高齢者の食を就労のきっかけに…病気に負けず支援に奔走、名古屋市NPO理事長
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名古屋市北区のNPO法人「ライフステーション・あいち」理事長、中川建彦さん(71)は、数年前からガンや心筋梗塞を患い、ドクターストップを受けながら、若者の就労支援と高齢者の居場所作りに奔走している。世代の垣根をはずし、まちづくりまで踏まえた事業内容は、全国からモデルケースとして見学に訪れるまでに育った。「働けるのもあと1、2年」、「信念」と語る中川さんの奮闘を追った。
58歳で法人立ち上げ
NPO法人は2005年に設立し、柳原通商店街で事務所やカフェ、食堂を運営。障害者向けサービスでは、一般企業へ就職を希望する人に対する訓練や、就職が困難な人への仕事の提供、数人で共同生活を送るグループホームを手がけている。また、地域住民や高齢者が集まるコミュニケーションの場を設け、太極拳教室、訪問介護事業を展開。非常勤を含め、約20人のスタッフが携わっている。 中川さんはそこで全ての事業をとりまとめ、時には現場仕事もする。子供のころから「困った人を助けることで人一倍喜びを得る」性格だと笑う。もともとJRの運転士で、障害者をスキューバダイビングに連れていったり、困窮した同僚にボーナスを全部渡したことも。やがてひとりの力でやることに限界を感じ、退職後、58歳で法人を立ち上げた。 「学校の同窓会で今の仕事の名刺を見せると『あなたらしい』と納得される」。当時から周囲に、「将来は人助けをしたい」と“宣言”していた中川さんらしい第2の人生のスタートだった。
前立腺がん、肝腫瘍、心筋梗塞……相次ぐ体の異変
しかしそのころから、体に異変が相次いだ。前立腺がんや肝腫瘍の摘出。心筋梗塞の持病もあり、心臓に血管を広げる金属も入れた。5、6年前には過労から倒れてしまう。顔色が優れず、ともに法人を支えてきたスタッフの大鹿高弘さん(82)=名古屋市西区=は「(理事長が)話している途中でパタっと倒れてそのまま動かなくなるのではないか」と気が気でなかった。 「もう、続けられないかも」。自身の健康問題も踏まえ、1年前には別の法人に事業を任せようとも考えた。しかし、運営方針がうまくかみ合わず、計画は白紙になった。親族に運営を譲ろうともしたが、手がける事業が多すぎるとうまくいかず、「やはり自分がやるしかない」と腹をくくった。 法人には設立以降、数千万円の私財を投じてきた。「子どもからは、『親父は人のことばかりで、家庭を大事にしない』と言われたこともあった。傷ついたが、もっともだから仕方ない」