なぜWBC王者ドネアは鮮烈ボディショットで4回KO勝利を果たせたのか…再戦気運に井上尚弥は「さすがという言葉しか出ない」
ドネアのセコンドについていた妻のレイチェルさんと、父のドネアシニアさんは「ボディを狙え」と指示を送った。左フックと右ストレートに意識過剰となり、必死にカウンターの一撃だけを狙っているガバリョに対して有効だと判断したのだろう。 3ラウンド。ドネアはロープを背負わせ右のボディストレートをお見舞いした。 そして運命の4ラウンド。右のボディから入り、プレスを強めたドネアは、フィニッシュブローの前に強烈な左のボディフックを一発ガバリョに打ち込んでいた。これがKO決着への布石となった。 「自分を信じること、ハードにトレーニングをすること、それが成果を生んだ。左フックを警戒されていることはわかっていた。上下左右に動いてボディを狙った。序盤から狙っていたが、やっと左ボディが決まった」 “伝家の宝刀”の左フックを温存したままノーモーションの右をコンパクトに当て、おまけに上下に揺さぶって最後はボディでガバリョを仕留めた。 経験と戦略。そして39歳とは思えぬフィジカルの維持。“モンスター”井上の対抗王者にふさわしいレジェンドの存在感を示した。 試合後、リング上でインタビューを受けたドネアは、「目標は(ベルトの)統一です」と第一声を放った。狙うは井上のベルト。2019年11月にさいたまスーパアリーナで行われたWBSSの決勝でダウンを奪われ0-3判定で敗れて以来の再戦となる。 「井上とはお互いにリスペクトしている。(プロモーターの)リチャード(シェイファー)がお膳立てしてくれるに違いない」 ドネアは10月に元ゴールデンプロモーションのCEOだったリチャード・シェイファーが新たに立ち上げたプロモート会社「プロべラム」と契約した。かつて傘下にあり、信頼の厚い辣腕プロモーターに全権を預けており、リングで、そのシェイファーと握手を交わした。 シェイファーは計量をキャンセルして中止となったWBO世界バンタム級王者、ジョンリエル・カシメロ(32、フィリピン)対同級1位のポール・バトラー(33、英国)の指名試合の興行権も落札しており、井上が狙うバンタム級の4団体統一のカギを握る“第三の男”となっている。ドネアも、今回の試合前に、井上戦についての取材を受ける度に「リチャードに任せている」という言葉を繰り返していた。 14日に2年ぶりの国内リングで不気味なタイの刺客、IBF5位、WBA10位のアラン・ディパエン(30、タイ)を迎え撃つ井上は滞在先のホテルでドネアの衝撃KO勝利をリアルタイムで観戦した。 「さすがのキャリアで落ち着いた試合運びで安定感を感じた。フィニッシュのボディにも、さすがと言う言葉しか出てこなかった。これでドネア2が実現に近づいたので、14日(の防衛戦)をしっかりとクリアしてドネア2を実現させたいです」 大橋ジムを通じて、そうコメントした。 理由がどうであれ指名試合の計量に姿を現さなかったカシメロの名前をあえて出さず3本目のベルトのターゲットとしてドネアとの再戦を熱望した。 ただ大橋会長は、「2年前より遥かに強くなっている。カシメロの様子を見てドネアかカシメロとの対戦を考えたい」と慎重な姿勢を示している。