響が見られることは認識しておりまして、この点は本日の公表文でも示したとおりであります。 一方、国内需要については堅調な動きが続いております。企業収益は総じて良好な水準を維持する下で、設備投資は増加傾向を続けているほか、個人消費も雇用・所得環境の着実な改善を背景に緩やかに増加しているとみております。このように、この所得から支出への前向きの循環が働くという景気拡大の基本的なメカニズムに変化は生じておりません。また公共投資も高めの水準を維持しております。 こうした点を踏まえまして本日の金融政策決定会合では、わが国の景気の現状について緩やかに拡大しているという判断を維持しました。先行きについては国内需要が増加基調をたどるとみられるほか、輸出も当面、弱めの動きとなるものの基調としては緩やかに増加していくと考えられます。このため、わが国経済は当面、海外経済減速の影響を受けるものの緩やかな拡大を続けるというふうに判断したところであります。
追加緩和の是非についてどう考えているのか
産経新聞:続いてですが、FRBが利上げを中断したのに続きまして、ECBも利上げを来年以降に先送りし、各国の中央銀行で緩和的な動きが強まっています。日銀の中でも追加緩和を求める声が出ている状況ですが、この是非についてどうお考えでしょうか。 黒田:日本銀行も含めて、どこの国の中央銀行もその国の経済・物価、その安定を実現することを目的としておりますので、それぞれの置かれた経済状況に応じて、最も適切な政策運営に努めているというふうに考えております。その上でわが国の経済について見ますと、先ほど来申し上げているとおり、確かに輸出や生産面に海外経済の減速の影響が見られるということはそのとおりですが、他方で内需は堅調を続けておりますし、先行きも緩やかな拡大を続けるという、中心的な見通しは維持しております。 物価面でも、物価安定の目標の実現にはなお時間を要すると見込まれますが、マクロ的な需給ギャップがプラスの状況が続く下で、引き続きこの2%に向けたモメンタムは維持されているのではないかというふうに考えております。政策委員の個々の意見についてコメントは差し控えますけれども、本日の決定会合ではこうした経済・物価情勢を踏まえて、大方の委員がこれまでどおり現在の強力な金融緩和を粘り強く続けていくことが最も適切だというふうに判断したところであります。 産経新聞:各社お願いします。 黒田:どうぞ。