高齢者の食を就労のきっかけに…病気に負けず支援に奔走、名古屋市NPO理事長
まちの課題を解決できる流れをつくる
新たな事業にも力を注ぐ。 拠点とする商店街から車を30分ほど走らせたところにある稲沢市。就労支援を受けている若者たちが、ここに点在する約1000平方メートル分の畑を使い、野菜を育てている。土を耕して種をまき、芽が出て育ったら収穫するという一連の流れで、忍耐力を身につけながら仕事の達成感を味わう場を目指している。 この畑で収穫したトマトやナス、ブロッコリーなどの野菜は、食堂やカフェで提供する料理に使われたり、そのまま販売されている。就労支援を受ける若者たちは働くことができ、食堂に集ってくる高齢者は栄養バランスのとれた食事とコミュニケーションを楽しむという循環 ── 。全く性質が違うようにみえる高齢者の居場所づくりと就労支援、さらには商店街活性化というまちの課題をひとつのサイクルの中で解決することを目指し、「ごちゃまぜプロジェクト」と名付けた。 野菜収穫などの作業に携わる就労支援利用者の名古屋市の男性(55)は「中川さんからは、自分のやれることをしていこうとアドバイスを受けた。徐々に仕事のペースを作れるようになっている」と笑みをみせた。 中川さんは「就労支援を受ける人たちが、高齢者のサポート役として活動することで、生きがいを持てるようにしたい。高齢社会で食が問題になっている。栄養のある食事を提供できるよう活動の形を確立したい」と言う。 これまで、1000人以上を就労支援で受け入れたが、実際就職できたのは3割と、現実は厳しい。だが、法人運営としては黒字化し、モデルケースとして、全国から見学者も多数訪れるようになった。 「法人設立当初と比べて、時代は大きく変わっている。その時代の変化に対応できるような人をつくり、仕事をつくり、地域をつくりたい」と中川さんは語る。「自分はあと1年か2年しかもたないかもしれないが、頑張りますよ」。だれかを支えるため、歩みは止めないつもりだ。 (斉藤理/MOTIVA)