南海トラフ地震で想定津波高34m! "日本一危険な町"から激変した高知県黒潮町の現在
「ひとつは34.4mが発表された直後、2012年秋に展示されていたもので『大津波 来たらば共に死んでやる 今日も息が言う 足萎え吾に』というもので意味は、大津波が来たら足の悪い私に息子がいつも言う。『母ちゃん安心せえ。津波が来たら一緒に死んであげるから』というもの。完全に津波への諦めです。 もうひとつは同じ作者が2年後の2014年に作って文化展に出展したものです。 『この命 落しはせぬと 足萎えの 我は行きたり 避難訓練』この意味は、足は衰えても命は落とさないぞ。そのためにも避難訓練に行くんだ。というもの。2年ほどで避難放棄、津波への諦めの気持ちが完全に払拭されているのがわかります」 このふたつの短歌は今、額に入れて町長室に飾られている。 さて、実際に町民にも今回の「巨大地震注意」について聞いてみた。30代の会社員が語る。 「特に、何か変わったとか、不安な気持ちになったとかはなかったですね。普段どおりに過ごしていました。そもそも、あんな注意とか出してもらわなくても、この町で暮らす以上ずっと南海トラフに注意して生活しているわけですから。そんなお上(かみ)から注意されたからといって何も変わらないですよ」 70代の男性もこう語る。 「それが出たからといってなんとも思わんかった。基本地震が起こらんことを祈るしかないんじゃき。来たらしょうがない。もう必死で逃げるしかないんじゃき。もうそういうのは慣れっこ。来たら逃げる。それしかないわな(笑)」 とやはり、備えやとにかく逃げる姿勢は若者からお年寄りまで浸透していることがうかがえた。 ■防災が観光や産業に発展 さらにすごいことに、防災を町の日常にという町長の思いをはるかに通り越し、今や防災が町のウリの「観光名物」となってしまっているというのだ。 きっかけは2016年に完成した、先述の日本最大級高さ22m、230人が避難可能な佐賀地区の津波避難タワー。総額6億円をかけて完成したという見事な津波避難タワーを見てみたいとたくさんの自治体などから見学の申し込みが殺到した。