ずっとスーパーの言いなりだった…1日600個売れる"豆腐のパフェ"を生み出した「田舎の小さな豆腐店」の逆転劇
■「価格決定権」を取り戻し、好循環が生まれた 平川さんは、入社した時に先代社長である父に言われた言葉をずっと覚えている。 「どんなに苦しくても、値下げしたらいかん」 スーパーからの強い圧力を感じながらも、「値下げだけはしない」と心に決めて、踏ん張り続けた。「10円値上げします」と、今ではスーパーに言い切ることができる。こちらから営業をかけなくても、「佐嘉平川屋の売場を作りたい」と、声がかかる。 「これがブランドの強さだと思う」。平川さんは、しみじみと語る。 ブランド力を高め、店舗と通販のBtoC事業を伸ばしたことで、スーパーに依存せざるを得ない「豆腐店の収益構造」が変わり、強気で値段交渉できる環境が整った。 さらに生産コストが上がっても価格転嫁を恐れずできるようになった。確保した利益をスタッフの賃上げや設備投資に回せるようになった。 平川さんの地道な取り組みが好循環を生み出している。 佐嘉平川屋のブランドを確立してきたことで、価格決定権を取り戻した。平川さんは、こう言い切る。 「人生のファインプレーは、あのタイミングで国土交通省を辞めたこと」 「仕事でのファインプレーは四面楚歌のなか、多額のお金を借りて嬉野店を作ったこと」 ■「こんなに幸せなことはないですよね」 2022年9月、九州新幹線西九州ルートの開通に合わせて、JR武雄温泉駅から歩いて15分ほどの温泉旅館跡地にフラッグシップストアとなる武雄温泉本店をオープンした。 本店の中庭には、源泉掛け流しの足湯を設置。設計やインテリアにこだわった本店は、若かりし日に思い描いた「居心地の良い空間」となった。 店内は連日、国内外から来たお客さんで賑わう。温泉湯豆腐を食べるためだけに、鹿児島から4時間かけて来る常連客もいるという。「食のために人は遠くからでも来る」。嬉野店で感じていた手応えは、本店を開いて確信へと変わった。