井上ひさし文楽を舞台初上演 拝金オヤジが恋したら?
舞台で上演されるのは初めて
井上ひさし文楽を舞台初上演 拝金オヤジが恋したら?THEPAGE大阪(撮影:岡村雅之)
大阪市中央区の国立文楽劇場で23日から「夏休み文楽特別公演」始まった。今回は「金壺親父恋達引(かなつぼおやじこいのたてひき)という、作家井上ひさしが書き下ろした新作文楽で、ラジオやテレビで放送されたものの、舞台で上演されるのは初めて。金と恋模様をめぐる波乱万丈の立体的作品だ。公演は8月9日まで。このほど公開された舞台稽古の模様を取材した。
金を隠した壺を掘り起こして眺めるのが生きがい
「金壺親父恋達引」は井上ひさしがフランスの劇作家モリエールの戯曲「守銭奴」を翻訳し、文楽作品として書き下ろした。1972年(昭和47)度の芸術祭参加作品としてラジオで放送された。その後、テレビでスタジオ収録されて放送されたものの、舞台で上演されるのは初めてだ。 作品は朝の段、昼の段、夜の段で構成。主人公は呉服商の金仲屋(かねなかや)金左衛門(きんざえもん)で、金銭への執着が強い。金を隠した壺をひそかに庭に埋め、掘り起こしてはながめて楽しむのが生きがいというかなりの性癖の持ち主だ。 さらに年甲斐もなく、若い美女との縁談に心ときめかす。この十分にキャラが立っている金左衛門に加えて、大人しいようでけっこう自己を主張するせがれや娘、奉公人らも総動員。金と恋模様で織りなす波乱万丈物語が、金仲屋の1日に圧縮され、スピーディに描かれていく。人間造型と展開力に長じた井上ドラマの面目躍如だ。
登場人物が意外な糸で結ばれ複数の恋模様が同時進行
物語の一部をひもとくと、金左衛門ぞっこんの美女お舟は、金左衛門のせがれ万七と恋仲だった。で、この万七お舟が自立して暮らそうとするが、先立つものがない。 そこで、やむなく高利の金に手を出しかけると、予想外の人物が高利貸しとして現れる。その高利貸しとは、金左衛門だった。想定外の連続に、驚きっぱなしの親子である。 金左衛門の娘お高はというと、有力商人への嫁入り話が舞い込んだものの、すでに金仲屋の番頭行平と相思相愛の仲だという。こちらも一筋縄にはいかない。登場人物たちが意外な糸に結ばれ、複数の恋模様が同時進行。物語がめまぐるしく展開するため、文楽初心者にも見応え十分だ。