南海トラフ地震で想定津波高34m! "日本一危険な町"から激変した高知県黒潮町の現在
「2012年に町の全職員、当時190人ぐらいが防災担当を兼ねることが決まってすぐ、地域でワークショップを開きながら、地域の住民と避難場所や避難ルート、それらが実際どの程度機能しているのかなどの洗い直し、そしてより良い避難場所や避難ルートを模索して、設定していったんです。そうしたワークショップを2ヵ月半の間に町内で200回近くやりました」 さらにこんな対策も。情報防災課担当者が語る。 「津波の到達時間から避難困難区域を割り出し、そこに住んでいる人が安心して避難できるように津波避難タワーを建設していきました。タワーの高さは新想定で出された最高の高さにプラス4mの余裕を持たせた高さに統一しています。 また、既存の避難場所から津波の想定到達時間までにお年寄りの足でも歩いて避難できる距離の円を描いて、どこの避難所からの円にも入らない空白地帯があれば、そこに津波避難タワーを造ることにしました。それで新たに6ヵ所のタワーを増やしました。 なので、理論上はすべての町民が正しい避難行動を取れば、全員安全な場所へ避難できて命が助かるということになっています」 ちなみに、町の津波避難タワーで一番高いのは佐賀地区という場所に建てられた高さ22m、230人収容可能なもの(記事冒頭の写真)。スロープが設けられて、階段での昇り降りが困難な車椅子の人でも上ることができる。ただ、34.4mよりも低いけど、大丈夫なのか? 「大丈夫です。先にも言いましたように、町内で34.4mの津波が到達するのは1ヵ所だけ。その後に発表された、新想定でのこの地域の津波の高さは18m。町では新想定に4mの余裕を持ってタワーを造っていますので、22mあれば最大の津波が来ても命が守れると考えています」(情報防災課担当者) 松本町長が続けて語る。 「さらにこの頃から学校でも避難訓練や防災教育を徹底してやってきました。すると、子供たちが家に帰ってきて、避難訓練や防災の話を家庭でするんですね。それも大きかった。子供が一生懸命訓練を頑張ってやっている中、『ワシは津波が来ても逃げん。死ぬんや!』と堂々と言うことがとても恥ずかしいと、町民の意識が変わっていったんです」 こうした町の雰囲気の変化は現在92歳の女性が町の文化展に出品した短歌に顕著に表れている。松本町長が短歌を見せながら説明してくれた。