日銀・黒田総裁会見3月15日(全文1)景気は緩やかに拡大
日銀の黒田東彦総裁は、金融政策決定会合後の15日午後、記者会見を行った。 ※【**** 00:35:30】などと記した部分は、判別できなかった箇所ですので、ご了承ください。タイムレコードは、「日銀・黒田総裁が決定会合後に定例会見(2019年3月15日)」に対応しております。 【動画】日銀・黒田総裁が決定会合後に定例会見(2019年3月15日) ◇ ◇
決定会合についての説明
産経新聞:幹事の産経新聞です。まずは本日の結果についてお願いします。 黒田:本日の決定会合では長短金利操作、いわゆるイールドカーブ・コントロールの下でこれまでの金融市場調節方針を維持することを賛成多数で決定しました。すなわち短期金利について日本銀行当座預金のうち政策金利残高にマイナス0.1%のマイナス金利を適用するとともに、長期金利については10年物国債金利が0%程度で推移するよう長期国債の買い入れを行います。 その際、長短金利は経済・物価情勢等に応じて上下にある程度変動しうるものとし、買い入れ額については保有残高の増加額、年間約80兆円をめどとしつつ、弾力的な買い入れを実施します。また長期国債以外の資産の買い入れに関しては、これまでの買い入れ方針を継続することを全員一致で決定しました。ETFおよびJ-REITの買い入れについては年間約6兆円、年間約900億円という保有残高の増加ペースを維持するとともに、資産価格のプレミアムへの働き掛けを適切に行う観点から、市場の状況に応じて買い入れ額は上下に変動しうるとしています。 わが国の景気についてですが、海外経済の減速の動きが足元の輸出や生産に影響を与えていますが、家計、企業の両部門において引き続き所得から支出への前向きの循環は働いていると考えています。従って景気の総括判断は、輸出・生産面に海外経済の減速の影響が見られるものの、所得から支出への前向きの循環メカニズムが働く下で緩やかに拡大しているとしました。 やや詳しく申し上げますと、海外経済は減速の動きが見られますが、総じて見れば緩やかに成長しています。そうした下で輸出は、足元では弱めの動きとなっています。国内需要の面では企業収益や業況感が総じて良好な水準を維持する下で、設備投資は増加傾向を続けています。個人消費は雇用・所得環境の着実な改善を背景に、振れを伴いながらも緩やかに増加しています。この間、住宅投資は横ばい圏内で推移しています。公共投資も高めの水準を維持しつつ、横ばい圏内で推移しています。 以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は足元では弱めの動きとなっていますが、緩やかな増加基調にあります。労働需給は着実な引き締まりを続けています。また金融環境については極めて緩和した状態にあります。 先行きについては、わが国経済は当面、海外経済の減速の影響を受けるものの緩やかに拡大を続けるとみられます。国内需要は極めて緩和的な金融環境や、政府支出による下支えなどを背景に企業、家計の両部門において所得から支出への前向きの循環メカニズムが持続する下で増加基調をたどると考えられます。輸出も当面、弱めの動きとなるものの海外経済は総じて見れば緩やかに成長していくことを背景に、基調としては緩やかに増加していくとみられます。 物価面では、生鮮食品を除く消費者物価の前年比は0%台後半となっています。予想物価上昇率は横ばい圏内で推移しています。先行きについては消費者物価の前年比はマクロ的な需給ギャップがプラスの状態を続けることや、中長期的な予想物価上昇率が高まることなどを背景に2%に向けて徐々に上昇率を高めていくと考えられます。 リスク要因としては米国のマクロ政策運営や、それが国際金融市場に及ぼす影響、保護主義的な動きの帰趨とその影響、それらも含めた新興国・資源国経済の動向、英国のEU離脱交渉の展開やその影響、地政学的リスクなどが挙げられます。 日本銀行は2%の物価安定の目標の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、長短金利操作付き量的・質的金融緩和を継続します。マネタリーベースについては生鮮食品を除く消費者物価指数の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで拡大方針を継続します。政策金利については2019年10月に予定されている消費税率引き上げの影響を含めた経済・物価の不確実性を踏まえ、当分の間、現在の極めて低い長短金利の水準を維持することを想定しています。今後とも金融政策運営の観点から重視すべきリスクの点検を行うとともに、経済・物価・金融情勢を踏まえ、物価安定の目標に向けたモメンタムを維持するため必要な政策の調整を行います。以上です。