南海トラフ地震で想定津波高34m! "日本一危険な町"から激変した高知県黒潮町の現在
「自治体や教育機関からの申し込みがだんだん増えてきて、町の情報防災課の通常業務に支障が出るほどになってきたんです。 それならと、黒潮町観光ネットワークという一般社団法人に"防災ツーリズム"として、防災だけでなく町の魅力(ホエールウオッチングやカツオのたたきを食べることなど)もセットにしてPRしてもらったところ、すごく評判が良くて、またまた申し込みが殺到。今では年間2000人ぐらいが海で遊ぶことと防災の取り組みを学ぶことの両方を合わせたツアーで町を訪れています」 さらに、町の産業にも防災が利用されている。 「2012年に日本一危険な町にされてしまったことを逆手に取って、町の新しい産業をつくろうということで、災害時の備蓄品としても利用できる缶詰製造会社、黒潮町缶詰製作所を町の第三セクターとして立ち上げ、缶詰を製造しています。災害が起こったとき、町にはこの会社の缶詰は自然に備蓄されているわけで非常食になるんです。 さらに、避難所の食べ物で問題になるアレルギーにも対応。ここで作られる缶詰は8大アレルゲン不使用で誰もが安心して食べられるものとなっています」(松本町長) この缶詰のマークをよく見ると三角旗の中になんと「34m」の文字が。2012年に発表された津波の高さが書き込まれている。34mは当時町民が恐れていた数字だったが、今はある意味、町の象徴のようになったと思えてくる。また、この缶詰は高知龍馬空港にも高知名物として販売コーナーが設けられていた。売り上げは年間1億円にもなるという。 最後に、あらためて松本町長に話を聞いた。 「日本一津波で危険な町といわれた黒潮町が今では逆に、日本一防災意識が高い町になったと思っています。みんなで一生懸命、どうすればひとりも命を落とさずにできるのかを必死で考え続けて、町民がみんなで情報共有もしてきたわけですから。もしかして今、津波が来ても、一番命が安全な町になっているかもしれませんね」 取材・構成・撮影/ボールルーム